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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第4章 ゴールデンウィーク
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連休5日目 ~ 父の想い ~

 雀さんがちゅんちゅんとやかましい。

もう少し、寝かせて欲しい。昨日は遂に、望お姉ちゃんが目覚めてしまいました。

そして、一晩中……

うん、ダメこれ。もうダメです。

ほんとにダメです。

私は、裸。察してください。


「はぁ……まさかお姉ちゃんがいきつくところまでいっちゃうとは……」


 でも、何だか心がスッキリしちゃった。

私、私……何て言わない。

もう、俺の中では何とか望を普通の道に戻そうと頭をフル回転させております。


「先に着替えて、朝ごはんにしよう。お腹すいた」


 俺は、望お姉ちゃんを起こさぬようにベッドから起き上がると、手際よく着替える。もう自分の裸にも、下着姿にも慣れてきた。

だが、まだ男性を好きになるという感覚はなかった。


 ひらひらのホルタートップのブラウスに、ショートパンツ。今日は、日が照っており少し暑いから丁度良い。

そして、俺はゆっくりと1階に降りていく。


「ん? 明奈か、早いな」


 下には父さんが、既に起きてテーブルの椅子に座り、スマホで新聞を読んでいた。


「あっ、おはよう。お父さん」


 そして、俺もテーブルの椅子に座ると、スマホをいじりだした。


「……」


「……」


 ダメだ、間が持たないですよこれは。

父さんとは、男であった時からあまり喋らない。どうも、苦手意識が俺にはあったからだ。


「で、どうだ。女になった自分は? 何か変わったか?」


「えっ? あ~変わったと言えば変わったかな?」


 まさか、父さんから話しかけてくるとは思わなかった。

思わぬ事で、俺は体がビクッとなった。

とりあえず無難に返してみる。


「1番混乱しているのはお前だから、俺達はいつも通りにしていたんだ。しかし、最近はなんだか吹っ切れた顔をしているからな。もう大丈夫だろうから、言っておくぞ?」


「えっ? な、何?」


 父さんが真剣な表情で言うもんだから、妙に礼儀正しく座っている。


「明奈、昨日の奴は彼氏か?」


 ゴツン!!


 思い切り力が抜けて、テーブルに頭突きしちゃいましたよ。

俺は突っ伏したまま、この父親は何を言い出すのかと思っている。


「ん? どうなんだ?」


「……っ、違うから!! ただの部活の先輩!」


 俺は、体を起こして反論する。

ほんとに、違うよ。父さん、あの話し方の何処がカップルに見えました?


「あら、明奈ったら顔真っ赤にしてどうしたの?」


「ほへっ?!」


 母さん。起き出して来ての第一声で何て事言うんですか?!

違います。違います。顔なんか赤くありません。

なってたとしてもこれは望のせいです!


「まぁ、父さん達はお前が誰と付き合おうが文句は言わない。お前はちゃんと、中身を見るからな」


「だ、だから。ち、ちぎゃっ……!!」


 噛んだ~!!

何をパニックになっているんだ俺は!!

何とか、否定しないと。彼氏認定されてしまう!


 はっ、そうだ。彼が『スター・エンジェルズ』のメンバーだって、言ったところで何も変わらない!!

あぁぁあ……何とかしないと。


「あぁぁぁ……違うの違うの~そりゃ、綺麗だとか惹かれたとか、一緒に居た他の人達も狙っているとか言ってたけど。違うの~」


 俺は、頭を抱えてぶんぶん横に降りながら策を必至です。


「何とか、何とかして誤解を解かなければ。このままでは彼氏認定される~」


 お母さん、違うの。ほんとにただの先輩なの!


「そりゃ、惹かれたとか言われてドキドキしちゃったし。片方しか羽根が無いのが、また魅力的だな~って思ったけど」


 彼氏とかじゃ無いから、恋愛はまだ私には早いよ!!


「明奈、明奈。多分なんだけど、さっきから心の声と実際に発言しているのが、逆転しているわよ?」


「はにゃ?!!」


 マジですか? あれ……?


「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 心の声を全部話してどうすんだ、俺は!!

母さんも止めてよ。にこにこしながら全部聞いてたしね。

咄嗟に、羽根を出現させ体育座りをすると羽根で体の前を隠すように覆った。

今の俺を見ないで下さい。


「あ、明奈。自分のせいでしょ? ちょっと……」


 羽根ツンツンしないで。

恥ずかしい、死にたい。消えたい。


「あ~ごほん。明奈、何も好きになるなとは言ってないし、父さん達は反対せんといっているだろう」


 そういう問題じゃ……


「むしろ、父さん達は嬉しいんだ。男のままではあり得なかっただろ? 人を好きになるなんてな」


「あっ……」


 俺は、すき間からおずおずと顔を出し父さんを見る。


「まぁ、彼氏じゃないのは分かった。だが、あんなイケメンだからライバルも多そうだな」


「いや、付き合いたいとかまだそこまでは……」


 しかも、相手アイドルだしね。

でも、どうなんだろう。俺は、谷口先輩の事を好きなのか?

う~ん、もう1回会ってみないと分かんないけど。まだ違う気がする。


「はは、そうだな。こればっかりは急ぎ過ぎてもしょうがないからな、お前は異例だ。だが、後悔だけはするなよ?」


 父さんは、ずっと真剣な顔で俺に話をしている。


「う、うん……」


 こんな父さん、初めてです。

しかし、両親の前でこういう話をするのはすっごい恥ずかしいですね。

まだ、羽根で覆っとかないと恥ずかしすぎて喋れないよ。


「ただ、無事付き合う事になったら、ちゃんと父さん達に言うこと分かったな?」


 うっ……何か変なルール付けられた、

大丈夫、付き合うとかまではいかないと思うから。


「おはよう~」


 すると、望がゆっくり階段から降りてきた。


「あら、あなたも早かったわね。望」


「だって、明奈が布団にいな……っ!!」


「あっ、おはよう。望お姉ちゃ……ん?」


 何か望が震えてるんだけど?


「何それ? 明奈。か、可愛い」


 あっ、まだ羽根で前を覆ったままだった。

首をちょこっと伸ばして朝の挨拶をしたけど、望お姉ちゃんの何かに触れてしまったらしいです。

すると、望お姉ちゃんはいきなり鼻血を吹き出し倒れてしまった。


「あぁ、望お姉ちゃんが漫画見たいに鼻血を吹き出した~」


 慌てて、望に駆け寄ると。何だか、幸せそうな顔して倒れている。

望お姉ちゃん……一刻も早く、ノーマルに戻してあげないと命に関わるよ。


「ア、アハハ。ここは、天国なの?」


「戻ってきて~!! 望お姉ちゃん~!」


 俺は、必死に望の体を揺さぶっている。

そこから先は行っちゃダメ~!!


「望、明奈の寝顔写真あるわよ」


 母さんが、望お姉ちゃんにそう言うといきなり望お姉ちゃんが復活し、起き上がった。


「寝顔写真!! いる!」


「ダメです!」


 俺は、咄嗟に2人を止める。

というか、いつの間に寝顔写真を撮っているんだこの親は。


 そしてそれを、暖かな目で父さんがみていた。

父さんて、いつも俺達の事をこうやって見ていたの?

俺は、父さんの事を一切分かっていなかった。父さんは、いつでも家族の事を考えてくれていたんだ。

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