もっと恥ずかしい話 ~きみと~
自宅へと帰還した俺は、ベットに横たわっていた。全身筋肉痛で、何よりケツの穴が痛い。
「おかしいだろ。刃物ケツにさせって、刃物が命令すんの」
「はいはいそうね、おかしいわね」
適当な椅子に腰をかけ、ローリエが読書しながら相槌を打つ。
「大変だったんだぞ、あれから」
目が覚めたときには、周りに誰もいなかった。薄情な連中だ、きっと勝手に帰ったんだろう。
仕方が無いから俺は気力と魔力を振り絞って、自分の部屋に戻ってきた。その後の記憶は無い。
「見ればわかるわ、その怪我見たら」
きっと処置はローリエがしてくれたのだろう。包帯の巻き方がかなり雑だから、それはなんとなくわかる。
ということは、ケツに刺さっていた聖剣を引き抜いたのも彼女だろう。
畜生、恥ずかしいぜ。
「……パレードは、どうなるんだ?」
どっちみち、俺はこの怪我で出席できないだろう。
仲間を呼びに行った努力も全てパー。
まあ、いいか。久しぶりにあいつらに会えたから。
「あんたがぶっ壊した、イノウエの像覚えてる?」
「あったな、あの気色悪いやつ」
「あれを人数分拵えて、馬車に乗せて町中を練り歩くことになったわ。これなら来年以降もすぐにできるからって」
どうやら、人形文化は着々とこの世界を侵食しているらしい。
「じゃあ、寝ていていいか」
「そういう事」
それから、少し沈黙。言おう言おうと思っていた事を思い出して、
それを俺が破って見せた。
「なあ、ローリエ」
彼女の、顔を見る。子供のころからずっと見てるけど、本当に飽きないよ。
「あの時お前が、言ってくれた事だけど」
大魔王の城に行く前に、彼女が言ってくれたこと。
――この戦いが終わったら、一緒に暮らさない?
その返事を、俺はまだしていなかった。
「魔王も復活しちゃったし、これから先、どこに行くのかわからないけど」
ずっとここにいようなんて、保障出来るはずがない。
あいつらは多分生きてるし、似たような事も起きるだろう。
その度俺は丸み込まれ、きっと世界を救うのだろう。
「だけど、どこに行くにしても」
どんな時も、いつだって。
「お前が一緒なら、俺は物凄くうれしい」
素直な気持ちを、彼女に告げた。
「バーカ」
小さな声で、彼女がそんな事を言う。
もう何百回といわれ続けた、たった一つの俺の称号。
彼女がくれた、たいせつなもの。
「好きなだけ寝てていいわよ。あとで起こしに来てあげるから」
本を閉じ、彼女は部屋を後にする。笑っていたのが、すこしだけ見えた。
上を向いて、天井のシミでも数える。一、二、三。だめだこれつまんねぇや。
「まいったな」
本当、怪我とか病気のときってのはどうしていつもこうなんだろう。
本も読めず、世界は平和。
窓の外を眺めたって、ちっとも楽しいことは無い。
「……暇だ」
なあ、俺、勇者だけど。
世界救ったら、暇になったわ。




