連休1日目 ~ コンサートへ行こう ~
今日はゴールデンウィーク初日、いきなりだが俺は約束がある。
それは、西澤さんと『スター・エンジェルズ』のコンサートに一緒に行く約束だ。
望にこの事を話すと、羨ましがっていたがそこまで駄々をこねてはいなかった。
その代わり、グッズを沢山買ってこいと言われた。
買わなければ羽根をいじくり倒すと言われちゃ断れない。
俺の街から1駅先の駅前で、俺は西澤さんを待つ。コンサートは昼からになるがその前に一緒にランチを取ることになっている。
西澤さんはまだらしいので、俺は身だしなみの最終チェックをする。
今日は、水色のTシャツに長袖のカーディガンを羽織って、スカートは膝くらいのフレアスカートである。割とラフな格好をしている。
デートでは無いのでな。スカートもだいぶ慣れたとは言え、視線は気になるね。何、ジロジロ見ているんだろう?
「ねぇ、君。今暇してる? 良ければ話さない?」
「ごめんなさい、友達と待ち合わせしているんで」
とりあえず、今日何度目かのナンパを追い払う。ほんとにしつこいよ。
「ごめん。お待たせ、明奈ちゃん。待ったよね?」
そう言いながら、西澤さんがやって来た。因みに、西澤さんは今日は花柄の膝下までのワンピースに、上は俺と同じくカーディガンを羽織っている。
「ん~、数分しか待ってないし大丈夫。ちょっとナンパしつこかったけど」
俺は苦笑いしながら答えた。
「あはは、明奈ちゃんが可愛いからだよ~」
ここ最近の西澤さんは、初めて会った時よりも明るくなっていた。これが、本来の彼女の姿なんだろう。俺達と居るだけでも楽しそうだからな。
「じゃぁ、コンサートの駅まで行ってそこでお昼にしようか」
西澤さんがそう提案してきた。無難ではあるよな、電車が込みだす前に移動するべきだろう。
「うん、そうしよっか。というか、グッズってコンサート終わってからの方がいいの?」
これを気に西澤さんに色々聞いておかないとな、売り切れてたなんてのはごめんだからね。
「そうだね、明奈ちゃんはコンサート初めてだからね。色々教えてあげるね」
西澤さん、今日はいつもより楽しそうだし笑顔が眩しいですよ。
俺達は他愛ない会話も交え、コンサート会場の駅へと電車で向かった。
「丁度良い時間だし、お昼にしようか。明奈ちゃん」
「うん、そうだね。お腹空いちゃったよ」
俺は、お腹をさすりながら西澤に返事をした。駅に着いてからお昼までの小1時間、ショッピングに連れ回されたからね。後、西澤さんが骨董品好きとは思わなかったな。
骨董品の店の前から、10分程動かなかった時は驚いたね。
「ご、ごめんね。明奈ちゃん、変な所で足が止まっちゃって。ひ、引いた?」
西澤さんがおずおずと俺に聞いてきた。やっぱりそこは気になるんだね。
「ん、大丈夫だよ。人の趣味にとやかく言うつもりはないからね」
「ほんと? よかった~明奈ちゃんっていい人だよね。普通、皆は変な顔するよ」
西澤さんにそんな事を言われて、ちょっと顔が熱くなる。褒められる事には慣れてないんだ。
「あ、明奈ちゃん。ここだよ、このお店の料理はおいしいんだから」
そう言われて、西澤さんが足を止めた。
ずっと、西澤さんに着いていく形だったので周りを見ていなかったが。コンサート会場からは少し離れており、ビルが立ち並ぶ場所から少し小道に入りまっすぐ進み、また裏路地の様な細い道をずんずん進んでいた。
そんな見つかりにくい様な場所にその店はあった。
「西澤さん、よくこんなお店見つけられたね……」
しかも、外観は一見すると普通の住宅だ。だが、メニュー看板が出ているので間違いなく料理店なのだろう。
俺は、看板に書かれているメニューに目を通した。
『本日のおすすめ:魔王のご機嫌ランチ』
「朋美。ここの店長ってどんな人?」
「あっ、えと。ちょっと変わってるみたいだけど。腕は確かだって書いてたよ」
ホントだろうか。よく見てみると入り口にゲームでよく見かける、盾や剣が飾ってあった。
「大丈夫だよ。私も初めてだけど、口コミで調べてるから。おいしいって評判だったし。それに私、こういう隠れ家的なお店が好きなの」
にこにこしながら入っていくんだもん。他の所にしようとは言えなかった。頼む、普通の料理が出てきてくれ。
「いらっしゃいませ~」
中に入ると店員が挨拶をしてきた。魔術師の格好をした店員がな。徹底しているな。むしろ、そこで普通のエプロン姿ならメニューも普通にしろよとツッコミを入れたくなる。
そして、店内までダンジョンの様な内装で徹底してある。むしろ外観は普通の家なのに、別世界にワープした気分だよ。
「わ~凄い!! 中は忠実に再現してある~正しく『ソウルダンジョン』の龍魂迷宮そのものだ~!」
西澤さんのテンションが以上に高くてビックリした。まさか西澤さん……
「朋美ってこういうの好きなんだ~」
「あっ。ご、ごめん。つい興奮しちゃって。あの、今度こそ引いた?」
西澤さんは、また申し訳なさそうに聞いてきた。
「あはは、ちょっとビックリしたけど。身内に似た人にいるから、大丈夫だよ」
俺は、笑顔でそう返した。西澤さんの様子からしてオタクではないようだが、多分ゲーマーってやつなんだろうね。
「よかった~あ、席に着こっか」
そう言って、西澤さんが空いてる席に向かう。
俺もそれに続き、一緒に座った。
その後、店員がメニューを持ってくる。うん、着ているロープ長いですね。ズルズル引きずってて歩きにくそう。業務に差し支えないのかな。
「わぁ、凄いユニークなメニュー名だね」
西澤さんがメニューを見て言ってくる。
「うん、そうだね。でも写真載せて欲しいかな」
何がくるのか怖いよ。特にこの『ドラゴンゾンビの尻尾』って何がくるのかな? すると、西澤さんがメニューを指さす。
「あ、じゃぁ。私、春の七草パスタにしよっと~」
「普通のあったの~?!」
揃えようよそこは、思わずツッコミ入れちゃったよ。




