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第286話 試写会1

「この作品は、日本映画史に残る最高傑作です。ご覧いただければ、すぐにその理由が分かるはずです」


風間の舞台挨拶はこれだけだった。彼はあっさりと舞台を後にした。

会場は彼の発言に一瞬ぽかんとした後、徐々にざわめき始めた。


(えらく大きく出たな……)

都内の映画館では映画『ユニコーン』の試写会が行われていた。

数々のプロモーション活動が功を奏し、会場内は期待に満ちた熱気に包まれていた。


「きゃああああっ!!」

主演の神代が助演の美園を伴って現れると、会場内から黄色い声が沸き起こった。


(か……かかか……カッコイイ……)

女性からの歓声が止まないのは、神代の姿が中性的で、まるで橘が男装しているかのようなイケメンだったためだ。

原作で主人公の的場は男性だったが、神代はその姿を実体化させたかのように見事に再現していた。


神代の姿に度肝を抜かれたのか、同行していた石動は口を半開きにしていた。


「すごい人気ですね」

「柊さんと石動さんが、解決してくれたおかげですよ」


翔太の隣に座っている橘は、客席の反応を予想していたようで、まったく動じる様子がなかった。

ここでいう「解決」とは、神代のスキャンダルのことだろう。

今や神代に対する誹謗中傷は鳴りを潜めている。


(公開まで間に合ってよかった……)

翔太は姫路からこの映画を一位にすることを約束させられていた。

神代のスキャンダルが長引いていれば、観客動員数に影響が出ていたことだろう。


「お、始まるぞ」

後ろに座っている石動は、まるで誕生日プレゼントの包装紙を開く前の子供のように目を輝かせて言った。


***


「うわああああぁぁ!」「パチパチパチパチ」

上映が終わり、館内には歓声が沸き起こり、割れんばかりの拍手が鳴り止まなかった。

エンディングの神代と美園のダンスは、客席の気分をさらに高揚させていたようだ。


「こりゃもらったな。にしても、神代さんかっこよすぎだろ……」


石動は感動したのか、声が震えている。

石動だけでなく、会場の誰もが神代の演技に心を奪われたようだった。それは翔太も例外ではなかった。

女性客は神代に虜にされたのか、うっとりとしており、目がハートマークになっていた。

中には泣いている子もいる。


(橘さんの狙い通りか……)

神代のファンの多くは男性だ。

この映画で神代は間違いなく多くの女性ファンを取り込むことになるだろう。


「柊さんに相談して本当によかったです」

橘は翔太の手を握り、かみしめるように言った。

その行為が意図的なものか、無意識によるものか、翔太にはわからなかった。


「長かったような、短かったような……色々ありましたね」

翔太は内心ドキドキしつつ、石動に見られていないことに安堵した。


「そうですね……」

橘はこの後の慌ただしい展開を予想しているのか、名残惜しそうに翔太の手を離した。

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