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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第7章 今日の後に今日なし ~ 3日間の出来事 ~
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救出成功

 私達は、気づいたら朋美ちゃんの家の近くの公園にいた。

そう、美奈ちゃんと出会った公園です。

何が起こったのかは分からないけれど、どうやら瞬間移動で日本に帰らされたらしいです。

今回は何とかなったいみたい。でも、次はこんな簡単にはいかないって事だよね。

うん、2人がモゾモゾしている縄を解いてあげないと。朋美ちゃんに至っては、まだ猿ぐつわ取れてないしね。

今、この現場を見られたら危ないよ。

私は急いで、2人の縄を解いてあげた。


「さぁ、もう大丈夫だよ2人共。無事でよかったよ……」


 私は、いつもの風景の場所に帰って来られたことで、緊張の糸が取れたみたい。今にも泣いちゃいそう。ううん、泣くよ。


 でも、2人は意外な行動に出た。


「ト、トイレぇ!!」


「漏れちゃうよぉ!」


「そっちぃ?!」


 感動の再会とか、泣きながら抱き合ってとかは?!

ちょっと、2人とも~!

あ~あ、猛ダッシュで家に行っちゃったよ。

涙が引っ込む時って、ほんとに一瞬で引っ込むだね。

私の感動を返して下さいな。







 そして、私が家に帰る頃にはもうとっぷりと日が暮れて、夜になっていました。

あの2人が無事に家に帰って行くのを見届けて、私は家に急いで帰った。

とにかく、朋美ちゃんは悪魔の事を知っているから、何とか誤魔化すだろうね。

私が、行ってもややこしくなるだけだから。後は、朋美ちゃんを信じる事にした。


「ただいま」


 私が家に入ってそう言うと、家族全員突撃してきた。


「ぶふぅ!! ちょっ、な、なに?!」


「明奈! 大丈夫だった?! 何も失っていないよね?」


 望お姉ちゃん、必死すぎだってば。


「大丈夫だよ、お姉ちゃん。退魔の力は使ってないから」


「明奈、怪我はないの?」


「大丈夫だよ、お母さん」


「全く、無茶をしやがって。今ニュース速報で、2人が無事発見されたことが流れてな。安堵していた所だったんだ」


 お父さんが、事細かに説明してきてくれた。

どうやらニュースでは、今日の夕方に2人の行方不明が報じられていたらしい。

そのすぐ後に2人が見つかったと言うことは、事件性が無いと判断される可能性が高いかな。

2人でどこへ行っていたんだと、こっぴどく叱れていそう。


「ブヒブヒ。ブフゥゥゥ」


 何で、守お兄ちゃんが? ここに居るって事は。まさか。


「明奈~!!」


「ぎゃふん!!」


 連続2回で飛びつかれると、首痛めるよ!

綾子ちゃんも、心配で来てくれていたんだね。

というか、この人何回私の家にやって来るの? もしかして、家近いのかな?


「明奈、目は見えますか? 耳は聞こえています? 手は、頭は?」


「綾子ちゃん、最後のはちょっとおかしいよ。大丈夫だよ、退魔の力はつかって無いんだから」


 ほんとに、皆それだけ心配してくれていたんだね。ありがとう。

そして、私が家に入ると。またしても、豪勢な料理が並んでいる。

綾子ちゃんの仕業ですよね。3日連続だね。


 すると、テレビのニュースは……。うん、大々的には取り上げられてないね。

何日もってなると、さすがに大事になるけれどね。

でも、やっぱり忽然と姿を消した事は取り上げられていた。


 2人は、覚えてないとインタビューで答えているけれど。

結構、報道陣がしつこく聞いているよ。2人は全く無関係なのに。

何だか申し訳ない事をしちゃってるなぁ。


「あ、大トロおいし~」


 ごめんなさい。あまりにも美味しそうだったので、待ちきれずに食べちゃってます。

だって、お腹空いたんだもん。


「明奈、羽根が嬉しいそうにパタパタ震えちゃってるよ?」


 あ、あれ? あれだけ沢山飛んだからなのかな?

感情によって、羽根が敏感に反応するようになっちゃってるみたい。

困ったなぁ……。羽根が動くのは良いけれど、お姉ちゃんが鼻血出しまくってる。


「ちょっと、お姉ちゃん。何、想像したらそうなるの?」


「は、羽根が可愛いく動くなんて。明奈の可愛さも相まって、KOしそう」


「しちゃったら?」


 私は、目を細めてお姉ちゃんを見る。でも、お姉ちゃんはお構いなしに、私の羽根をガン見している。

絶対、触ろうとしているよね?


「ほら、別の国に助けに行行かないとって言ってたじゃん。と言うことは、沢山飛んで疲れたでしょ? 羽根も疲労が溜まると危ないでしょ? マッサージしてあげる」


 そうだね。でも、お姉ちゃんのそんな目を見たら触らせたくないかな。

絶対もみくちゃにされるよ。


「後で、お風呂でマッサージしとくよ。自分、で」


「そっか」


 そう言ってお姉ちゃんはあっさり引き下がった。

絶対、お風呂に乱入してくるよね。これは。


「ほらほら、明奈。どんどん食べて下さい!」


 綾子ちゃん。どんどん食べてるけれども、これどれだけ量あるのぉ!


「いやぁ! 3日連続とはな! 母さん、もっと酒持って来~い」


 お父さんは、しばらく禁酒させないといけないかも知れないね。

この3日間で、肝臓に大ダメージを受けているはず。

後で、家に常備しているお酒を隠しておかないと。

ジュースを飲みながら、呆れた目でお父さんを睨んでいると、それに気づいたのか、お父さんはフラフラになりながらこっちにやって来る。


「ブヒィ!」


 あっ、守お兄ちゃん踏んづけたよ? うん、気にせずこっちに来たね。


「明奈。お父さんは、心配だぞ」


「お父さん、そろそろお酒は……」


「良いから聞け!」


 そう言うと、お父さんは思い切り肩を掴み真剣な目で睨んでくる。

な、何か。余計な事言っちゃった?


「その、ソロモンだかフェロモンだかの悪魔との戦い。お前にリスク無く追い返せんのか? お前が悪魔と戦う度に、俺達は毎回ハラハラしなきゃならん」


「リスク無くは、無理だと思う……」


 リスクがあるのは、それくらいに強力な相手であり、私がまだ未熟だからだろうね。


「なら、その悪魔との戦いはどうすれば終わるんだ?!」


「えっ、えっと……」


 しまった、それを聞いていないじゃん。

このままズルズルと戦ってもしょうがないじゃん。

ミカエルさんが、天使復活計画を完遂したら?

でも、それって何時になるの? ミカエルさんが復活したら、あっという間に天使は復活するの?

でも、ミカエルさんが復活するには私が……。


 あれ? 私ってもう天使……だよね?

違う。私が、完全な天使になればいいんだ。

今は、堕天使でも天使でもない丁度中間の状態だよ。

中途半端などっちつかずの天使擬(もど)き状態。

でも、私は悪魔には協力しない。それだけは確かだよ。

だったら、もう天使になれるはず。

なんで? 何も起こらないの? 私に何が足りないの?


「う~ん。何となくたけど、戦いを終わらせる方法は分かってる。私が、完全な天使になれば、ミカエルとして復活する事になるから、他の天使を一気に復活させられるのかもしれない」


 私のその言葉に家の中が静まり返った。

つまり、それは私と分かれると言うこと。

ううん、天使の羽根が生えた時から、そうなることは決まっていた。

家族は、皆どこかでそう感じていたはず。


「明奈……」


「お父さん……」


 空気が悪く無っちゃったかも、そう思って横に座っているお父さんに顔を向けると。

顔が、真っ青になっています。さっきまで、真っ赤だったのにね。


「あ、あなた。ちょ、ちょっと待ちなさい。ストップ、ストップよ!」


 お母さんが慌てて台所に向かい、何かを探っている。

あれ? 皆静かだったのって、お父さんが真っ青だったから?

でも、お父さん大丈夫なの?


「明奈、急いでそこから離れて!」


 お姉ちゃんまで必死になってるけど。

でも、あれ? 私、お父さんのこの状態はどこかで見たような気がする。


「うぅ。も、もう。ダメ……」


「えっ、お父さん。何がダメって?」


 そう思って、私がお父さんの様子を心配していたら、お父さんが頭を俯かせる。そして、次の瞬間。


「うおぇぇえええ」


「きゃぁぁあ!!」


 思い切り吐いたよ。この人!

そうだ、飲み過ぎた人の吐く直前の様子だぁ!

真っ青と言うか真っ白というか。

お父さんは顔は赤くなるけれど、吐く時は真っ青になるタイプです。


 咄嗟に、足を引っ込めたから直撃は避けたけれど。

最悪、娘に何て物見せているの。

お母さんやお姉ちゃんが、慌てて雑巾やらビニール袋やらを持ってきている。

やっぱり明日から禁酒ですね。お父さん。

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