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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第3章 暴かれる正体
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秘密の暴露

 朝の予鈴が鳴るが、俺はそんなものは耳には入らなかった。

皆加減というのを知らないのかな。


 そして、担任の柳田が教室に入ってくる。


「よ~し、色々あってゴチャゴチャしてるが説明は後にする。とりあえず、HR始め……って何やってんだ? 橋田」


 俺は、さっきから机に突っ伏して肩で息をしていた。

西澤さんが必死に揺すり起こそうとしてたけど、ちょっと待ってまだ息が……


「何だ、橋田。イッた直後みたいになりやがって」


「イッてにゃい!! はぅっ?!」


 立ち上がって否定したけれど、口からとんでもない言葉が出た。慌てて口を押さえたけど、遅いよね。そして、男子の視線が……このやろう、柳田後で覚えてろ。


「で、橋田。お前も羽根があるとはな。ちょっと説明してくれるか?」


 出しっぱなしでしたね。どっちにしても、全校生徒の前で披露したから説明するしかない。

とりあえず原因の事は伏せとくか。まだ発表されてないしね。

後、ミカエルの事もな。絶対信じないだろうしね。




「……と言うことで、原因に関しては分からないです。今の所は、『天使の羽根症候群』と同じ扱いにはされてますけど、ほんとに同じなのか自信が無いです」


とりあえず、原因やミカエルの事は伏せてうまく説明できたと思う。

クラスメイトは皆静かに聞いている。しかし、実際どう思ってるかは分からない。気持ち悪いと思ってそうだ。


「しかしなぁ、羽根が生えてるなら校長や学年主任に言ってくれないとね」


「あっ、でもこうやって消せるから良いかな~って思って」


 俺は、瞬時に羽根を消して見せた。皆ビビってるね、いい顔です。


「あ~なるほど、他とは違うからか……で、橋田。お前何を隠してるんだ?」


 心臓が口から飛び出しそうになるほど驚いたよ。

何だ、何言ってるんだこいつは。


「えっ? 何が、ですか?」


「隠しても無駄だ、俺は女の嘘をすぐ見抜く特技を持っているのさ」


 めちゃくちゃどや顔してるけど、どうでもいい特技だな。

でも、そのどうでもいい特技が今俺を追いつめてるのか。笑えないな。


「言いたくないなら、学年主任や校長、理事長にまで報告しなきゃならんぞ」


 うん、でもその理事長は父さんの息がかかってますよ。揉み消しますよ。だから、このまま黙ってても良いんだが。

何か父さんにも迷惑かけそうだし、このままずっと突っ立てる事になりそうだな、次の授業のベルはとっくに鳴ってるしね。


 と思ったら、次の授業数学か。鷹西さんが後ろに居て俺をじっと見つめてた。いつの間に。

こりゃ詰んだな、鷹西さんは良いとして次の授業の先生にも迷惑がかかるな。

俺は諦めて、信じてくれるかは分からないが全てを話した。男だったこと以外はな。



 数分後、クラス内はざわめいていた。

そりゃ、世紀の大発表だしな。でも口止めしとかないと、今の時代SNSであっという間に広がるし。


「あっ、でも医者から言われた事は言いふらさないようにしてください。まだ、発表されてないから」


「えっ、でもその内発表されるよね?」


 西澤さんが、凄く真剣な顔で聞いてきた。この子にとっては重要だしね。


「うん、でもちゃんと政府からの発表があるまでは、この事は他言に無用でね。いい?」


 うん、これ以上は俺からは口止め出来ない。後は個人の器量にかかってるが、皆話したくてうずうずしてるしダメだな。


「まぁ、医者の話は良いが。そのミカエルだか何だかは夢だろう。橋田、お前『スター・エンジェル』どんだけ好きなんだ」


 柳田が苦笑いし、クラスメイト達も少しクスクスと笑っていた。

まぁ、こんな反応でしょう。あっ、そう言えば証明する方法1つあったな。でも、あんまり気乗りしないんだよね。


 でも、しょうがないよな。俺は指を鳴らしてダイスを出現させた。

正直、超パワーとかでは信じてもらえそうにないからこれならね。


「えっ? 何、明奈今どっから出したの?」


 篠原さんが驚いて、椅子から転げ落ちそうになってたよ。そんなに驚かなくても良いのに。


「これがそのミカエルから貰った力なの。ちょっと待ってね」


 俺は、ダイスに指を当て面を埋めていく。適当にね。


「ん、じゃぁ。説明するより見て貰おうかな」


 そう言って、俺はダイスを振る。


『クラスメイト全員、10分間空中浮遊する』


「うわあぁぁぁあ!!」


「きゃぁああああ!!」


 面が出た瞬間、クラスメイト達が悲鳴を上げ始めた。

うんうん。これならいくら何でも信じるだろう。


「まぁ、こうやって対象に出た目の効果を与える事が出来るんだ」


「お、下ろして~明奈~」


「ひゃっ、ひゃあぁぁ……」


 篠原さんも西澤さんも、あまりの事にびっくりしてるな。


「えっと、10分間お楽しみ下さい」


「えぇぇぇぇ!?」


 こらこら、皆叫ぶなよ。この見事な営業スマイルが見えませんか。




 そして、10分後今度はクラスメイト達が肩で息をしてグロッキー状態です。


「えっと、信じてもらえました?」


「は、橋田。分かった、分かったから。鷹西……先生。時間も時間だし後頼みます。とりあえず、この事は学年主任や校長に話す。そして、放課後職員室にくるんだ、いいな?」


 柳田はそう言うと、ふらふらしながら出て行く。

柳田は浮かせてないのに、なんでだろう。


「晃、知ってるでしょ。英二は現実主義な人だから、あなたがやったことに相当答えてるみたいなのよ」


 鷹西さんが後ろから教壇に向かうさい、突然俺に耳打ちしてきた。


「あっ、うん」


 ん、何か違和感が。俺、今なんて呼ばれたんだ。

晃って呼ばれた……のか。し、しまった。つい、うっかり返事してしまった。


「やっぱり。そうだったのね」


「えっ、えっと……」


 俺は、ぎこちなく首を横に動かす。ロボットの様に。

そして鷹西さんを見ると、にこやかな笑顔を返してきた。

でも、ごめんなさい。怖いです、その笑顔。


「話は後で、昼休みにでも。あの場所でね」


 そう言って鷹西さんは教壇に向かう。


「明奈ちゃん、何言われてたの? 顔色悪いよ」


 西澤さんが、前から心配そうに声をかけてきた。

まだ浮いた時の衝撃が抜けきらない顔をしている。


「あっ、大丈夫だよ。ありがとう、朋美」


 俺は、何とか心配されないように返した。

でもとりえず、どうしよう。鷹西さんについにバレてしまったぞ。

俺は頭を抱えて俯いて、何とか言い訳を考えては見たものの全て無意味である。

大きなため息をつき、早く1日が終わらないかと思い時計に目をやるが、1限目開始からまだ30分もたっていなかった。


「はぁぁああ……」


 もう一回大きなため息をつき、今後の事を憂いた。

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