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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第3章 暴かれる正体
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悪魔登場?

 ポカポカ陽気の良い天気の朝、お昼寝するには絶好だなと思う今日。

結局昨日はまたしても羽根を消し忘れてしまい、望の悶絶地獄を受けて起きたものだから顔が熱いです。

俺は電車の中で鞄から手鏡を出し、顔が赤くなってないか確認する。


「大丈夫だよ、赤くなってないから~」


「む~」


 俺は不機嫌な顔で望を睨む。いったい誰のせいでしょうね。


「もう、うっかり羽根を消し忘れてた明奈も明奈だからね~」


「言い訳していいわけ?」


「冗談言うくらいなら、謝るんじゃなかったよ~この!」


 反撃するかの如く、望が俺のほっぺをつねってきた。


「いふぁい、いふぁい。やめれ~」


 と言うか、なんで皆ほっぺつねってくるんだ。

すると、俺の視界の端に変なのが見えた。


「んっ?」


「どうしたの? 明奈?」


 望の声は聞き流し、俺はその場所を再度確認すると。

そこには、何だか奇っ怪な者がいる。

普通に高校生くらいの男子が席に座ってるんだが、前にはフラフラと危なっかしいおばあさんが立っている。

普通の人なら、基本席譲るよね。譲らない人は、人のレールを踏み外すした人達くらいでしょう。


 その男子高校生は気弱そうだが、普通の高校生っぽい。

何だか、悩んでるのか凄く複雑な顔をしている。

問題はその横だ。

何か座ってる。何かとしか言いようがない。

だって、黒い全身タイツに頭には悪魔の触覚みたいなものが。

見た目完全にバイキンです。


「譲らんでええわい、お前は楽したいやろうが。ほら、楽したいやろ、だったら譲らんでええわい」


 耳を澄ませば、ほら悪魔の囁きが聞こえてくる。

と言うか、悪魔しょぼ。そして、何故関西弁だ。全身タイツだからかな。安直過ぎる。


「ねぇ、明奈! 何見てんの?」


「あっ。ご、ごめん何でもないよ」


「ほんとに~?」


 多少望が怪しんできたが、とりあえず何とか誤魔化す。

さて、アレをどうしよう。こうしよう。

俺は、こっそり指を鳴らしダイスを取り出す。すると。


「ちょっと、何ダイス出してんの?!」


 望さん、鋭すぎです。いや、さすがにバレるか。

しょうがない問い詰められる前に、白状しますか。


「悪魔~~?!」


「しっ、静かにして」


 俺は人差し指を口元に立て、望に静かにするように言った。ちょっと声大きかった。


「ど、どこにいるの?」


 望がきょろきょろと辺りを見渡す。


「ちょっと、怪しまれるから。あそこ。でも見えないよね?」


 そう言うと、俺は先程の男子の隣に向かい指を指す。


「う、うん。見えない。ほんとにいるの? あそこに座ってる子凄い悩んでそうだけどね」


「悪魔の囁きを受けてるみたいだし」


「それで、ダイスで何とかしようって事ね」


 望は、納得したかのように俺の方に顔を向ける。

さて、じゃぁとっとと面を埋めますか。

しかし、ハズレも付けないと何だよな。

『おばあさんの前に座る男子、悪魔の誘惑に負ける』

完全なハズレだよな~

後は……

『おばあさんの前に座る男子、席を譲る』

『おばあさんの前に座る男子、座ってる所から横にずれる』

『おばあさんの前に座る男子、次の駅で降りてバスに乗り換える』


 そうやって、残りも順調に埋めていく。


『おばあさんの前に座る男子、無言で立ち上がり電車の出入口に向かう』

『おばあさんの前に座る男子、「僕の膝にどうぞ」と言い座らせる』


「明奈、最後の何?」


 ダイスの面を全て埋めた俺に、望が確認するかの様に言ってくる。


「ご、ごめん。思いつかなかった……」


「まぁ、良いわ。でも、ハズレ出たらきついね。後、数値が2になってるけど、どうするの?」


 うわぉ、ほんとうだ。


「うん、2回投げたら良い」


「全くもう……」


 呆れてる望を横目に、俺はとりあえずダイスを振る。


カラカラ


『おばあさんの前に座る男子、悪魔の誘惑に負ける』


 すかさず、拾い。再び投げ直す。


「ちょっと……」


 望がじと目で睨んでくる。

大丈夫、2回振れると言うことはこういうことなのだ。

周りの人達が変な目で見てるがそれどころではない。


カラカラカラ


『おばあさんの前に座る男子、席を譲る』


 よし、最高の目が出た。 

すると、突然その男子の目が決意の目に変わる。


「あ、あの。おばあさん、良ければどうぞ」


「あらぁ、すまないねぇ」


 よし、勝ったぞ。

バイキン悪魔がビックリした目をしてやがる。

何だろう、良いことするとこんなにも清々しいんだな。

席を譲った男子もいい顔をしてるね。


 しかし、5分後次の駅に着いた瞬間。

席を譲られて座っていたおばあさんが立ち上がり、なんと降りていったのだ。


 おぉぉぉい。何してんだ、ばぁさん。

めっちゃくちゃ無駄な事をしてしまった。

あ~あ、席を譲った男子も呆然としてる。


「はぁ……」


「そんなあからさまにため息つかないでよ」


「ほんとに悪魔なんか居たの?」


「いたもん……」


 俺は、自信なく呟いた。だってもう居なくなってたしね。




 その後、高校の最寄り駅を降り例の坂道を登る。


「とりあえず、あんまり変な事には使わない方が良いわよ?」


 望はあの後から、俺に注意をしてきている。

そうは言ってもあんなものが見えた以上ほっとけなかったけどさ、今にして思えば幻覚ではなかったのかと思えてくる。

すると、突然突風が吹き荒れる。

俺の所にだけ。


「うにゃぁあああ!!」


「えっ?! 明奈?!」


 スカートめくれてパンツ丸見えです。ピンクのパンツがね。

慌てて、スカート押さえたけど遅かった。その場に居た全員に見られたよ。望もびっくり仰天って感じの顔をしてるし、恥ずかしい。

後で、全員ダイスで記憶消しておいてやる。


「ふははは! 先程邪魔をしてくれた仕返しや!」


 その声に、振り向くと何とそこには電車で見たバイキン悪魔が立っていた。

手に真っ黒なダイスを持ち。


「貴様、俺の姿が見えるらしいな。そして、そのダイス。絶滅させたと思ったがまだ生きとったか、クソ天使」


「なっ、やっぱりあんたが悪魔か」


 俺の、突然の行動と言葉に望は目をパチクリさせていた。


「ふっ、俺の姿が見えないんか。なら見せてやろう。さぁ、とくと恐怖せい!」


「あっ、おい!」


 しかし、遅かった。バイキン悪魔は両手を上に上げ、高らかに叫ぶ。

すると、全員が一斉にそのバイキン悪魔に視線がいく。


「きゃぁぁああああ!! へんた~い!」


「あははは!! 何だあれ? 芸人か?!」


 女子と男子とで意見分かれたが、こんなもんだろう。

そして、バイキン悪魔は顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。

自分の格好に気づいてなかったのかな。


「あ、明奈。電車で見たのってまさか……」


「うん、こいつ」


 望も呆然としている。こんなの誰が見てもこうなるよ。


「くっ。ゆ、許せん! 俺の力を見せてやるわ~このダイスは人に不幸を与える、デビルダイスや!」


 そう言って、バイキン悪魔はダイスを格好良く俺の前に突き出してくる。すると、そこに書かれてる面が見えた。


『目の前のクソ天使、スカートめくれる』

『目の前のクソ天使、靴の紐が切れる』

『目の前のクソ天使、学校に遅刻する』

『目の前のクソ天使、つまずいて転ぶ』

『目の前のクソ天使、10円玉を落とす』

『目の前のクソ天使、扉で指を挟む』


「しょぼっ! で、ハズレないの?!」


 あ、つい口に出してしまった。


「なっ……だ、誰がショボいって?! ふん、悪魔のダイスやからな、ハズレなんてないわ!」


 カラカラカラ


 まぁ、俺はその間にとっくにダイスの面を埋めてましたよ。

どんな天罰が出るかな。


「えっ、あっ?! 貴様卑怯だぞ! 天使と悪魔のダイス対決は同時に振りあうんやぞ。こら!」


「そんなの知りませ~ん」


 俺は、とぼけ顔で知らん顔する。

悪魔の言葉に耳を傾けたらいけないからね。

そして、ダイスは止まり効果の目が出る。


『悪魔のダイスの重さが100キロになる』


「うぎゃぁぁぁああ! 痛い痛い! 刺さっとる刺さっとる!!」


 バイキン悪魔の手に乗っていたダイスは、いきなり重くなったようで地面に突き刺さっている。手と一緒にね。


「あ、もう1回振れる」


カラカラ


「ひっ、ひいぃぃぃい!! 俺見習いやのに~!」


 バイキン悪魔の悲痛な叫びは空へとかき消えた。

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