モブ、ダンス。
さて、ララ、ルル、ライラとひとしきり話してからはダンスの時間です。
形式的なものではありますが、3回連続で踊って来ない事には何か言われるかもしれません。
ララ達もそれぞれ婚約者の元に戻り各々社交に勤しみます
「さて、我が婚約者殿、どうか私めと踊って頂けますか?」
気取って手を差し出すヴィルヘルム様
「はい、喜んで」
その手を取り、笑顔を返します
ダンスフロアでくるくると踊ります
うん、緊張も完全に無くなったのでいつもの練習通り踊れます、先程のファーストダンスを思い返すとアレも緊張でかなり固かった気がしますね。
今は慣れたパートナーが目の前に居る、それだけで十分です
「リリー、やっと本調子になったな、先程は相当力んでいたぞ」
「あ、やっぱりそうでしたか、今更ですがララ達とお話してやっと肩の力抜けました、迷惑をお掛けしましたか?」
「いいや、迷惑なんてないさ、それに年の功、大人の余裕を見せる良い機会だ」
確かにヴィルヘルム様は年齢もありますし、慣れているのでしょう、控え室に居る時から平静のままでしたね。
「ヴィーは本当に頼りになります、ありがとうございます」
「何、リリーは普段自立しているからな、こういう時位は思い切り身体を預けて寄りかかって構わない」
「ふふ、はい頼りにしてます」
と、ニコニコ話しながら1曲、2曲、3曲とダンスをします。
私達はその時気付いて居ませんでしたが、後日ララ達の話によると
「笑ってる・・・、あの公爵様が」
「食わない、だと、生贄じゃないのか・・・」
「王弟とモブ?令嬢の顔を見ろよ、アレ政略結婚じゃないのか?」
「いや、以前に公爵様に噂の良い人の話あっただろ」
「あれ、本当だったのかよ、人違いじゃ」
「ばか、令嬢は兎も角、あの人相の公爵様を間違う訳ないだろ」
「噂の令嬢と特徴も同じだ、赤毛に公爵様と並ぶとかなり華奢」
「じゃあ、あの令嬢が公爵様に抱き着いたり、人前で甘い空気撒き散らした奴か・・・」
とか、なんとか言われていたそうな。
後々悶絶する事は知らずに2人の世界で踊るヴィルヘルムとリリアンであった。
ダンスも一段落して休憩しているとお父様達が来ました
「アン、来月結婚式なんて・・・」
泣きそうなお父様
「アンが幸せならいいじゃない」
ニコニコ笑顔のお母様
「アン、陛下にしてやられたね・・・」
同情的なお兄様、三者三様の様子です。
「兄上が御迷惑をお掛けして申し訳ない、後で注意しておきます」
ヴィルヘルム様が目線を少し下げながら言う
「ととと、とんでもない、きっと我々には思い付かない、国王陛下には深い考えが・・・」
「お父様、ないわ」
「・・・すまない」
と、即座に私とヴィルヘルム様は否定します
「あらあら、その様子だと本人達にも内緒だったの、大変ねアン」
お母様本当に動じませんね?
「アン、何回も聞くけど、今回も本当に大丈夫だね?」
「お兄様、心配掛けてごめんなさい、でも陛下は元々あの様な感じで、結婚は嬉しいので大丈夫です」
お兄様はブレずに優しくて安心します
「なら、いいんだ、ヴィルヘルム様リリアンの事もですが国王陛下の事も御願いしますね」
ん、何か一瞬冷たい空気が・・・
「あ、ああ、リリーの事は勿論、兄上の事は肝に銘じておこう・・・」
ヴィルヘルム様の表情が強ばって居るような、何?
「アン、頼りになる婚約者で良かったね」
「はい」
勿論ですとも!
お父様達ともお話して別れた後は、どうやら私を足掛かりにすれば大丈夫と判断した方々が次々に来ました。
「リリー、君に人が来るが必要の無い者は全て俺が相手をする、安心しろ」
「はい、頼りにしてますよヴィー」
「もし、リリアン・モブラック子爵令嬢・・・」
「はい?」
「私の婚約者に何か用かな?」
と問答無用で割り込みヴィルヘルム様
「ひ、いえ、すいません」
散っていく方々、繰り返される蜘蛛の子散らし
これ、繰り返していると面白くなってきますね?
何回か同じ事をしていると
「リリアンさん、少し良いかしら」
同じクラスの皆様が来ました
「・・・」
ヴィルヘルム様も問題無いと判断したのか、それともクラス内での私の立場に配慮したのか、動きませんので私が普通にお話しします。
「はい、何でしょうか」
「ありがとうリリアンさん、驚いたわ陛下に続いて、公爵様と一緒に入場してくるのだもの」
チラっとヴィルヘルム様を見ますが少し怯えてますか?
そんな猛獣を見るような目で見なくとも・・・
「ええ、色々とありまして話せなかったの、驚かせてごめんなさい」
「いえ、婚約者の立場を考慮すると仕方ないわ、それよりこれから大変ね、私達もだけど同じクラスの方達の親が目の色を変えて「繋ぎを取っておけ」と言っているもの、少なくとも私達は親の言うことを聞くつもりは無いから、これまで通りクラスメイトとしてお付き合い出来れば良いわ」
わあ、早速ですね、しかも他の方達は公爵様への繋ぎとして私に接触してくるけど、自分達は違うと言うニュアンスを含みつつ来ました。
まあでも、これまで通りクラスメイトとしてお付き合いすると言う事には賛成です、少なくとも露骨に態度を変える事は無く、今後も宜しくねと言う事です。
恐らくは私と同じクラスで知り合いと言うだけで十分と判断している組です、これくらいの距離感の知人も必要ですし、3年一緒に過ごして来たクラスメイトですからそれなりに思う所はありますからね。
「ええ、これまで通り変わらずクラスメイトとしてお付き合いして下さるのは私としても嬉しいです、流石に露骨に態度を変える方々は考えてしまいますからね」
私を使ってヴィルヘルム様に近付くなら分かってますね?と言外に意味を込めます。
「ありがとう、そうよね愛しい方に近付く為に自分を利用されたら女として許せないものね」
ふあっ!?
えっ、
「ふふ、やっぱり政略結婚じゃないのね?
先程のダンスの様子を見ていくら何でも仲が良すぎると思っていたのよ、政略の相手を見る目じゃないんだもの」
即バレ!?
「リリー・・・」
うっ、ヴィルヘルム様に詰めが甘いと言われた様な気がします。
突如グッと腰に手を回し抱き寄せられ、手の甲にキスをされます
「見ての通り愛しい婚約者だ、彼女だけでなく私にとってもな」
私がヴィルヘルム様に惚れているだけでなく、ヴィルヘルム様も私を想っていると言い放ちます、ちょっと火の玉ストレート過ぎませんかねヴィルヘルム様。
クラスメイトも言葉を失っているではありませんか、
「わ、分かりました、とても仲睦まじいようですね、では、お時間取って頂きありがとうございました」
そそくさと去っていきます
「ヴィー?」
わざとですね
「何、これでリリーを繋ぎに使おうとする者も減るさ」
まあ、流石に両想いだと言い放ちイチャついている公爵様の所に、ヌケヌケと私を使って利用してやろうと近付き、看破された日にはどうなるか、簡単な足し引きが出来ない人は居ないでしょうがね・・・
バカップルを晒しているだけの気がするのは気の所為ではないですねこれは。
ふう、とため息を吐くリリアンであった。




