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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第9章 新生するアイドル
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風邪の看病

 翌朝、私は怠くて布団の中か出られません。

そうです、風邪を引きました。

もうね、原因は分かっています。昨日、川に放り投げられたからです。


 あの後、皆で川で遊びまくっていましたよ。

もう、それこそ女子も下着見えてもお構いなし。

気にしようよって注意したんだけどね。テンションが異常だったらしいです。

もちろん、その後現れた両親に注意されました。先生も一緒にね。


 まぁ、両親も私の為にやった事と分かったので、そこまでキツくは言わなかったけどね。


 そして、その日の夜怠さがずっとあって、もしかして今回の退魔の力を使ったリスクがこれ? って思ったけれど、熱を測ると38度もありました。単純に風邪でした。

ついでに今回は記憶を失っていません。つまり、リスクが発生していないということです。

それはそれで良かったよ。


「明奈。大丈夫?」


 そう言って、望お姉ちゃんが私の部屋に入ってくる。

今日は付きっきりで看病するつもりらしく、ラフな格好をしている。


「う~、怠くて起きられない。ケホ、ケホ」


 ついでに、喉も痛くて咳もでるの。

子供かっての私は。あっ、子供でした。


「まぁ、今日が休日で良かったね~」


 お姉ちゃん、絶対わざと言ってるよね?


「せっかくの休日がぁ……潰れるなんてぇ」


「でも、休み明けからテスト期間でしょ?」


 また、嫌な事を思い出させ……あっ、この感覚は。


「お、お姉ちゃん……」


「何? 明奈」


「きちゃった」


「へ? 何が?」


 お姉ちゃん、絶対にわざとだよね? ねぇ、わざとだよね?


「あの日だよ。ほら、女の子の……」


「えっ?! その体になってもあるの?!」


「早い子は、もうきてるでしょうがぁ!」


 だいたい、早い子なら10歳からくるこも居てるからね。

お姉ちゃんより、私の方が詳しくてどうするの。


「あぁ、そうだったね。いや、リスク負ってる常態だから無いのかと思って」


「そんなわけないからね。いたた……」


 大きい声出させないでほしいな。風邪引いてる時に来るなんて最低。空気読んでよ……。


「お、お姉ちゃん。薬……」


「残念、風邪薬と生理痛薬は併用出来ないからね? 風邪を治す事を優先して下さい」


「えっ? ま、まさか……」


 でも、よく考えたらそうだよね。併用出来ないよね。

簡単に言うと、風邪薬と痛み止めを併用するようなものだからね。


「時間を空けないとね。それまでは生理痛は我慢しなさい」


「そ、そんなぁ……」


 こんな時に限って地獄ですよ。

ソロモンの悪魔と対峙した時よりも、絶望しています。


「とりあえず、ご飯少しでも良いから食べとかないとね。お粥でいい?」


「それしか食べられません」


「だよね。ちょっと待っててね、お母さんに言ってくる」


 そう言って、お姉ちゃんは部屋を出て1階に降りていく。

その時、何かが階段からずり落ちる音と、激しい物音がしたのは気のせいだよね。

お姉ちゃんは、普通に階段から降りていだけなのに、何でずり落ちるのかな?




 それからしばらくして、お姉ちゃんはお盆にお粥と薬を持って、再び部屋にやって来た。


「お待たせ~」


「今度は落ちなかったね」


「な、何の事?」


 目を泳がせてもバレてますよ。

それよりも、この場合。先に痛み止め飲みたいかも。我慢出来そうにないよ。


「ねぇ、お姉ちゃん。これ、風邪薬よりも……」


「風邪薬が先です」


「はい……」


 望お姉ちゃんは、ほんとに私のお姉ちゃんらしくなってきちゃったよ。

寂しいような、うれしいような複雑な気分だな。


「ほら、先ずは食べちゃいなって」


 そう言って、お姉ちゃんはレンゲでお粥をすくい、息を吹きかけて少し冷ましてくれて、ゆっくりと口元に……ってこれって。


「はい、あ~ん」


「自分で食べられるってば」


 これは、流石に恥ずかしいってば。

姉妹でやることではないでしょうに。


「良いから。はい、あ~ん」


 し、しつこいです。やらなきゃダメなのですか?

むぐぐ、しょうがないなぁもう!


「んっ!」


 私は顔を真っ赤にしながら、お姉ちゃんの差し出したお粥を食べる。ほんとに、恥ずかしいんだもん。

そして、お姉ちゃんは何故か嬉しそうにしている。後、体も震えて何かを我慢しているように思えます。


「あ、明奈。可愛い~はい、もう一回。あ~ん」


 遊んでますよね? 遊んでますよね、これは絶対に。

でも、実際体が余り動かせず、起こすだけで精一杯なんです。

恥ずかしくても、お姉ちゃんに食べさせて貰うしかなかった。





「さて、薬も飲んだし。後は、ゆっくりと寝ときなさい。お昼ごはんの時に、痛み止め持ってくるからね」


「は~い……」


 体が怠い、喉が痛くて咳も出て、しかも女の子の日まで重なるという悲劇。

今日は厄日ですか。何もせずに寝ておくべきですね。


 しかし、何で女の子の日なんて私何かにも、あるのかな?

いや、もちろん体が完全に女の子何だからね。でも、これがあるという事は、子供も産める体ということだよね。

あっ、嫌な事に気づいてしまった。

つまり、いつかは私も男性に……。


「はぅあ?!」


 私は、変な声を上げて布団を頭から被った。

でも、私は完全に女性になるんだ。つまり、男性に好意を持ちそして、そういう事もしていく事になる。

でも、好きな人となら……。

私はそこで、谷口先輩の顔が浮かんでしまい、布団を頭から被ったまま寝る事にした。


 でも、朝からマスコミの人達が玄関先でうるさくしているものだから、寝るに寝られないかも。

両親がマスコミの人達に、これ以上来ないようにと説得しているようだけれど、多分無理だよ。

報道関係者は、それでごはん食べてるんだもん必死だよ。


 とにかく私は、体の怠さとお腹の痛みで寝るに寝られない状態です。

病院は休みなので、この2日はお布団から出られないかもしれませんね。

それまでに治ればいいけどね。


「はぁ……。あの人達も風邪引いてればいいのに」


 私は、布団から顔を出してそう呟く。


「こらこら、そんな事を言ったらダメだぞ」


「まぁ、そうなんだけどね」


 あれ? 私は今誰に返事をしたの?

そう思って顔を横に向けると、そこには優しい笑顔を向ける谷口先輩の姿がありました。


「うわっ?! い、いつの間に居たんですか?!」


「ん? 今さっきだぞ。見舞いに来たから、君のお姉さんに入れてもらったんだ。それよりもあまり無茶するな、驚かして悪かったけどな」


 お姉ちゃんったら、一言くらい言ってよね。

しかも、変な想像した後だから顔が合わせづらい。

でも、ちょっと嬉しいかも。


「あれ? でも、先輩。今日はアイドルの方の活動は?」


 そう、私はふとある事を思い出した。

今日は、谷口先輩のいるグループ『スター・エンジェルズ』のコンサートがあったはず。


「あぁ、急遽中止さ。ミカエルさんが居なくなったからな」


「あっ……」


 そう言われてあのソロモンの悪魔、バティンに言われた事を思い出した。

ミカエルの思念体を消したと言っていた事を。

私は、気まずそうな顔をしているのだろう、谷口先輩が苦笑いをして続ける。


「でもな、ミカエルさんは自分が消える事を知っていたのかもしれないな。あるメッセージビデオを残していったんだ。今日は君もこんな状態だからな、詳しくは明日か明後日のニュースで流れるからそれを見てくれ。そして、驚かないで欲しい」


 すごく真剣な顔で意味深な事を言うから、そのビデオが凄く気になる。出来るなら今すぐ見たい。そんな気分です。

すると、谷口先輩が立ち上がる。どうやら、お見舞いとこの事を伝えに来ただけらしい。そして、先輩は面倒くさそうにしながら頭を掻いている。


「さて、長居しても悪いし。亜希子の所にもお見舞いに行ってやらんとな」


「えっ? 吉川先輩も風邪なの?」


「あぁ、昨日川に飛び込んだメンバーは、全員風邪を引いてるさ。先生含めてな」


 バカですね。いや、直ぐに上がらなかった自分もバカですけど。

と言うことは風邪を引いていないのは、あの場にいた神森先輩と谷口先輩とお姉ちゃんだけですか。

意外な事に鷹西先生まで飛び込んでいたからね。

あの人、あんな性格だったけ?


「アハハ。ほぼ全員って。まぁ、私に風邪を引かせたんだからね、当然だけど他の人も引いてもらわないと、割に合いませんよね。ケホッケホ」


「こらこら。だから無理をするなって」


 谷口先輩は、そう言って私の頭を撫でてくる。

何だか安心するかも。


 でも、この後吉川先輩の所に行くんだよね。神森先輩も居るから大丈夫だろうけど、何だろう。胸がモヤモヤする。


「よし、邪魔したな。ゆっくりと寝とけよ」


 そう言って、谷口先輩は立ち上がり部屋を出ようとする。


「待って……」


「ん? どうした?」


「……っ、お見舞いに来てくれてありがとうございます」


 私は、そう言って谷口先輩に笑顔を向ける。

危なかった、本当は咽まで出かけた。「もう少し居て下さい」って……。


「あぁ、早く元気になってくれよ」


 谷口先輩も笑顔で返してくれた。

そして、部屋を出て行った。どうかしてるな私は。

嫌われていないって分かった途端に、谷口先輩を急に意識しだしている。


「う~、どうしちゃったの? 私は」


 そして私は再び布団を頭か被る。

寝よう、そして早く風邪を治そう。あれは熱のせいだ。

私は、自分にそう言い聞かせていた。

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