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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第9章 新生するアイドル
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重要な事

 放課後になり、部室へと向かう廊下を朋美と喋りながら歩いている。

そこに何故か綾子も居るけどね。


「そっか~だから、柳田先生は帰りのHRの時、あんなに顔が腫れていたのね~」


 そうです。私が 7股してるとか誤解を与えたものだから、鷹西先生から往復百列ビンタを受けていました。

もちろん、誤解はちゃんと解いておいたよ。

柳田先生も、これで懲りて欲しいことを願うよ。


「ごめんね、お昼一緒に食べれなくて~」


「別に、良いよ。昔の友達だもんね」


 朋美が、笑顔でそう返してくる。ほんとに良い子過ぎるよ。

そして、綾子は何で着いてきているのかな。後で、聞いてみないとね。


「えっと、綾子は何で着いてきているの?」


「あら? 親友の行くところ、私も行くに決まっているでしょう?」


 おかしいですよその発想。まさか、綾子……。


「綾子、他に友達居ないの?」


「うぐっ! いえ、その……明奈以外にも友達を作ろうと、声をかけては居るのですが。皆さん、蜘蛛の子を散らすかのように去って行くのですわ。私がお金持ちだからです?!」


「そうね。まずブタお兄さんから降りようか」


 そうです、綾子は学校にも何処へ行くにも、ブタお兄さんを連れているのです。

あっ、今まではその存在を無視していたけど、さすがにブヒブヒとうるさいので、家に閉じ込めておいて欲しいです。


「綾子ちゃん。さすがに、そんなのに乗っていると皆怖がっちゃうよ」


 “そんなの”ですか。ブタお兄さんの存在意義はどこに?

何で、こうなったのかな? あ、ブタお兄さんの目から涙が。


「マルはペットですのに……」


「うん……えっと」


 さすがに、朋美も何と言おうか迷っているようです。

凄く困った顔をしている。そうこうしている内に、部室に着いちゃうよ。


 すると、廊下の先に見えて来た部室に、何と人だかりが出来ている。

お目手は私だろう。やはり、メディアの威力は強大だと言うことなのですね。


「あっ! 橋田さん、来た!!」

「ねぇねぇ、『スター・エンジェルズ』のミカエルと面識があったの?!」

「橋田さんが、次のリーダーになるのか? すっげ! 今のうちにサイン貰って良い?」

「なぁ、他のメンバーとも知り合いのか?!」


 うわぉ、思った以上に鬱陶しいです。

どうしましょう。ほんとにあっという間に私の周りに人が集まって来て、私を埋め尽くしたから、逃げようにも逃げられなかった。


「あっ、ちょっと待ってよ。私もまだよく分かってないの!」


 そう皆に言っても、皆退かないですよ。朋美も綾子も押し出されちゃって、ポカーンとしてます。

綾子に関しては、ブタお兄さんが吹き飛ばされたと言った方がいいけどね。


 それにしても、皆さん「なぁなぁ」「ねぇねぇ」うるさいです。

動物ですか? あなた達は。

すると、部室の入口から吉川先輩とが出てきて一喝してきた。


「こらぁ!! いい加減、部活動の邪魔をするなぁ!!」


 その瞬間、皆の質問責めが止んで一旦静かになる。

だけど、その後皆も負けじと言い返す。


「だけどよぉ、吉川。こんなチャンス滅多に無いだろう。正式に『スター・エンジェルズ』に入ったら中々会えなくなるだろうし、仲良く出来なくなるかも知れないだろう?」


「あのねぇ、一番振り回されているのは、明奈だって事が分からないの? もし、これがもっと前に分かっていたことなら、こうやって普通に学校に来ないでしょうが! 少しは気を遣いな!」


 その吉川先輩のその言葉は、皆の胸に深く刺さったらしく、全員が申し訳なさそうな顔になっていた。


「ほら、明奈。それにあなた達も。部室に入りなさい。後は亜希子に任して」


「あ、うん」


 そう言って私は、皆の中から脱出して部室に向かう。

でも、一言くらいは居るかな。


「皆、ごめんなさい。ほんとに私も急な事で戸惑ってるの。もし、何か分かったらいち早く皆に報告するから」


 そして朋美と綾子と一緒に部室に入っていく。

あっ、でも。綾子がブタお兄さんと一緒に入ろうとする。


「ちょっと待って、綾子。ブタお兄さんは廊下に繋いどいて」


「あら、そうでしたわね」


 そして、綾子はブタお兄さんから降りて、首に繋いだリードを部室の廊下側の窓に括り付けた。

と言うことは、そこは開けっ放しになるのかな?


 私が部室に入った後も、吉川先輩は皆に色々と何か言っているようです。


「災難だったわね、明奈さん」


 私が席に着いたところで、神森先輩が私にそう言ってくる。

災難という以外に何か他の言い方でもあるのかなって、疑問になるくらいの災難ですよ。まごう事無き、災難です。

そして、私は部室を見渡してある人物を探す。

でも、その人は見当たらなかった。でも、本棚にあるビデオの数がまた増えてる。後でチェックしておきましょう。

それよりも……。


「あの、谷口先輩は?」


「翔なら、マスコミに引っ張りだこよ。当たり前でしょ」


 廊下にいる生徒達を何とか追い払った吉川先輩が、部室に入るなり私の質問に答えてくる。

やっぱりそうか。あれ? でも。


「やっぱり、2人も知ってたんだ……」


「当たり前よ~幼なじみだからね。おやおや? 明奈と翔だけの秘密。とか、思ってた~」


「はぅあ?! そ、そそそそんなじゃない!」


 でも、すいません。ビンゴです。

慌て過ぎてるから、絶対にバレてるよねこれ。


「ついでに、羽根の事も知ってるからね~」


「吉川先輩、トドメ刺さないで。分かりましたから」


 遊んでるよねこの人。

こんな事態なのに、全くもう。


「それよりも、明奈さん。この前もお見受けしたのだけれど。そちらの友達の方ってまさか……」


 神森先輩が、綾子に顔を向けると私に確認をとってくる。

そうだった、この子もある意味有名人だしね。


「えぇ、そうですわよ。宝条綾子です。私も、明奈の居るこの部活に入ろうと思いまして」


「ぜひ、入部して下さい! 金づ……ぶっ?!」


 吉川先輩、言っちゃいけないですよねそれは。

神森先輩が殴る前に、私が堕天使の力でハンマーを出現させて殴っておきました。


「あら? 明奈、こちらの部活は部費が余り出て居ないのですか?」


「ん~部長がこんな人だしねぇ、顧問になった鷹西先生も、部活の顧問なんて初めてやるみたいで、色々と戸惑っているみたいだしね。あまり上手くいっていないんだよね」


 すると、綾子はとんでもない事を言い出した。


「そうですか、なら任せて下さいませ! 私が計画しているものは、この映画部が無ければ、成り立ちません! あのニュースを見て、私は今がチャンスと思ったのです。この子を見たときから計画していたプロジェクトを、今こそ開始するときですわ! 『明奈アイドルデビュー』プロジェクトを!!」


「はぁ~?! 綾子、待って!! 何言ってるの?!」


 アイドルデビュー?! 私が?! 無理だって!

いや、でも『スター・エンジェルズ』を継ぐ事になっているから、アイドルにならなきゃならない? あれ、でも『スター・エンジェルズ』のマネージャーは?

だから、それを知りたくて谷口先輩に会おうとしたのに、あの人もまともに動けないなんて。


「おぉぉ!! 良いねそれ!」


「吉川先輩、食い付かないで! 話がややこしくなるから!」


「お金に糸目は付けませんわよ! 何たって私は、スポンサーです! そして、映画部のあなた達の力を結集して、明奈を『スター・エンジェルズ』に相応しいアイドルに仕立て上げなさい!」


 あっ、そう言うことですか。いや、そうじゃなくて!

そもそも私はまだやるとは言ってないよ。どんどん、私は逃げ場が無くなっていませんか?


「綾子さん。分かりました……とにかく、落ち着いて下さい」


 良かった。神森先輩だけは、冷静でした。

そうそう、高校生が出来る事なんてたかが知れて……。


「あなたの入部を許可します。そして、映画部史上初のこの大仕事を映画部全員の力を結集させて、必ず完遂させます!」


 ダメでした!! 神森先輩も、目が陶酔しきっています。

そして、呆然とする私の横で朋美が柔らかな笑顔を私に向けている。

もう、助けてくれるのはこの子だけかも。


「明奈ちゃん。頑張ろう、私も応援するから」


 そうですよね。これが、普通の答えでした。

私はため息をついてうなだれた。こんな事になるなんて、想像もしていなかったです。


「何言ってるのですか? 朋美、あなたも学園アイドルとして明奈とデュエットでもしなさいな」


「えぇぇ?! 何で、私まで?!」


 白と黒の天使のデュエット。それだけで、かなりのインパクトがあるよね。綾子は最初から、朋美ともそのつもりで友達になったみたいですね。この人、なかなかの策士かも。

でも、朋美には決定的にダメな部分がある。


「綾子、朋美にはね。こんな弱点があるの。朋美、ちょっとアカペラで歌ってみて」


「えぇ? でも、明奈ちゃんに練習付き合ってくれていても私全然……」


「良いから」


 そして、朋美は観念して歌い出した。

もちろん、私は耳を塞いでおります。



 数分後。そこは死屍累々、部室は一気に静かになりました。

全然直ってないの、朋美の音痴がね……。

あれから、ちょくちょく練習に付き合ってるのだけど直らないの。


「明奈ちゃ~ん」


 泣きながら、私にすがりつかれてもなぁ。

綾子も、倒れちゃってるし。さすがに、予定外じゃないかな?


 そして、それと同時に私はもう一つの不安材料が、頭を()ぎっていた。

そう、山本先輩があれから姿を見せていないのです。学校にも来ていないとの事。

いったい何があったのかな……。

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