いつかあなたに伝える(わる)想い ―8
結局その後は、サレナが日課の早朝ランニングがてら見つけていた学院から寮までの最短ルートである"秘密の抜け道"を通って、二人でどうにか寮まで見つからずに密かに戻ることが出来た。
お転婆なんて言葉には収まりきらないようなサレナの使う道だけあって、様々な段差を上ったり降りたり飛び降りたり、果ては屋根の上を走り抜けたりという滅茶苦茶なそのルート。
カトレアさまはそこを走りながら、「あなた、本当にいつもこんなとこ走っているの?」と呆れかえっているような様子だった。
しかし流石、サレナの認めて憧れる完璧超人ぶりを発揮して、しっかりと先導するサレナに走ってついて来られていた。
そうして二人は、煌々と照らす月明かりの下を、楽しそうに笑い合いながら並んで走る。
サレナはそうしながら、自分はきっと、このことを一生、いつまでも鮮明に覚えているんだろうなと密かに心の中で考えていた。
二人で泣きじゃくって、そして二人で笑いながら、月明かりに照らされる夜の学院を走った。この不思議な、でも息が止まりそうなほど美しい思い出を。
カトレアさまの方はどうなんだろう。
……自分と同じように感じてくれていたら、いいなぁ。
そして、覚えていてくれたらいいなとサレナは思う。
この先二人の関係がどうなっていくのかはまだ全然わからないけれど、いつか笑ってこの思い出を語り合えるようなものになっていられることを、少女はひっそりと満月に向かって祈った。




