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閑話 ヴィルヘルムの長い半日。

リリーが臨月に入った、隣に居ても落ち着かん!

俺はどうすればいい!

リリーに色々声を掛けていたら

「大丈夫何もないわ、さ、寝ましょう」

と落ち着いていた、やれる事は他に無いのか!?

産婆、侍医、必要な物も人も隣の部屋にまとめてある、他には?

考え込んでいたら隣のリリーから静かに寝息が聞こえて来たので、俺も考えていても仕方ないかと思い直し、彼女を抱き締めて眠る。



「・・・ィー!ヴィー!」

リリーが呼ぶ声にビクリと跳ね起きる

「どうした!?」

周りはまだ暗い、

「お腹が、」

その一言で全てを察する、来たっ!!

「ま、待っていろ、すぐ侍医と産婆をっ」

慌てて産婆の居る隣の部屋へ、その時周囲の物をなぎ倒した気がするが構ってられるか。


隣の部屋をノックするが出てこない、早く出て来い!と毒付くヴィルヘルム、ノックがトントンから殴るような音に変わり始めた頃、ガチャリと扉が開き

「はいはい、なんだーね」

「リリーが、取り敢えず来てくれ」

「はいはい、まあ落ち着きなされ」

いいからとっとと来い、とは内心、必至に抑える、頼れるのは彼女しか居ないのだから。


トコトコとゆっくり歩いて来て、リリーを診察する産婆

長く黙り込み、

「んんー、始まった、かね?」

そう言い放つ、俺は何をすればいい!

即座に慌てて割と正気を失うヴィルヘルム、出来る事はない。

あっという間にアリアに追い出され、次々と侍女達が出入りして準備が始まる

「旦那様」

執事のジェレミアに声を掛けられる

「ジェレミア、俺は何をすればいい」

「何も、」

「何も?」

愕然とする、リリーが大変なのに俺は何も出来ないのか・・・

「我々男に今出来る事は有りません、信じて待つだけです」

「待つだけ?」

「はい」

待つしか出来ない、そんな・・・

「どうしてもと言うなら、」

「なんだ、何でもするぞ」

落ち着いた声でジェレミアは続ける

「王家と奥様のご実家へ送る手紙を書き、早馬を出すだけです」

「それだけ、か」

「はい、それだけです」


廊下に出してある椅子にドカリと座り込み、はあーと深く溜め息を吐くヴィルヘルム。

「ジェレミア」

「はい」

「お前もこれを経験したのか」

「はい」

「凄いな」

「いえ、私も待っていただけですから」


「そうか」

「はい」

「女性とは凄いな」

「はい」


黄昏ているヴィルヘルムだが、早馬を出した後に気付く、母が大人しく離宮で待っている筈が無いと。

流石に時間が時間であるが、駆け付けるのは目に見えているので離れの準備に追われる事になる、侍女の大半はリリアンに掛り切りなのだから。


――――――――――――――――――――――――――



「ヴィル!リリアンちゃんは!」

やっぱり来た

「部屋に」

「そう、始まった時間は?」

「ちょうど日付が変わったくらいに」

「なら、まだまだね、お茶にでもしましょ」

「何?」

「なあにヴィル、出産は長いわよ、個人差もかなりあるけど半日から1日は見ておきなさい、早くても数時間よ」

「・・・」

「それに貴方寝巻きじゃない、着替えて来なさい」

「む」

「どうせそんな事だろうと思っていたわ、お茶と軽食の準備をして来て正解ね、サロンで待ってるから一度落ち着きなさい」


しかし、離れがたい気持ちも

「旦那様、何かありましたらお知らせします、出産は1時間やそこらでは終わりませんよ」

とジェレミアにも言われては従う他ない。



そこからは本当に長かった、いつ終わるのかと生殺しにされている心持ちで、いっそ代われたらと思う。


空は暗い、まだ終わらない


明け方、空が白んで来た、まだ終わらない


日が高くなり始めて、部屋からリリーの呻き声が漏れてくる

「っ」

ギリと手を握り締める、まだ終わらない




「おぎゃあー!」

産ぶ声が聞こえてくる、反射的に椅子から立ち上がるが

「まだよヴィル落ち着きなさい、リリアンちゃんは双子を身籠っている可能性が高いと言われているでしょ、それに産まれたからといってもすぐに部屋には入れないの、赤ちゃんを産湯に入れて、リリアンちゃんも少し落ち着いて初めて部屋に入れるのよ、いい?今この場は国王でさえ立ち入れない聖域なの、理解なさい」

無言で座り直すヴィルヘルム、ソワソワしっぱなしである。



おぎゃあぁっ!2人目!終わった!

またも反射的に立ち上がる

「ヴィル落ち着きなさいって、すぐには入れないわよ」


部屋から侍女が出て来て言う

「おめでとうございます、元気な御子、お世継ぎと姫様の双子で御座います、奥様も健康で、」

オギャーーッ!


「「「えええっ!?」」」

歓喜の声の途中、皆、驚愕の声に変わる

パタリと目の前の扉が閉められ、無言で侍女が部屋の中に入って行った。



3人目・・・?



廊下に居るヴィルヘルム、ラファエル、ジェレミア全員が呆然としている。

ガチャリと先程の侍女が戻って来た

「え、えーっと、お世継ぎと姫様お二人の三つ子で御座います、御子、奥様共に健康で何も問題は御座いません、もう少々お待ち下さいませ・・・」

パタン。


流石のラファエルも三つ子の誕生など予想出来る筈もない、引退した身と言っても元王妃、普段から美しい所作を誇る彼女でも、はしたなく口をあけっぱなしになるのも無理は無いだろう。

ヴィルヘルムは言うまでも無く放心している。


「ジェレミア・・・」

「はい・・・」

「凄いな、リリーは・・・」

「はい・・・」



三つ子。



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― 新着の感想 ―
[一言] 小柄で(胸は大きいけど)華奢な体格の15歳で初産が三つ子を現代医学科学設備もない中で自然分娩して母子共に健康無事は凄いなんてもんじゃない(笑) こんなことをやり遂げるとは、「凄い女性」の形容…
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