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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第5章 それぞれの目的の為に
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天使復活計画

 事無きを終えた俺は、保健室にたどり着いた。

何だか、ここに来るまでが長く感じる程に精神的に参ってしまっていた。

ミカエルから事情を聞こうにも、友達が心配しているから先にそっちに行くように言れた。

後でちゃんと説明してくれるのか不安ではあったが、恐らく2人も心配しているだろう。


 すると、保健室では神森さんが目を覚ましており、俺が入ってきた瞬間一斉に3人共こちらに顔を向ける。


「よかった~明奈ちゃん!! 途中から居ないのに気づいていたけど、とにかく神森先輩を運ぶのを優先しちゃって、すぐに来るだろうと思っていたのになかなか来ないんだもん、心配したよ~!」


 そう言って、朋美が近づき今にも泣きそうな顔を俺に向けてくる。


「あ~ごめんね朋美」


「明奈さん、まさか。2年生の人達に何かされたの? あなた羽根生やしたままで行ったでしょ?」


 神森先輩が真剣な顔で俺を見ている。

でも、羽根が生えてるのは朋美も同じ。なのに、俺だけがというところが不思議に思われている様です。

さて、どうしようかな。


「あ~ちょっと、いちゃもんをね。白い羽根の人だけでも、相当いじめていた人達だからね。私のこの羽根も良い標的なのかな?」


「やっぱり、許せないです。何が羽根の病気の病原体よ!」


 神森先輩が興奮しているなんて、相当ですね。

吉川先輩が咄嗟に止めてはいるけれど、再び2年生の教室に殴り込みに行きそう。


「昌子、もう止めなって!! あいつらには何言っても無駄だし、先生達の言葉すら通用しない。さすがに今回の事で、学校もようやく警察に相談をする事にしたんだから、後は大人達に任せよ」


「亜希子、でも……」


 さすがに、自殺未遂者も出していたら警察も動きますよね。

でも、警察で何とかできるのかな……いや、出来たとしても根本的な解決にはなっていない。

それにしても。


「何で、山本先輩ばかり執拗に狙うのかな……ここにも羽根持ってる人が居るのに」


 俺のこの疑問に、神森先輩が重い口調で話始める。


「それは、あの子が最初の『天使の羽根症候群』の発症者だからよ」


 なる程、そう言うことですか。

あの子が最初に羽根が生えたのか。だとしたら、昔から相当厳しい扱いを受けていたのは間違いないね。


「私も亜希子も、あの子と中学が同じだったからね。その頃から、彼女はいじめられていたわ。でも、あの子が私達と同じ高校に入ってきた時、目を疑ったわ。背中に羽根が付いていたから。私達も最初は驚いたわ、でもその羽根が原因で、いじめはエスカレートしていったの」


 神森先輩は、ベッドに腰掛けており膝の上に置いている手を強く握りしめていた。


「昌子は人が良いからね。何とかして奈々美へのいじめを無くそうと、必死になっていたけれども。それでも、どうにも出来なかった」


 神森先輩に続いて吉川先輩がこれまでの事を話始める。

聞く限り、この2人は相当頑張っていじめを止めさせようとしていた。でも、止められなかった。そして、どういう訳か連休中も彼女の家に嫌がらせをし続けて、遂に今朝山本先輩は自殺未遂をしてしまう。


 神森先輩は、目に涙を溜めていた。恐らく堪えているのだろう。

それに気づいた吉川先輩は、俺達に今日は帰るように促してきた。

確か俺達に出来ることは無かったので、言うとおりにする事にした。


 そして、俺は思った。

人間がどう足掻いても、あれには勝てない。ソロモン72柱の1人ダルタリオン、またの名をダルタリアン。ネットで調べてみたら、彼の能力は思考操作をし秘密の企みを暴く事に長けている。後は、幻像を自在に見せたりも出来るようだが力を制限されていると言っていた為、こちらの能力は使えないのかな?

ネットの情報だからね、ほんとにそうなのかは知らない。





 朋美と、一緒に電車に乗り途中で彼女は降りていく。終始暗いムードで気まずかったが、しょうがないよ。

そして、俺も自分の家の近くの最寄り駅に着くとゆっくりと家に向かう。

その時、曲がり角に見覚えのある人物が立っていた。


「さて、ミカエルさん。説明してくれる?」


 すると、曲がり角からぐるぐる眼鏡をかけたミカエルが現れ俺の横につき、並行しながら歩き出す。

でもね、これ要らない。

俺は、ミカエルのぐるぐる眼鏡をサッと外す。


「あ~!! ちょっと、それが無いとバレるから!」


 あぁ、変装用か……確かに、周りの人の視線が集まってきたね。俺は今、羽根を隠しているけれどミカエルは出しているしね。それで顔まで出したらバレるか。ウィッグは付けてないとはいえ、似ているだけでもうるさいしね。

そして俺は、渋々ぐるぐる眼鏡を返した。


「全くもう~考えてよね~ちょっとは~」


 ぐるぐる眼鏡をかけながら、ミカエルは注意してくる。

その話方が気に入らないのですよ。

まぁ、『スター・エンジェルズ』のミカエルだってバレる方のが面倒だからしょうがない。


「さてと、とりあえずげんこつ一発良いですか?」


「ちょっと~! さっきから怖いよ君!!」


「こっちはもっと、怖い思いをしたのです~」


 右手を握って見せただけで逃げやがりますか。


「まぁ、悪かったとは思うよ~僕の完全なミスだよ。ソロモンが既に僕の行動に気づき、手を打っていたなんてね~」


「じゃぁ、やっぱりげんこつを……」


「話を最後まで聞いてくれるかな~?!」


 後ずさりして、距離をとりますか。

良いでしょう。弁明くらいは聞いてあげましょう。


「全く、そんなんだから君は完全な天使になれずに、堕天使になっちゃうんだよ」


「やっぱり、この黒い羽根って……」


「そ、堕天使の証だよ~言いたく無かったけどね、でもダルタリオン君から聞いたんでしょ?」


 俺は、黙って頷いた。


「堕天使って、結局のところ悪魔に落ちる事が多い。だから、ダルタリオン君も誘ってきた。今はまだ不完全だけど、完全な堕天使になってしまえば、人間界も完全に掌握する事が出来るくらいに君の力は強力なのさ」


「えっ? 私って、そんなに?」


 俺は、目を丸くしてミカエルを見たが……ぐるぐる眼鏡のせいで吹き出しそうになってしまった。


「ちょっと、まじめに聞いてくれるかな~?」


「くく……ぷっ。じゃぁ、その眼鏡やめて」


 ダメだ、緊張が解けたからか真剣な話の時にも関わらず笑ってしまいそう。


「はぁ、しょうが無いなぁ。ちょっと意識阻害の結界でもかけておくよ。これなら眼鏡とっても、似てる人かとしか思われないしね」


 そう言いながら、ミカエルはぐるぐる眼鏡を取る。

やれやれ、助かった。次に顔を見たら抱腹絶倒しそうだったからね。


「さて、とにかく君は今天使と悪魔の間で宙ぶらりん状態なのでね。悪魔側にでも、天使側にでもなれちゃうんだよ」


「え~、せっかく頑張って性格直してるのに」


 俺は、口を尖らせて文句を言う。これ、女の子が可愛いけどね。男がやったらひたすらにキモい。でも、何だろう。別に変な感じはしないな。


「うん、それは分かっているよ。最初に比べてだいぶ女の子らしくなっているよ。でもね、それと性格は別だよ。まだ、君は人を見下している所がある。気づいてるかい?」


「……そんなこと言われても、よく分かんない」


 自分の短所等は人に言われないとなかなか気づけない。

現にミカエルに言われたのだから、その通りなのだろうね。


「とにかく、君は悪魔の誘惑に負けずに僕達のところに来て欲しいね。もし、悪魔に負けずに打ち勝つ事が出来れば。死んだ後は天界に来られるようにしてあげるよ。というか、そうしなければならない」


「あれ? 話的にもここは男に戻してあげるじゃ?」


「残念ながらそれはもう不可能だよ。何だい? 男に戻りたいのかい?」


 そう言われたら、何だろう。何か、違う。

男に戻っても、結局職にあぶれたダメ人間として再び生きていかないといけない。

それに、今こうやって順調に友達も出来て楽しくやっているんだ。男の時よりマシな人生になりそう。


「ふふ、君の心はもう決まっているようだね」


「うぐっ」


 的確に、心を見透かされたような言葉に口をつぐんだ。


「さて、次に僕がやろうとしていることだけど。これは、単純さ。『天使復活計画』だよ」


「天使復活?! 出来るの?!」


 もしそれが出来るなら、俺の負担が減る。

大天使さんも、黙って見ているわけなかったんだ。良かった。


「ただ、時間はかかるよ。天使になりそうな人達は、羽根が生えているけどね。ウイルスにかかるということは、少なくとも天使になれる可能性があったからだ。それで、今その人達は“天使候補”なんだよ」


 恐らく、『天使の羽根症候群』の人達だね。

たしか、俺は2種類感染して天使になったんだ。

1種類でも感染しているなら、その人達を天使にする方が羽根が生えていない人を使うよりも、ずっと簡単なのだろう。


「ただし、それにソロモン72柱が気付いていたみたいでね。手を打たれていたよ」


「どういうこと?」


「天使は、清らかじゃなければなれない。君もよく分かっているだろう? 君の羽根が黒いのも、天使の資格はあったにも関わらず清らかで無いために黒いのさ。つまり、『天使の羽根症候群』の人達も清らかで無ければ、死んだ後に天使に転生させようにも出来なくなるのさ」


 ちょっと待って、それは良いけど。

死んだ後?? 今すぐには無理なのですか?


「それって……」


「言いたいことは分かるよ。確かに、今すぐに天使を復活させたいところだけれども、まずは僕の復活と四大天使の復活が重要さ。そうでなければ、今の僕では天使に転生させることが出来ないんだ」


 あれ? でも、俺。天使になってますけど?


「君は、“特別”」


 強調したよ、この人。さっきから、俺の力が強力だとか特別とかどういう事? 心を読んだ事はこの際スルーするけどね。


「だって、君は。ルシファーともう1人の大天使の転生者みたいなものだからだよ」


「……」


「……」


「ファッ?!」


 ちょっと待って!!! 2人?!


「えっ? ちょっ、え? どういう事?!」


「だから、君はルシファーの転生者に近いと言っても過言ではないからだよ。もう1人居るけど、それは今は置いておくよ」


 はい?? ルシファーって堕天使でも超有名人じゃん。

というか、あの人死んでたの? いや、堕天使に死んでるもおかしいか?


「あ~もう、落ち着きな。これは幸か不幸か、悪魔達が僕達を絶滅させる時に使った魔法が強力過ぎたのさ。天使を1人残らず全滅させ、強制的に転生させる魔法さ」


「なっ……なっ」


「それは、堕天使も例外では無かったのさ。元天使ですらターゲットにされて転生させられてしまった。これが、およそ百年前の出来事さ。僕はギリギリで強力な思念体を残す事に成功はしたけれど、この世界で自由に動けるようになるまで時間を要した。そして、ようやく天使達が転生した物が何かを突き止めた。それが、天使ウイルスさ」


 もう、ずっと口ポカーン状態。口の中乾燥するよこれ。


「そこで僕は、天使ウイルスを操り人間に感染させることにより死後その肉体を使い、再転生させ天使復活を試みる事にしたのさ」


 スケールが壮大です。かなり時間がかかったでしょうに。お疲れ様です。


「ここで問題なのが、もう1つのウイルス。君だけがかかった顕微鏡では見られない方のウイルス。それが、堕天使ウイルスさ」


 そうですか。でも、何故最初にそれを言わないのかな。隠す程の事なのかな。


「あの時は、君は混乱状態だったのと。ここまで詳しく言っても理解出来ないと思ったから、その場しのぎの理由をでっち上げた。2種類同時に感染したらなんて嘘だよ……って、痛い痛い。痛いぃぃぃい!」


「大天使さんが、嘘ついても良いのでしょうか?」


 神森先輩直伝のこめかみグリグリ攻撃は効くでしょう?


「だから、落ち着いて!! 全く、君は乱暴なんだから」


「のらりくらりと真実を隠される人よりマシです」


 俺は、腕組みをしてミカエルを睨む。


「のっぴきならない状態だったんだってば。まさか、人間の中に堕天使ウイルスに感染する人が居るとは思わなくてね。それでも、君は2種類感染しているのは確かだよ。だから、まだ天使になれる可能性もあるんだよ。そしてこれも重要だから言っておくが、君の中の堕天使ウイルスはルシファーで、もう一つの天使ウイルスは何と“僕”だ」


 えっ……と、今なんと?

再び俺は、口がポカーンとなった。


「だから、2種類感染した君のウイルスの転生者はルシファーと、この僕ミカエルなんだよ!」


「はぁぁぁああ?! 何~!!」


「声が大きい!」


「はむぐっ! ん~! ん~!」


 だから鼻まで一緒に押さえてるの。苦しい。

タップ、タップ。ギブアップ。


「あぁ、ごめんごめん。とにかく事の重大さが少しは分かったかい? 君は、この天使と悪魔の戦いの行く末を決めると言っても過言ではない存在。最後の天使。“ラスト・エンジェル”なんだよ。そして、君は僕が復活するための重要な最後(ラスト)(キー)なんだ」


 ようやく、この体に慣れてきたというのにこの重大発表。

俺の肩にどんだけのものを背負わせる気なの?

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