モブ、日常。
「まさか本当に私達が卒業前に3人産むなんて、劇的な人生ねリリアン」
「「冗談だったのに、しかも一気に3人なんて」」
「ええ、冗談でも口にしない方がいい事ってあるのね」
今思えば完全にフラグでしたね、あの会話。
「きゃっきゃっ」
「可愛いわねぇ」
「「ぷにぷにすべすべ」」
ララ、ルル、ライラにも物怖じせずに笑顔を振りまく我が子、人見知り全然しません。
「見事に血筋が反映されてるわね」
赤毛、銀髪、金髪。
「聞いてよ、ヴィーったら自分に似ないで欲しいとか言うのよ」
「それは公爵様の気持ちを考えると、致し方無いのではなくて?」
「私達は大丈夫だけど」
「少数派」
「・・・、顔?」
「「「顔」」」
「まあ本人も気にしていたけど、この事で喧嘩までしたのよ」
「へえ珍しいわね、あれだけ仲良いからそういうの無いと思っていたわ」
「「なんて喧嘩したの?」」
「ウィルの目元はヴィーにそっくりね、きっと凛々しい男の子になるわ、よしよし」
「嬉しいが、個人的には余り似ないで欲しいな・・・」
苦笑するヴィルヘルム様。
「えー?可愛いじゃない」
「い、いや、う、うむ」
未だに思うのだが、妻のこの可愛いという点が偶に理解出来ない時があるヴィルヘルム。
可愛いとは程遠い自分にさえ「可愛い、よしよし」と言ってハグをしてくる時がある、俺は16歳の妻に子供扱いされているのか?
33だぞ・・・
「ヴィーさっきのは何?」
これは怒っているな、付き合いは10年を超えた2人、新婚だが付き合いだけで言えばとっくに心の知れた仲である。
「さっきの、とは」
「ウィルがヴィーに似ないで欲しいと言った事」
「あれは、そのままの意味だ、俺に容姿が似ると苦労するから、」
「良いじゃない、貴方の子供よ?」
「君は知らないから言えるんだ、苦労させたくない」
リリアンはムッとした様子で
「知らないけど、ウィルが同じ事を体験するかも思うかも分からないじゃない」
「だがな」
「何・・・?」
周囲の侍女は落ち着いた様子で淡々と自分の仕事をこなしていた。
とある侍女、彼女はリリアンが妊娠した時に増員された侍女であるが、いつも砂を吐くほどに仲睦まじい様子の2人が本格的に喧嘩を始めた事に焦り始める。
「せ、先輩!サラ先輩、マズくないですか!」
アワアワと取り乱しながら、リリアン付きの先輩侍女であるサラに言うと
「大丈夫、何も心配ないわ、関わらない方が良いわよ」
平然と言い放ち、関わるなと言う先輩に疑問を持つ
「え、でも!あの奥様と旦那様が喧嘩をっ」
止めるべきではと思いながらも、あの王弟公爵とそれに1歩も引かない妻の夫婦喧嘩である、余り首を突っ込みたくもない気持ちもある、つまり心配ながらも静観する事にした。
「ウィルにだって、きっといい子が居るわ!」
「そんな保証など、何処にもない!俺には似ない方が良いに決まってる」
その言葉に更に怒り出す奥様
「保証なんて無いけど、ヴィルヘルム様には私が居るじゃない!」
・・・おや?
「確かに俺にはリリーが居る、だがなウィルにもそうなるとは・・・」
んー?
「またそんな事言って!ヴィー!貴方10年、いえ11年前の自分に言えるの!?お前には良い人なんて来る筈が無いなんて、私は5歳の時から貴方が好きなのに!」
・・・えっ、5歳って
「リリー、俺だってすぐに君に惹かれたさ」
空気が・・・
「ヴィー・・・」
「リリー・・・」
待って、今の今まで喧嘩していたのに
「ヴィー、子供の事で熱くなって貴方の事を蔑ろにしてしまったわ、ごめんなさい」
「いや俺も自分の経験を押し付け過ぎた、ウィルは俺ではないのに」
「ヴィー」
「リリー、すまない」
「ううん、私こそごめんなさい」
「いや、良いんだ、ウィルにも半身たる人がきっと居るな、俺にとってのリリーのような存在が」
「うん」
「って、」
「もう良いわ、胸焼けしそう」
「「ごちそうさまでした」」
「えー」
「えー、じゃないわよ、貴方達夫婦、新婚って言っても距離近過ぎと言うか、その・・・」
「付き合いたての2人」「新しい恋人」
「そう!それ、何なの、10年の付き合いでしょう?もう少し落ち着いていても良いのではなくて?」
「でもこれからもっと家族増えるし、今の内に・・・」
と、出産したばかりのリリアンが信じられない発言を言い
驚くライラ
「貴女、もう次を考えてるの!?」
はあー?と呆れ返る。
「今すぐじゃないけど前から言ってるじゃない、家族は沢山欲しいわ」
「私達がお母様から聞いている話は」「もう出産は勘弁して欲しい」
「「無理って」」
「普通そうよね!私だって経験した訳では無いけど、リリアン貴女だって3つ子なんて産んで大変さは知っているのに?」
「それは、もう、大変だったけど、流石に連続で3つ・・・」
「待って!」
「「それは言ってはダメよリリ」」
「そ、そうね・・・、」
危うくフラグをまた立てる所だったわね。
「ま、でも、あの可愛さを見たら次もって気持ちになるのかしらね」
「そう!そうなのよ!可愛くて可愛くて、授乳している時も一生懸命手を、こうフワフワさせながらね、いっぱい飲んでくれてね、吸う力が強いのよ!私幸せで溺れて死んじゃうかも知れないわ!」
「そ、そう・・・」
あまりの勢いに1歩引くライラ
「公爵様も」「デレデレ?」
「ええ!目尻がぐっと下がって、特に自分と同じ銀髪のミカを抱いている時なんて、ふにゃっと笑って可愛いのよヴィルヘルム様!」
「可愛いの!?」
赤ちゃんじゃなくて
「「公爵様が?」」
「ええ!」
満面の笑みでニコニコと答えるリリアンに困惑する3人
「ねえ、ちょっとララさんルルさん、どうなの!?」
「リリの事だから」
「3割、ううん、5割増し?」
「いえ、でも流石の公爵様も娘の前では、まさかも」
「「あるかも?」」
「なあに?何の話?」
「い、いえ、その、公爵様が赤ちゃん抱いているの?」
「ええ、暇を見つけては赤ちゃん抱いているわよ、子供部屋で仕事しようとする位、隙を見ては来るの」
「そ、そう・・・」
「見てみる?今の時間なら多分子供部屋に居るわよ、丁度授乳の時間だし」
「良いの?」
「ええ、行きましょう」
子供部屋に入ると・・・
「ミカ、そろそろお母さんが来るぞ、よしよし・・・」
デレデレの顔をした公爵様が赤ちゃんをあやしていた。
「「「・・・」」」
絶句する、ララ、ルル、ライラ。
確かに、確かに目尻を下げて、ふにゃっと笑っている、が
「きゃっ、きゃっ!」
抱かれている赤ちゃんもとてもご機嫌だ、が
これは触れてはならない、そう思う3人。
「ヴィー、やっぱり来ていたのね」
「む?」
リリアンが声を掛けると、こちらに気付き顔を引き締める公爵様
「ああ、ララエル嬢ルルエル嬢ライラ嬢、よく来てくれた、ゆっくりしていってくれ」
真面目な顔で言うヴィルヘルムが、さっきの赤ちゃんに向けた顔との落差が逆に可笑しくて
「は、はい、、」
「「お邪魔しております」」
必至に笑いを堪える。
ダメよ、笑ったら、これは虎の子育て、子以外には牙を剥くわ!
ぷるぷるしている、そんなライラに先程のヴィルヘルムの顔が過ぎる
「ん、んふっ」
噴き出しそうになる彼女のお尻を左右から抓るララ、ルル。
「っ!」
「?」
ヴィルヘルムとリリアンは不思議そうな顔をしたが
「きゃー、あー」
すぐに赤子をあやすのに忙しくなる
ララエル、ルルエル、ライラは世の中には触れてはいけない、見てはならないものがある事を知ったのであった。
「勘弁してよもう、リリアン!」




