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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第3章 暴かれる正体
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おしおきです

 その日の放課後職員室に行ってみたが案の定、学年主任も校長も俺の羽根の事は知っていた。

校長曰く、いじめられないようにするための処置だと担任である柳田に言った。


 柳田は納得いってない様子ではあったが、校長のその言葉に渋々引き下がった。

そして、俺へのいじめが起こらないよう注意するようにと釘まで刺されていた。

今の所危険なのは、2年生だということではあったがそれは俺の態度次第だ。起こったら起こったで対処の仕方はある。






 そして、その日の夜。リビングでは家族が揃っており俺は皆に今日起こった事を説明した。

父さんも母さんも、そんな状況では仕方ないと言ってくれたのだが、問題は望の方である。

帰って来てから、終始俯いて顔を赤くしており俺と目を合わせない。


「望?」


「……っ!」


 俺が、望の顔を覗き込んだからそっぽを向く。また、覗き込もうとしたらそっぽを向く。結構面白いかも。

顔を合わせたくないのは分かるけどね。俺を取られたくないと思って対抗してしまい、挙げ句後先考えずに俺の目の前で告白してしまった。


 そりゃ、合わす顔なんてありませんよ。でも、そんな事で望とぎくしゃくしてしまうのも寂しいからな、俺は俺なりに元気づけようとしてるのに

ずっとこれだよ。


「望、告白してしまったのはしょうが無いし、明奈がそれくらいで望を嫌う人間だと思う?」


「そうそう、その通りだよ」


 母さんの言葉に、俺は首を縦にふりここぞとばかりに肯定する。


「ほんとに? ほんとに、気持ち悪いと思わないの?」


「家族なんだし、そんなこと気にしてもしょうが無いよ。それに、ぎくしゃくもしたくないよ、私は」


 あ、望が明るい笑顔になってる。今までどんだけ自暴自棄になってたのかよく分かるよ。若干涙目だしね。


「ありがとう~明奈~」


 そう言って望は俺に抱きついてきた。

おいおい、ほんとにこれじゃどっちが姉か分かんないな。


「ブヒィ~僕も明奈ちゃんと恋仲になりた~い!」


 そう言ってブタが突撃してきた。しかし。


 バシーン!!


「ブヒャァア!! 軍曹~!!」


 望が久々にハリセンで引っぱたくが、しばらく見ないうちにハリセン分厚くなってませんか。後、鉄板も分厚いよ。


「守お兄ちゃん、今は私と明奈のイチャイチャタイムなんだから邪魔しないでくれる? 今度はブタどころじゃ済まさないわよ。明奈に頼んで哺乳類以外にさせるからね」


「は、はひ……ご、ごめんなさい」


 あぁ、ブタが情けない。もういっそ永遠に本物のブタにしてやろうか。あの有名なアニメ映画の様に。


「さっ、明奈。お父さんはもう入ってるから、一緒にお風呂入ろ」


「えっ、一緒に? いやちょっと、そこまでは……」


 あの、望さん聞いてますか。聞いてないよね、ズルズル引っ張って行かないで。拉致だよこれ。


「か、母さん。助け……」


「まぁ、程々にね」


 突き放したよ、この親。公認かよ。ちょっと待って、せめて止めてください。お母様。






「明奈、一緒に寝よう~」


「もう、止まらないね。望」


 あれから、風呂で羽根を触られまくって悶絶地獄を受けた俺は、部屋でぐったりしていたのにまた望が突撃してくる。

もう、俺への気持ちを抑える必要が無くなった望は、次々とスキンシップしてきて正直その気持ちを受け止めきれない気がしてきた。

異常なくらいにベタベタしてくる。


 確かに、鷹西さんに宣戦布告されてるからね。気が気じゃないのは分かるがね。

でも、大丈夫だよ俺はレズじゃないよ。ちゃんと女の子が……あれ。今の俺は女の子だから、それはレズになる。

じゃぁ、男が好きなのかと言われたらそうでは無い。いや、気持ちまで女の子になってないからだ。

またしても体と気持ちのギャップに悩んでいると、望みにほっぺをつままれた。

だから、なんで皆はほっぺをつまんでくるの。


「はにふんの?」


「明奈が悩んでる事くらい分かるよ。気持ちはまだ女の子じゃないから、これからの事が不安なんでしょ?」


「……」


 俺は、無言のまま目線を下に下げた。


「別に、私の気持ちに答えようとしてくれたり、返事を出そうとしなくてもいいよ。ただ、私は一緒に居られるだけで幸せだから。家族ってだけで、絶対に切れない縁がある。それだけでも、私は幸せだよ」


 その答えにすぐにたどり着いたわけではないだろうに、望は望なりに悩んで出していた答えなんだろう。

それに、甘えるわけにもいかないけれど。今すぐ答えを出す必要はないよな。

でも、いつか望の様に答えを出しておかないと。

そう思い、少しでも望と居てあげられるようにその日も一緒に寝る事にした。羽根は消しているから抜かりない。目覚まし代わりに悶絶していたら体がもちません。







 翌日の朝、いつも通りに望と一緒に学校に着いた俺は、早速2年生からの洗礼を受ける事になる。

皆がグラウンドに集まっており、ざわざわと騒いでいた。

何事かと思い、皆の方に向かう。


「あ、明奈ちゃん。明奈ちゃんは見ない方が……」


「明奈、とりあえず先生の対応にまかせよう、あなたは見ない方がいいよ」


 朋美と理恵の反応に、だいたいの事は分かった。

おそらく、グラウンドに何か書かれている。


「大丈夫、分かってるから。見せて」


「ちょっ、明奈」


 望が止めてくるが関係ない。こういうのは、俺がしっかりしないと相手が調子にのるからな。

そして、俺はグラウンドに出た。そこには予想した通りでかでかとこう書かれていた。


『橋田姉妹は地球外生命体』


 望までターゲットにするとはね。昨日止めようとしたからかその腹いせか。

望も、口に手を当て驚いている。

俺は、後ろの校舎の2階に目をやった。すると、2年生全員がクスクス笑っている。2年生が犯人なのは誰が見ても明らかであった。


 そうしているうちに先生達がやって来て、担任の柳田が俺に教室に入るように言ってくる。


「こういうのは、俺も正直腹が立つな。君のお兄さんも近い事をやられていたからな」


 あぁ、覚えてるさ。でも、あれはこんなには酷くなかったから無視していた。でも、今回のは規模が違う。

そして、喧嘩を売る相手を間違っているぞお前らは。


「先生、私は大丈夫ですから。それに、問いただしても皆が口裏を合わせて誤魔化すだけよ」


「だが、そういのは……」


 柳田が何か言う前に、俺はつかつかとグラウンドに出る。

そして、文字の上に立つとクルッと振り向きにこやかな笑顔を2年生達に向けた。


「これをやったのは誰ですか~?」


 大きな声を張り上げ、2年生達に叫ぶが。当然、クスクス笑いながら無視である。

挙げ句には、スマホを取り出し撮影までする始末。

これは、先生達には手に負えないレベルだ。

SNSで拡散していたり裏でコソコソ話し合ってる事だろう。

なら、徹底的に行わないとね。


 そして、俺は羽根を出現させ右足で地面を叩きつける。

その瞬間、その場所から一気に地面にヒビが入り陥没した。


「ねぇ、誰がやったの?」


 それでも俺は、にこにこと笑顔を作る。

心の中では怒り心頭だがな。

しかし、驚くべき事に2年生達は全く動じなかった。

どういう神経しているんだこいつらは。しかも、「スゲースゲー」言いながら撮影続行か。

はぁ、しょうが無い。

俺は、指を鳴らしダイスを出す。

そして、面を埋めていき地面に転がす。


『この文字を書いた人、グラウンドに出る』


 すると、4人の男子生徒が瞬時に俺の目の前に姿を現した。


「えっ、えっ? な、なんだこれ!」


「どうなってんだ?」


 さすがに、驚いているようだね。しかも、全員いかにもいじめをしそうなヤンキーみたいな格好をしている、わけではなかった。

全員、見た目は普通。いや、むしろ1人は眼鏡をかけて七三分けで頭が良さそうな出で立ちをしているぞ。

信じられない、こんな奴らがこんな事をね。


「私の前では、逃げも隠れも出来ないわよ」


 そう言って、俺はダイスを見せる。


「このダイスがあれば、ほとんどの事が出来るからね。あなた達がこれを書いたんでしょ? ダイスにそう記せば、ちゃんとその人達に効果を与えるの。複数でも与える事が出来るのは初めて知ったけどね」


「ひっ、化け物が」


「よっ、よるなぁぁあ」


「どっちが、化け物よ。平気で人を傷つけ平然としているくせに」


 ダイスはさっき見せた後消えてしまったので、俺は再び指を鳴らしダイスを出現させる。

そして、こいつ等への罰をダイスに記していく。


「さて、あなた達には罰を受けて貰うね。大丈夫、1つは罰を与えないって言うあなた達にとっては当たりの面があるから。自分達が善人だって言うなら、その面が出るでしょう?」


 4人は、いったい何をされるのか分からずに、歯をガチガチと震わせ恐怖に脅えている。

全く、覚悟も無いのに人をいじめるなよ。

だから、こうなる。


『文字を書いた4人は謝罪するまで木馬責めの刑』


「ふふ、有罪(ギルティ)


 俺は、冷やかな目つきで口元に笑みを浮かべ笑ってやった。

こういう奴らにはきついおしおきが必要です。


 そして、拷問器具の三角の木馬が出現し、4人を乗せて拘束した。

4人はあまりの出来事に酷く驚愕し、そして突然の激痛に悲鳴を上げる。


「ぎゃあぁあぁぁぁ!! 痛い痛い、悪かったから~!」


「あぁぁぁ!! 許してください!!」


「うわぁぁああ!! もうしませんから~!」


「あぁ……もっと、もっとおぉぉ!」


 あれ、1人おかしいぞ。俺は声の方を向くと、あのメガネをかけた七三分けの男子が恍惚な表情をしていた。こいつドMかよ、しかも効いてないだと。

俺は、あっけにとられてその男子の様子を眺めていた。

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