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第279話 ホワイトナイト

「すごい報道陣の数だね……」

社長室で記者会見の様子をテレビで見ていた神代は目を丸くして驚いていた。


─────

石動さんはホワイトナイトという認識でよろしいでしょうか?


さくら放送さんから見れば、そういった見方もあるかもしれません

─────


記者会見の会場では「カシャカシャカシャカシャカシャカシャ」と、絶え間ないシャッター音とともに、カメラのフラッシュが石動の顔を照らしていた。

記者会見では石動、船井、刈谷の三名が席上に座っている。


メトロ放送の社長室で刈谷との交渉を無事に終えた後、刈谷は石動と船井を呼び、三社での話し合いが行われた。

船井が持つさくら放送株の半数以上はメトロ放送に譲渡されることになった。


「エッジスフィアの持株は全部売らなかったの?」

「最終的にはそうなると思うけど、一気に全部売ってしまうと、刈谷さんが株主から突き上げを受けるんだよ」

「さくら放送にそこまでの資金を投入するほど企業価値がないってことね」

「さすが、よくわかっていらっしゃる」


翔太は神代の理解の早さに感心した。

映画『ユニコーン』にはM&Aの場面があることから、神代はかなり勉強をしていた。


「それで、ホワイトナイトっていうのは?」

「敵対的買収から企業を守る友好的な第三者だよ」

「そのホワイトナイトが翔動――今記者会見に答えている石動さんってことね」


エッジスフィアとメトロ放送の対立構造は連日世間を賑わせていた。

翔太と石動が交渉したことで、船井が譲歩し、刈谷がそれを受け入れたことで両社の対立は収束することになった。

しかし、あれだけ世間を騒がせるほどの二社が急に和解するとなれば、その理由となる大義名分が必要となる。

そこで刈谷は、石動をホワイトナイトとして祭り上げることにした。


「船井さんと刈谷さんはあれだけバチバチにやり合っていたからね。

石動は矛を収めるためのスケープゴートとしてはちょうどいい存在なんだよ」

「ひどっ……あっ! 柊さんは石動さんを売ったんでしょ!?」

「ギクッ……石動には悪いと思っているよ」


東郷との因縁もあり、翔太は自分が目立つような事態は極力避けていた。

しかし、今回の件で翔動が世間に注目されるのは間違いないだろう。

翔太は石動を前面に立たせ、世間の注目を石動に集中させることにした。

この翔太の思惑はあっさりと神代に看破された。


「石動さんには近々お礼をしないといけませんね」

橘はそう言いつつ、翔太に視線を送り、翔太はわずかに頷くことで自分の意思を伝えた。


二人の間に交わされた通信内容は次のような内容だ。


『東郷の思惑を柊さんが潰したということがわかれば、別の方向に波及します』

『はい、それに俺が霧島プロダクションに所属していることも分かってしまうと、再び事務所同士の対立が起きてしまいますね』

『そうですね、石動さんには申し訳ないですが』


これを目ざとく見つけた神代が翔太と橘を指差して不満げに言った。

「あぁっ! また二人で内緒の会話している!」


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