モブ、努力と才能。
ヴィルヘルム様と仲直りをしてからは穏やかな時を過ごしております。
いえ、あんな事が2度も3度も起きては堪りませんがね
ラフィー義母様とエリザ義姉様一緒のお茶会では
「で、リリアンちゃんヴィルを1発殴った?」
何を言ってるんですかラフィー義母様・・・
「殴ってませんよ、そもそも私が殴った所でヴィーは痛くも痒くもないですよ多分」
「あらリリアン違うわ、貴方に本気で殴られたという事実がヴィルには効くんじゃない」
「エリザ義姉様、殴りませんから・・・」
「ああ、そうね、あんな筋肉の塊なんて殴ったらリリアンちゃんの方が手を傷めてしまうもの、殴るなら何か道具を使わないとね?」
ですから、殴りませんて!
「そう言えばマイヤール夫人から教えを受けたのよね、なら何か扱えるのでしょ?」
「え、えーと、剣、は振れるだけですし、短剣・・・、護身術もちょっと過剰過ぎますし」
「護身術で過剰って、何を教わったのリリアンちゃん」
ロッテ先生直伝急所攻撃を伝えると
「ちょっとヴィルの急所をやるのは・・・」
義姉様聞いておいて引かないで下さい、殴ったりしませんよ!
「他には無いの?」
「他、ですか、うーん・・・」
何か、、、
「あ」
「え?」
「・・・鞭?」
「あらー、良いもの扱えるじゃないの、ねえエリザ」
「ええ、素晴らしい武器よねラファエル様」
なんで鞭という事を聞いた途端に目を輝かせているんですか御二人共・・・
「いえ、仮に鞭を振るうにしても皮膚破けたりしますし」
「やだわリリアン、何故人間に振るう前提なのよ、貴女も結構過激ね?」
ヴィルヘルム様を殴るって話ですよね!?
私悪くなくありません!?
「こう、鞭を振るってヴィルを使うリリアンちゃんって絵になるじゃない?」
「なりません!」
「まあいいわ、それよりリリアンちゃんが鞭を振るうの見てみたいわね!」
「あ、それなんですけどロッテ先生に人前では絶対に鞭を持つなと言われているのですよね」
「鞭を持つな?」
「はい、理由は教えてもらえませんでしたが・・・」
当時私は10歳過ぎでしたかね、剣は私の体格では扱えないから短剣の扱いを教えてもらい、何かの切っ掛けに鞭も教えてもらいました。
私の格好は、赤と黒に染色した首元まで覆う革のドレス、ロングブーツ、白の革の手袋、顔はオペラ座の怪人仮面です。
このオペラ座の仮面、額から鼻までの範囲と鼻から下、口元までも隠す分割の仮面です。
「リリアンさん、その格好は?」
怪しい、ですよね、怪人ですものね。
「鞭って失敗すると自分の顔に返ってきて怪我するのですよね?かと言って鎧を着れるほど体力も無いので、革のドレスと仮面を・・・」
防具をと言って、どうせなら可愛く出来ないかなと革の染色に手を出して・・・、仮面も厨二要素溢れる上下分割型のフルフェイスを、見掛けは兎も角しっかり防護の役割は果たしているんですよ、この仮面。
実際何回も失敗してドレスの端々と仮面にも傷が入ってますからね、そのお陰で身体には傷ひとつありません、えっへん!
「貴女のセンスは偶に分かりませんが、軽い装備で身体を保護出来るのは理にかなっています」
わーい、ロッテ先生に褒められ(?)ましたー。
鎧を着せた木人くんを相手に練習です
「えい」
ビチ、ベチ、先程ロッテ先生が見せてくれた様にパーンと綺麗な音出ません、うーん
「リリアンさん、良く見なさい、手首だけで構いません」
ロッテ先生がお手本を披露してくれます
スパーン、パーン、ターン!
おおー、鞭っぽい音です、よく見ると投げた後に手首を返して鞭をコントロールしています
「分かりましたか?」
「はい」
見様見真似で鞭を振るいます、バチン、べチン
「もっと思い切り振ってご覧なさい」
「えい」
バチーンと中々良い音が響きます
「わ」
チラリとロッテ先生を見るとニコリと笑っています、正解のようです!
その調子で振り回していると、ビターン、バチーンと音が響くようになって来ます
あ、なんか楽しくなってきますね、上手くなって行く瞬間というのは。
「えい、えい」
パチーン、ピターン
「えい」
シターンッ!
今のは良い感じでは!
「えい、えい」
シタァン、シタァンと鞭の心地良い音が響いてきます、これは楽しいですよ
「ふふっ」
どうせなら狙った所を打ってみましょうか
「えい、えい」
「あははっ」
どれくらい鞭を振り回していたでしょうか、横から鞭を絡め取られ
「えっ?」
「リリアンさん、もう良いでしょう」
と言われて気付く、汗びっしょりで息もあがっています
ふう、何かすっきりしましたね、ひとしきり打ち据えて満足したリリアンは清々しい顔で言う
「鞭って楽しいですね先生!」
ロッテ先生は呆れたように
「貴女は変な才能を発揮しますねリリアンさん、そんなに楽しかったですか?」
「はいっ!音とか綺麗に響くと気持ち良いです!」
と言うと、ロッテ先生は微妙な表情を浮かべながら
「そう、ですか、まあ貴女がそう思うなら定期的に振って好きになさい」
丁度いいストレス発散になるでしょう
「但し、人前では鞭を持たない事!振らない事!いいですね?」
いくら本人が楽しいと言っても、笑いながら鞭を振り回す令嬢など外聞が悪過ぎますからね、とロッテ先生が嘆息した事にリリアンは気付かなかった。
「?」
後には、顔部分の表面だけ削がれた木人が居た。




