モブ、王宮舞踏会デビュー。
王宮舞踏会当日です。
私、緊張してます。
何が何なのか、足下がフワフワしていて訳が分かりません。
そう言えば気付いたのだけど、私晴れの舞台はこれが初めてね!
これまで陰でコソコソやって来たから表舞台の経験0よ、初舞台が王宮舞踏会でデビューで婚約発表って無理がない?
出来る筈もないのですが、漠然と逃げ出したい気分です・・・
ヴィルヘルム様と婚約は嬉しいのですが、こう、なんと言いますか、怖い?
1人でそわそわぷるぷるしていると
「リリー」
「はいっ、私は大丈夫です!」
はっ!
「落ち着けリリー、ほらこっちにおいで」
くつくつ苦笑いを浮かべ手招きするヴィルヘルム様。
「?、何でしょう」
近づくと、ふわりと抱き締められました
「あ、ヴィルヘルム様、ドレスがっ、いえ、お化粧がタキシードに、」
更に混乱を極め、あわあわしだす私に優しく言葉を掛けて来る
「リリー落ち着け、まだ時間はある、直しも十分に効く、それよりこのままのリリーが表に出る方が問題だ」
と言いながら、逞しい胸に頭が押し付けられる
「俺の心臓の音を聴け」
と言われ、黙って従う
ドクン ドクン・・・
一定のリズムで刻まれる鼓動に聴き入る
ヴィルヘルム様の体温が伝わって来て、謎の焦燥感がゆっくりと溶け出してどこかへと消えていきます
どれくらい抱き締められていたでしょうか
「リリー、寝るなよ?」
と言われて、ふと顔を上げるとにやりと笑ったヴィルヘルム様と視線が合います
「寝たりしません」
わざと拗ねたようにして返すと
「どうかな?」
と、見慣れたいじわるな顔で笑っているヴィルヘルム様、何か可笑しくなってしまってお互いに笑い合ってしまいます。
「お二人さん、イチャついてないで準備はどうだ?」
国王のルーク義兄様と、王妃のエリザ義姉様が部屋に入って来ました。
い、イチャついてなど・・・、いましたね、はい。
「あら、リリアン少し髪と化粧が乱れてるわ、ヴィルには化粧が移っているわね、何していたのよ」
エリザ義姉様が侍女に視線をチラと送ると、心得たとばかりにササッと整えて頂きました。
「あ、ありがとうございます」
「リリーが緊張で天地逆さまになったかの様な状態でな、落ち着けていたのさ」
「あらあら、リリアンたら、そんなにカチコチになっていたの?」
「いえ、あの、ただ思い返したら表舞台に出るのが初めてな事に気付きまして・・・」
こう、身体が勝手にプルプルと・・・
「なに、デビュタントの王宮舞踏会で婚約発表、しかも相手は王弟、更には表舞台に初めて出る、緊張もするさ」
ルーク義兄様がフォローしてくれますが、目が笑ってます、むう。
「家族とは話したのか?」
「あ、はい、先程、話、、たような気が」
しますが、全く覚えてませんね・・・
「上の空だったからな、後で顔を見せて安心させてやるといい」
「はい・・・」
本当に浮き足立っていましたね、危ない危ない。
「なに、国王の足を踏んでしまっても構わんのだぞ?」
にやにやと、当の国王陛下がそんな事を宣った
「絶対に踏みません、あとダンスに変なアドリブとか入れないで下さいね!」
「おお、そんな手があったか、なるほどな」
ひぃ、墓穴を掘りましたか私、1人恐々としていると
「ルーク、流石にイタズラ好きの貴方でも、可愛い義妹の晴れの舞台で恥をかかせたら許しませんよ」
エリザ義姉様ありがとうございます!
多分陛下を止められるのは義母様と義父様を除けば義姉様しか居ません。
「解っている冗談だ、かわいい弟の待望の嫁だからな」
本当ですかね、疑いの眼差しが抑えられませんよ?
ジトーと見ていると
「本当だ、何かするにしても場は弁えるさ」
何かするにしてもとか言いましたよ、この人!
今後、気の抜けない義兄ですわね・・・
「兄上、義姉上、そろそろ時間では」
ヴィルヘルム様がそう言うと、それまで緩い空気だった御二人の様子がスっと引き締まります。
公の場での姿はかなり昔にしか見ていないので、こうした様子を見ると国王陛下と王妃様然とした顔付きにこちらも引き締められます。
「さて、行こうか」
「ええ」
言葉少なに歩き出す陛下達
「リリー、行けるか?」
「はい、緊張はしていますが今度は大丈夫です」
にこりと笑顔を向けると、ヴィルヘルム様もフッと笑顔向けてエスコートして下さります、さあ行きましょう!
グッと心の中で握り拳を作ります。
「ああ、リリアン言い忘れていたが、ダンスは俺達と一緒に踊れ」
ほぁっ!?国王陛下達が先ずダンスしてから私達の紹介、ダンスして、パートナー交換してダンスでは無かったの?
「箔は付けるだけ付けておけ、困るものでは無かろう?」
あーあー、国王陛下のファーストダンスと一緒にデビュタントのファーストダンスをして、尚且つパートナーを交換してダンスですか・・・
箔付きすぎてピッカピカしてませんかね私達。
「リリー諦めろ、ルー兄は言い出したら聞かん」
「ヴィーは現国王俺の弟だぞ、このくらいの扱いで丁度いいくらいだ」
ワルイ顔してますね国王陛下?
貴方本当に国王なんてやっているの、マフィアをやっていると言われた方がしっくり来ますわ。
「もう、この際何でもいいです、宜しく御願い致しますルーク義兄様?」
腹を括るなんて通り過ぎて五体投地で、ええい好きにしろ!の精神です。
「ふふ、いい諦めっぷりねリリアン、貴女の投げやり的な覚悟の決め方好きよ?」
心底楽しそうに言わないで下さいエリザ義姉様!
「取り敢えず、俺達の横にそのまま付いてこい、国王として挨拶してから紹介する、あとは流れで」
テキトー!流れで!この人本当に国王陛下なの!?
「リリー」
諦めろですね、分かってます!




