連休4日目 ~ 家族との団らん ~
翌朝、今日は悶えること無く起きることが出来た。
望はまだ横ですやすや寝ている。
望は、ほんとに美少女だ。女らしさを磨くために、これから望に色々聞くことにしよう。
「んぅ……ん~。あっ、明奈。おはよう……」
望が、ゆっくりと目を開けて寝ぼけ眼で俺の顔を眺めてくる。
「おはよう、望お姉ちゃん」
「もう、人の寝顔見ないでよ~姉妹だからって恥ずかしいでしょ~」
そう言いながら、望は俺のほっぺをつねってきた。
だから、何で皆ほっぺなんですか。
「ごへんなさい。いふぁいへふ」
「ふふふ、明奈可愛い~」
「むぅ~」
何人の顔で遊んでいるんですか。まぁ、良いですよ。それが、望お姉ちゃん何だから。
そして、俺達は揃ってベッドから起き上がると大きく伸びをし、パジャマから着がえる。
あ、一緒に着がえてしまってるけど。何だろう、あんまり気にならないや。
俺は、薄手の長袖のブラウスにショートパンツ。
望も、チェックのカッターにショートパンツにしていた。
「あっ、そう言えばさ普通に同じ部屋で着がえちゃったね」
やっと、気づきましたか。それだけ、気持ちの切り替えが出来ているのだろうか? だとしたら早すぎませんか?
「うん、そうだよ。でもあんまり気にならなかったかな……」
俺も人のこと言えないな。姉妹そろって切り替え早くないかな?
そんなことを考えながら、1階に降りると母さんが朝食の支度をしていた。
「あっ、お母さん手伝うよ」
俺は、そう言いながら母さんの近くに駆け寄る。
「あら、ありがとう。それより、更に女の子っぽくなっちゃってるけど。どうしたの?」
「何でも無いよ~」
多少の変化でも気づくとは、さすがは母親だね。よくよく考えると、良い両親を持っているのに、今まで反抗期の様に散々な態度を取ってきたからな。
「私も手伝うよ、母さん」
そう言って望も近くにやってくる。
「ブヒヒ、明奈ちゃん。更に可愛さに磨きが」
「あれ? ブタお兄さん。ようやく来たのですね」
「だ、誰がブタお兄さんだブヒィ!!」
その最後のが正に、豚である証拠じゃないの?
因みに、ブタお兄さんは色々俺にちょっかいを出してはそのたびに、変身させていたものだから、フィギュア作成とかやらなければならない事が沢山溜まっていた。
そのおかげで、この避暑地に来るのが2日遅れとなっていたのである。
ついさっき、父さんの車でここに着いた様である。
「さっ、早くご飯にしましょう」
朝は手軽に食べられるものにしていた為、そんなに手伝う必要もなかったみたい。
朝食を食べ終え、俺は早速望に女磨き指南を受けようと考えていた。
しかし、ブタが2日ぶりの俺の姿に耐えきれずに飛びかかってきた。
相変わらずな人ですね。
俺は、羽根を出現させると軽く突撃してくるブタお兄さんを蹴り飛ばした。
今日は家族各々自由にのんびり過ごすようだ。
ここにいたらブタお兄さんの餌食になりそうなので、近くのアスレチック遊具のある場所に向かうことにした。
「あら、楽しそうね~母さん達も行きましょうか?」
母さんがそう言うと、皆が了承した。結局ブタお兄さんから逃げられなかった……くそ。
アスレチックに着いたが、あまり人がいない様だ。近頃は怪我をするから危ないと、親がこういう場所からは遠ざけているようである。
さて、俺が何でここに来たかと言うと。たまにはこういう遊びも良いかと思ったのと、女の体で運動する事に慣れておく為だ。
ここは、スタート地点とゴール地点があるタイプライターで落ちない様にゴールまで進む形式になっている。
「さて、行きますか。最初のだいっ……ぽぅ?!」
丸太が点在するタイプの、ピョンピョン飛び移るものに足をかけようとした瞬間踏み外してしまった。
顔面強打は避けたけど、ここまで運動音痴とは……
「大丈夫? 明奈」
先に小さな丸太の上に乗っていた望が、心配そうに覗きこんでくる。
「う~……気を付けないと。この体、動きにくいや」
とりあえず慎重に丸太の上に乗り、進んでいく。
しかし、飛び移るタイプのはなんとか行けるが……
「明奈、落ちるって~手を先に前の掴み棒を持って」
「そ、う、言われても~」
ぶら下がるタイプはダメだ。力が出ないというか支えられないのか、こんな軽い体すらも。
「あぅ?!」
はい、思いっきりお尻から落ちてしまった。くそ……恥ずかしい。
でも、情けなさは思った程ない。だって、女の子だもん。涙が……
よし、リベンジしよう。
そして、次は何とかギリギリ先程落ちた所もクリアした。
次は……
「ターザンロープか」
定番ではある。しかし、これはほんとに体を支える力がいる。
よし、少し気合を入れて……
「よっ……と。うわわわ!!」
ロープが動き出したが、いきなり初速が付きすぎて結構速い。
ヤバい、ヤバい。落ち……
「明奈ちゃ~ん! 落ちたら僕が抱きしめて上げる~」
ブタお兄さんが、下で両手を広げている。確かに、肉布団で衝撃は吸収されるだろう。だが、そんなことはさせない。
「あ~……手が滑った~」
グシャッ
「ブフゥ!!」
わざとらしく、ブタお兄さんの上で手を離した俺は、見上げていた顔面の上に跳び乗り踏みつけた。
「あっ、明奈ちゃん。踏みつけてくれてありがとう」
「って、生足じゃないし!! 普通に靴で踏んづけているのに、キモいキモい!!」
ほんとに、あり得ない!!
何回も何回も、ブタお兄さんの顔面をピョンピョン跳びはねて思い切り両足で踏みつけているのに、一向に倒れない!!
「あぁぁぁ、明奈ちゃんの靴裏も最高……」
「あぁぁぁ!! キモい!!」
俺は遂に黒い羽根を出し、思い切り踏みつけた。
「ブヒャアァァ!!」
あ、体の下から半分地面に埋まった。ちょっと、やり過ぎたかな?
「軍曹……僕の屍を超えて、先に……ガクッ」
あっ、死んだかな? いや、生きてるね。気絶しちゃっただけか。
「明奈。もうちょっと埋めとかない?」
「いや、それよりこっちじゃない?」
俺は、そっとブタお兄さんの前に近くにあった花を手向けた。
因みに、母さん達はずっとカメラを回していましたね。久々の幸せな団らんの時。こういうのは10年以上ぶりだな。
ただ、その時誰かの熱い視線を感じたけど、気のせいかな?
いつも通りの時が過ぎ、晩御飯も少し贅沢な上等な牛を使ったステーキであり、お腹も満足した。ただ、やっぱりブタお兄さんはステーキと一緒にポテチを食べていた。ステーキ味のを。
そして、また望と一緒にお風呂に入っている。
「ねぇ、明奈。今日はいつも以上に気合を入れて洗っているね」
俺が、熱心に体を洗っているのを望が眺めながら言ってきた。
「そりゃ、女の子だしね~」
「そんな、いきなり女の子にならなくてもゆっくりで良いんじゃないの?」
望が、そう言ってくるものの俺自身はおそらく、気持ちは女の子になっていたんだろう。だが、最後の男のプライドが残っていた為に、完全に女の子になれなかったようである。
「そうは言ってと、望お姉ちゃんも。想いを振り切ったでしょ、だから……」
「ん~、でも私。アキにいは諦めたけど、明奈は諦めてないからね。フフフ」
あ、あれ? 殺気が。待って今羽根生やしている。
髪洗ってて、泡が入らないように目を閉じているの。後ろに気配があるの。
もう何が起こるか分かっているの。止めて止めて……
「明奈は、ずっと私の可愛い妹で。ずっとこうやって可愛がりたいの~」
そう言って、お決まりの様に羽根を触ってくるし匂いも嗅いでくる。
しかし、俺は耐えている。何回もされたら、耐えられるようになるのですよお姉ちゃん。
「くっ、んん……ふふ。もう耐性が出来たよお姉ちゃん」
俺は、そう言いながら髪を洗い流す。
「む~、じゃぁこっちだ!!」
「うきゃぁ?!! ど、どこ触ってんの~?!」
ちょっと待ってお姉ちゃん。遂に、触っちゃいけないとこまで?!
それは、ダメだ!! 完全に百合だから、それ!
「や……止めて、お姉ちゃん。ごめんって……きゃぅ?!」
「ウフフ、今日は寝かさな……」
「そのセリフもダメ~!!!」
拝啓、お父様お母様。
私達は、悪い娘達です。どんどんあらぬ方向に突き進んでおります。
お許し下さい。




