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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第8章 決戦 ソロモン72柱『バティン』&『グシオン』
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新たな力で

 何だか体が軽い。

余計なものを背負い過ぎていたのかな?

目の前に居る凶悪そうな人達を見ても、あんまり怖くないように感じる。


「しかし、君のその変化には驚いたね」


「私は見えないから分からないんだけど?」


「いや。後ろを向けよ」


 そうでした。グシオンに言われて、私は両手を叩くと後ろを振り返り、自分の羽根を確認する。

すると、片方は黒いままだけれども、反対側の羽根の色が変わっていた。


「な、何これ?!」


 それは銀色の羽根。光の加減で輝いても見える。何だか、神々しくも見える。立派な銀翼の羽根であった。


「やれやれ。どうやら、君は今までにないタイプの天使になったようだな。堕天使と天使、両方を兼ね備えた天使か? そんなのあり得ない事なのだが、人間ベースだとそんな事も起こりうるのか?」


 私に聞かれても分かんないよ。

自分でも、びっくりしているもん。

後、もう一つ気になることがあるんだけど、目の前に銀色の糸がプラプラしていて気になる。えい。


「いたっ?!」


 あぁ、髪の毛でした。髪の毛?!

私は、咄嗟にきょろきょろと辺りを見渡して、自分の顔を映せる物を探す。

そこで気づいたのだけれども、皆私を見て呆然としている。

さっきまで驚愕の真実を聞いて、信じられ無いといった顔をしていたのが。

今は、あり得ない物を見ているような目をしている。


 すると、望お姉ちゃんが手鏡を出してくれた。

私は、咄嗟にお姉ちゃんの元に行き鏡をのぞき込む。 


「明奈。あなた、やっぱりもう人間じゃないんだね」


 そんなお姉ちゃんの言葉なんか耳に入らなかった。

だって、私の切り揃えた前髪が銀色になっているの。

それだけじゃなく、左目も銀色になっている。

そう、つまり銀色になっている羽根も左です。


「あ~何か覚醒したっぽいからな~」


 そんな中二病っぽい事を言って、私は再び校庭の真ん中の2人に顔を向ける。


「これは、ゲームでのんびり決着をとは行かないようだな」


「だが、バティンよ。奴も、あの様になると神の結界の効果を受けるだろう。力の差など五分よ」


 確かに、天使と悪魔は人間界では力を制限されていたよね。

でも、私は何故かそんなことは無いと感じていた。


「ん~っと、こうすれば良いのかな?」


 とりあえず、私は手のひらを上に向けて広げると。

ある物をイメージする。すると、そのイメージ通りの拳銃が現れ、私の手の中に収まった。


「やっぱり、私はもう自在に天使の力を使えるんだ」


  天使の力は、羽根が生えた時から備わっていたと思う。

でも、使い方が分からずにいたんだ。

どんな事でも、キッカケさえあれば出来るようになる。

天使の力を使うキッカケ。それは、ミカエルがくれたあのダイスだったんだ。

ダイスはキッカケに過ぎない。そして、これが本来の私の力。


 ソロモンの悪魔を、完全に撃退する事が出来る天使。それが私なんだ。

私は、目の前のソロモンの悪魔2人にその銃を突きつける。


「なるほど、これは厄介だな」


 それでもバティンはスマイル100%です。もはや、このスマイルを崩してみたくなってきた。

だけどそれよりも……。グシオンが、思った程に動いていないという事が気になる。


「グシオン、まさかこうなる事を知っていたのかしら? 過去と現在、そして未来を知っているなら」


 私は、陽動がてら少し探ってみる。グシオンの能力を。


「勘違いをしないでもらおうか。知識を有しているというだけで、出来事を知っているわけではない。それは、予知能力になるが俺にはそんな能力はないさ」


 あれ? 正直に答えてくれるなんてね。

そもそも、この2人はよっぽどの自信があるみたい。それなら油断は出来ない。


「ここで戦闘を行っても良いが。君のその目を見ると、どうも神の結界が効いていない様に見える。何でだろうな?」


 バティンが私にそう言ってくる。

流石に修羅場慣れしている様で、人の所作でその人が何を狙っているかが分かる様です。


 心臓が高鳴る。この弾さえ当てられたら良いんだけど。

どうもさせてくれそうにない。凄い気迫だもん。


「そうだな。せっかくだからちょっとしたゲームをやろうか」


「ゲーム?」


 私は、銃を構えたままバティンの言葉に反応する。

また、ダンタリオンの時のように悪魔側に有利なゲームを組まれたら、面倒くさいことになるね。


「何、簡単な事だ。その銃で俺を撃てば、お前の勝ちでいい」


「それって、ゲームなの?」


 ただの戦闘に思えるんですけど? 銃で撃ち合うにしても、私の方が不利だってば。


「心配しなくても、撃ち合う事はしない。君は本物の俺を撃てばいいんだからな」


 そう言って、バティンは指を鳴らす。すると、報道陣の前に急に炎が立ち上り、私と2体の悪魔を囲む様に広がっていく。

そして、その炎の中から次々とバティンが現れる。


 グシオンは、既に肩から飛び降りて、校庭の脇にある木に跳び移っていた。

つまり、私は炎が出現した事に驚いて、バティンから視線を外してしまった。

だから、本物を見失ってしまいました。沢山バティンが出てきた時、慌てて視線を戻したけれど、とっくに周りはバティンだらけになっていました。


『さぁ、どれが本物か当ててみな』


 エコーがかった声が私の耳に響く。

そして、もう一つ問題なのが。炎から作られた偽物も、スマイル100%です。

10体以上? それくらいの気持ち悪い笑顔が、私を取り囲んでいる。


「あ、悪夢よ……今日の夢に出そう」


『おやおや、生きて帰る気かい?』


 バティンがそう言った直後に、どこからともなく銃弾が飛んでくる。


「いたっ?!」


 その銃弾は、私の肩を掠める。

何で? 結局撃ち合いになるじゃん。


『フフフ、悪魔の言ったことを信じるなんて、お人好しだな』


「謀ったわね……」


 やってしまった。ソロモンの悪魔の中には、友好的な者もいるらしいけれど、こいつは曲がりなりにもルシファーの側近。

その実力は、普通の悪魔とは比べものにならないはず。

でも、結界はどうなったの?


『そして、グシオンの知識でこの結界の穴を見つけた』


「あっ、ご丁寧に説明してくれるんですね」


 助かったよ。丁度知りたかったしね。


『余裕だね、君』


「そうでもないよ?」


 私はそう言いながら、銃の持ち手を人差し指にかける様にして、くるくると回し始める。

緊張していてもしょうが無いしね。


「あなた達、2人を相手にしなきゃならないって思ったら、緊張とか通り過ぎて、逆に達観しちゃったわよ」


 すると、私の耳に引き金を引く音が聞こえてくる。

後方、右に30度移動した方向だね。


「おっと!」


 私は咄嗟に銃を握り直し、その方向に銃を向けて引き金を引く。

私の耳元ギリギリの所で、弾丸と弾丸が激突し弾かれる。


「こ、鼓膜が……」


 ちょっと、遅かったみたい……。

耳に響いたよ。鼓膜破れていないよね? あっ、大丈夫そう。

体が少し丈夫に作られていたからかな。


「というか、いきなり私の命を狙ってくる様になったね?」


 今のも、防がなければ頭を貫通していたしね。

向こうの悪魔にも、結界は効かないのかな?


『ふむ。しかし、これではっきりしたな。どうやら、結界は命を奪う程の力の発揮を制限し、命を奪う様な攻撃も結界により防がれる。君は、今咄嗟に対応したが、間に合わ無くても結界の効果で、命までは取れなかったはずだ。さっき君の周りに、うっすらと結界らしきものが張られていたからな』


 あぁ、つまり戦争は止めろって事なんだね。

戦闘は良いけれど、人を殺す事が目的となる戦争は駄目ということですか。というか、そういう詳しい事を言って欲しかったかな。ミカエルさん。


『つまり、命は奪えないが傷は与えられるのか。ならば、そうやって徐々に気力と体力を奪い、悪魔側になりますと言わせればいいわけだ』


「何その、縄張り争いみたいなもの」


『縄張り争いだよ。これはね!』


「そう。じゃぁ、とっとと古巣へ帰りなさいよ!」


 私は、そう言って銃を構えた。

大量にいるバティンの中から、絶対に本物を見つけて、魔界に送り返してやる。

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