救出成功
私達は、気づいたら朋美ちゃんの家の近くの公園にいた。
そう、美奈ちゃんと出会った公園です。
何が起こったのかは分からないけれど、どうやら瞬間移動で日本に帰らされたらしいです。
今回は何とかなったいみたい。でも、次はこんな簡単にはいかないって事だよね。
うん、2人がモゾモゾしている縄を解いてあげないと。朋美ちゃんに至っては、まだ猿ぐつわ取れてないしね。
今、この現場を見られたら危ないよ。
私は急いで、2人の縄を解いてあげた。
「さぁ、もう大丈夫だよ2人共。無事でよかったよ……」
私は、いつもの風景の場所に帰って来られたことで、緊張の糸が取れたみたい。今にも泣いちゃいそう。ううん、泣くよ。
でも、2人は意外な行動に出た。
「ト、トイレぇ!!」
「漏れちゃうよぉ!」
「そっちぃ?!」
感動の再会とか、泣きながら抱き合ってとかは?!
ちょっと、2人とも~!
あ~あ、猛ダッシュで家に行っちゃったよ。
涙が引っ込む時って、ほんとに一瞬で引っ込むだね。
私の感動を返して下さいな。
そして、私が家に帰る頃にはもうとっぷりと日が暮れて、夜になっていました。
あの2人が無事に家に帰って行くのを見届けて、私は家に急いで帰った。
とにかく、朋美ちゃんは悪魔の事を知っているから、何とか誤魔化すだろうね。
私が、行ってもややこしくなるだけだから。後は、朋美ちゃんを信じる事にした。
「ただいま」
私が家に入ってそう言うと、家族全員突撃してきた。
「ぶふぅ!! ちょっ、な、なに?!」
「明奈! 大丈夫だった?! 何も失っていないよね?」
望お姉ちゃん、必死すぎだってば。
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。退魔の力は使ってないから」
「明奈、怪我はないの?」
「大丈夫だよ、お母さん」
「全く、無茶をしやがって。今ニュース速報で、2人が無事発見されたことが流れてな。安堵していた所だったんだ」
お父さんが、事細かに説明してきてくれた。
どうやらニュースでは、今日の夕方に2人の行方不明が報じられていたらしい。
そのすぐ後に2人が見つかったと言うことは、事件性が無いと判断される可能性が高いかな。
2人でどこへ行っていたんだと、こっぴどく叱れていそう。
「ブヒブヒ。ブフゥゥゥ」
何で、守お兄ちゃんが? ここに居るって事は。まさか。
「明奈~!!」
「ぎゃふん!!」
連続2回で飛びつかれると、首痛めるよ!
綾子ちゃんも、心配で来てくれていたんだね。
というか、この人何回私の家にやって来るの? もしかして、家近いのかな?
「明奈、目は見えますか? 耳は聞こえています? 手は、頭は?」
「綾子ちゃん、最後のはちょっとおかしいよ。大丈夫だよ、退魔の力はつかって無いんだから」
ほんとに、皆それだけ心配してくれていたんだね。ありがとう。
そして、私が家に入ると。またしても、豪勢な料理が並んでいる。
綾子ちゃんの仕業ですよね。3日連続だね。
すると、テレビのニュースは……。うん、大々的には取り上げられてないね。
何日もってなると、さすがに大事になるけれどね。
でも、やっぱり忽然と姿を消した事は取り上げられていた。
2人は、覚えてないとインタビューで答えているけれど。
結構、報道陣がしつこく聞いているよ。2人は全く無関係なのに。
何だか申し訳ない事をしちゃってるなぁ。
「あ、大トロおいし~」
ごめんなさい。あまりにも美味しそうだったので、待ちきれずに食べちゃってます。
だって、お腹空いたんだもん。
「明奈、羽根が嬉しいそうにパタパタ震えちゃってるよ?」
あ、あれ? あれだけ沢山飛んだからなのかな?
感情によって、羽根が敏感に反応するようになっちゃってるみたい。
困ったなぁ……。羽根が動くのは良いけれど、お姉ちゃんが鼻血出しまくってる。
「ちょっと、お姉ちゃん。何、想像したらそうなるの?」
「は、羽根が可愛いく動くなんて。明奈の可愛さも相まって、KOしそう」
「しちゃったら?」
私は、目を細めてお姉ちゃんを見る。でも、お姉ちゃんはお構いなしに、私の羽根をガン見している。
絶対、触ろうとしているよね?
「ほら、別の国に助けに行行かないとって言ってたじゃん。と言うことは、沢山飛んで疲れたでしょ? 羽根も疲労が溜まると危ないでしょ? マッサージしてあげる」
そうだね。でも、お姉ちゃんのそんな目を見たら触らせたくないかな。
絶対もみくちゃにされるよ。
「後で、お風呂でマッサージしとくよ。自分、で」
「そっか」
そう言ってお姉ちゃんはあっさり引き下がった。
絶対、お風呂に乱入してくるよね。これは。
「ほらほら、明奈。どんどん食べて下さい!」
綾子ちゃん。どんどん食べてるけれども、これどれだけ量あるのぉ!
「いやぁ! 3日連続とはな! 母さん、もっと酒持って来~い」
お父さんは、しばらく禁酒させないといけないかも知れないね。
この3日間で、肝臓に大ダメージを受けているはず。
後で、家に常備しているお酒を隠しておかないと。
ジュースを飲みながら、呆れた目でお父さんを睨んでいると、それに気づいたのか、お父さんはフラフラになりながらこっちにやって来る。
「ブヒィ!」
あっ、守お兄ちゃん踏んづけたよ? うん、気にせずこっちに来たね。
「明奈。お父さんは、心配だぞ」
「お父さん、そろそろお酒は……」
「良いから聞け!」
そう言うと、お父さんは思い切り肩を掴み真剣な目で睨んでくる。
な、何か。余計な事言っちゃった?
「その、ソロモンだかフェロモンだかの悪魔との戦い。お前にリスク無く追い返せんのか? お前が悪魔と戦う度に、俺達は毎回ハラハラしなきゃならん」
「リスク無くは、無理だと思う……」
リスクがあるのは、それくらいに強力な相手であり、私がまだ未熟だからだろうね。
「なら、その悪魔との戦いはどうすれば終わるんだ?!」
「えっ、えっと……」
しまった、それを聞いていないじゃん。
このままズルズルと戦ってもしょうがないじゃん。
ミカエルさんが、天使復活計画を完遂したら?
でも、それって何時になるの? ミカエルさんが復活したら、あっという間に天使は復活するの?
でも、ミカエルさんが復活するには私が……。
あれ? 私ってもう天使……だよね?
違う。私が、完全な天使になればいいんだ。
今は、堕天使でも天使でもない丁度中間の状態だよ。
中途半端などっちつかずの天使擬き状態。
でも、私は悪魔には協力しない。それだけは確かだよ。
だったら、もう天使になれるはず。
なんで? 何も起こらないの? 私に何が足りないの?
「う~ん。何となくたけど、戦いを終わらせる方法は分かってる。私が、完全な天使になれば、ミカエルとして復活する事になるから、他の天使を一気に復活させられるのかもしれない」
私のその言葉に家の中が静まり返った。
つまり、それは私と分かれると言うこと。
ううん、天使の羽根が生えた時から、そうなることは決まっていた。
家族は、皆どこかでそう感じていたはず。
「明奈……」
「お父さん……」
空気が悪く無っちゃったかも、そう思って横に座っているお父さんに顔を向けると。
顔が、真っ青になっています。さっきまで、真っ赤だったのにね。
「あ、あなた。ちょ、ちょっと待ちなさい。ストップ、ストップよ!」
お母さんが慌てて台所に向かい、何かを探っている。
あれ? 皆静かだったのって、お父さんが真っ青だったから?
でも、お父さん大丈夫なの?
「明奈、急いでそこから離れて!」
お姉ちゃんまで必死になってるけど。
でも、あれ? 私、お父さんのこの状態はどこかで見たような気がする。
「うぅ。も、もう。ダメ……」
「えっ、お父さん。何がダメって?」
そう思って、私がお父さんの様子を心配していたら、お父さんが頭を俯かせる。そして、次の瞬間。
「うおぇぇえええ」
「きゃぁぁあ!!」
思い切り吐いたよ。この人!
そうだ、飲み過ぎた人の吐く直前の様子だぁ!
真っ青と言うか真っ白というか。
お父さんは顔は赤くなるけれど、吐く時は真っ青になるタイプです。
咄嗟に、足を引っ込めたから直撃は避けたけれど。
最悪、娘に何て物見せているの。
お母さんやお姉ちゃんが、慌てて雑巾やらビニール袋やらを持ってきている。
やっぱり明日から禁酒ですね。お父さん。




