モブ、ダンスの地獄。
ダンスの練習会の話をヴィルヘルム様にしたところ
「他の者とダンスと言えば、リリー、兄上と踊ってもらうぞ」
「はいっ!?」
義兄になるとは言え国王陛下と、何故!
いつもの様に私の表情を読んだヴィルヘルム様は、ふっと笑いながら
「簡単に言えば箔が付くからだな、噂や様子で概ね関係は良好と思われるだろうが、国王陛下と踊れる資格を持つ者など多くは無いからな」
「でも、そこまで国王陛下に認められたと見られると、私を足掛かりにしてヴィーかルーク義兄様、エリザ義姉様にという輩も居るのでは・・・」
「その懸念も勿論あるが、それよりも侮られる方が問題になるとの判断だな、俺もその考えには賛成した」
あー、二者択一ですね、陛下とは遠い関係となると私は小娘公爵夫人と侮られる可能性が高い、逆に陛下とは親しい関係となれば侮られる事は無いけれどそこに取り入りたい輩が来る、と。
何ですかねコレ、虎の威を借る狐状態?
いえ、どちらかと言えば狐の後ろに虎がただ佇んで居るだけなのですが、その睨み強烈過ぎませんかね?
「考えても仕方ないですわね、その時々で頑張ります・・・」
腹を括ると言うより、諦めの境地が近付いて来てますわ。
「リリーのその割り切り方は本当に頼もしいよ、しかも王家に頼る素振りもないしな」
「前から言っていますけど、本当にそういうのは要らないのですよ、貴族の義務を放棄するつもりではありませんが、極端な事を言えばヴィーが平民でも何も変わりませんから」
「リリー」
ヴィルヘルム様は優しい目で私を見てきます、なんかむず痒いですね・・・
「王宮舞踏会の最初は兄上達夫婦が踊る、これはいつも通り、次に俺達、その後に兄上とリリー、義姉上と俺で踊る」
お、おおぅ、覚悟してましたが実際の流れを聞くと凄いですね
「あのヴィー、私、王家に嫁ぐ訳ではないのにそこまで」
「して良いのだ、俺が頼み、兄上と義姉上が認めた」
あ、変更不可ですか、そうですか。
「ついでに母上と父上も認めた、なんならもっと派手にしてもいいわよ?と母上は言っていたぞ」
派手って何!ラファエル義母様、これで十分です!
「あと、これから定期的に兄上とダンスの練習だ、俺は嫌だったのだが」
チッと舌打ちせんばかりの苦い顔でヴィルヘルム様は言った
「は、ルーク義兄様とダンスの、練習?」
「ああ、兄上が「ぶっつけ本番で下手を踏んだら箔付けも何も無かろう?」とな、職務上あまり時間は取れないが何回か踊って呼吸を知る、と言ったところだな」
うわっ、私本当にバカだ、ヴィルヘルム様と結婚だけ考えていて、王家とは距離を置くつもりだったけど、無理に決まってるじゃない!この兄弟仲良すぎるもの。
義兄夫婦と義理父母夫婦とのお付き合いは避けられる訳がないわ、問題はそれが「現国王陛下夫婦」と「元国王陛下夫婦」ってだけよ。
うん、もう本当に今更だけどガッツリ王家に食い込んでるわね私、ごめんなさいお父様お母様お兄様、ご迷惑をお掛けします・・・
「ど、努力致します・・・」
多分、ルーク義兄様からヴィルヘルム様による嫌がらせと私と話をする大義名分みたいなものね
あら?ヴィルヘルム様とエリザ義姉様も踊るのなら
「ヴィー?エリザ義姉様と・・・」
言いかけた所で、察したヴィルヘルム様は
「ああ、練習も一緒に踊れと言われてる」
あ、これエリザ義姉様も一枚噛んでますね、最近思うのですが
「ヴィー、貴方苦労しているのね」
同情を込めて言うと
「ああ、あの二人は、いや最初は一人だったのに、途中から二人に・・・」
弄る人間が増えたと!
「だが、これからは半分に分散するからな、頼りにしているリリー」
ですよねー、知ってました!エリザ義姉様に何回か弄られてますからね。
でも、私が居てもヴィルヘルム様に集中する気がします
私の反応を利用してヴィルヘルム様を弄ってる意図さえ見え隠れしてますからね、挫けないでヴィルヘルム様!
「しかし、国王陛下とダンスって大丈夫ですかね私」
陛下のダンスって漠然としたイメージですが、国の王のダンスです、国1番とまでは行かなくても相当な腕前なのでは・・・
「リリーくらい踊れるなら十分だと思うが?
一緒に踊ってても俺は違和感無く踊れるし、リリーもついていけるだろう?」
「それはヴィーのリードが上手いからでは、私はそれなりにしか・・・」
幸い、今世は努力した分だけ伸びて行く様なので私の頑張り次第な気はします。
「リリー、マイヤール夫人が太鼓判を押して君を認めたのだ、君の技能や知識は決してそれなり程度ではない」
「そう、なんですかね・・・」
「ああ、リリーの周囲は王弟を含め、爵位が高く洗練された者が多いからなのだと思うが、君は俺の妻にと兄上に認められたのだから自信を持って良い、兄上が「相応しくない者」を許すと思うか?君は自信を持って良い」
あ、それはそうですね、ルーク義兄様は義兄の顔の時は優しいけど国王陛下の顔の時は何か乗り移ってない?とさえ思える位には切り替えが出来る方だし。
義兄の顔を見せて居るという事は、そういう事ね・・・
「うん、ありがとうヴィー、私頑張るわ」
と言うと、ヴィルヘルム様は優しくこめかみにキスをして
「程々で良い、その年齢で色々と十二分を超えているからな、子供扱いする訳では無いがリリーは30歳の俺に並ぼうとして無理をしているように見える時がある」
ゆっくりと成長して行けば良いと
「分かったわ、だからギュッとして、ヴィーが居るから頑張れるのよ・・・」
「ああ」
甘える時には甘えましょう!
私はまだ今年14歳、20歳位には追い付けるくらいのペースで生きていきますか。
ララとルル、ライラにも言われたけど少し緩く行きますかね・・・




