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聖剣はケツに刺す ~勇者だけど世界救ったら暇になった~  作者: ああああ/茂樹 修
第一章 勇者だけど世界救ったら暇になった
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もっと恥ずかしい話 ~きみと~

 自宅へと帰還した俺は、ベットに横たわっていた。全身筋肉痛で、何よりケツの穴が痛い。


「おかしいだろ。刃物ケツにさせって、刃物が命令すんの」


「はいはいそうね、おかしいわね」


 適当な椅子に腰をかけ、ローリエが読書しながら相槌を打つ。


「大変だったんだぞ、あれから」


 目が覚めたときには、周りに誰もいなかった。薄情な連中だ、きっと勝手に帰ったんだろう。

 仕方が無いから俺は気力と魔力を振り絞って、自分の部屋に戻ってきた。その後の記憶は無い。


「見ればわかるわ、その怪我見たら」


 きっと処置はローリエがしてくれたのだろう。包帯の巻き方がかなり雑だから、それはなんとなくわかる。

 ということは、ケツに刺さっていた聖剣を引き抜いたのも彼女だろう。

 

 畜生、恥ずかしいぜ。

 

「……パレードは、どうなるんだ?」


 どっちみち、俺はこの怪我で出席できないだろう。

 仲間を呼びに行った努力も全てパー。

 

 まあ、いいか。久しぶりにあいつらに会えたから。


「あんたがぶっ壊した、イノウエの像覚えてる?」

「あったな、あの気色悪いやつ」

「あれを人数分拵えて、馬車に乗せて町中を練り歩くことになったわ。これなら来年以降もすぐにできるからって」


 どうやら、人形文化は着々とこの世界を侵食しているらしい。


「じゃあ、寝ていていいか」

「そういう事」


 それから、少し沈黙。言おう言おうと思っていた事を思い出して、


 それを俺が破って見せた。


「なあ、ローリエ」


 彼女の、顔を見る。子供のころからずっと見てるけど、本当に飽きないよ。


「あの時お前が、言ってくれた事だけど」


 大魔王の城に行く前に、彼女が言ってくれたこと。


 ――この戦いが終わったら、一緒に暮らさない?


 その返事を、俺はまだしていなかった。


「魔王も復活しちゃったし、これから先、どこに行くのかわからないけど」


 ずっとここにいようなんて、保障出来るはずがない。

 あいつらは多分生きてるし、似たような事も起きるだろう。

 その度俺は丸み込まれ、きっと世界を救うのだろう。


「だけど、どこに行くにしても」


 どんな時も、いつだって。


「お前が一緒なら、俺は物凄くうれしい」


 素直な気持ちを、彼女に告げた。


「バーカ」


 小さな声で、彼女がそんな事を言う。

 もう何百回といわれ続けた、たった一つの俺の称号。

 彼女がくれた、たいせつなもの。


「好きなだけ寝てていいわよ。あとで起こしに来てあげるから」


 本を閉じ、彼女は部屋を後にする。笑っていたのが、すこしだけ見えた。




 上を向いて、天井のシミでも数える。一、二、三。だめだこれつまんねぇや。


「まいったな」


 本当、怪我とか病気のときってのはどうしていつもこうなんだろう。

 本も読めず、世界は平和。

 窓の外を眺めたって、ちっとも楽しいことは無い。


「……暇だ」




 なあ、俺、勇者だけど。




 世界救ったら、暇になったわ。

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