第203話 慰労会
「俺、今回はほとんど仕事してないな……」
仙台のホテルの宴会場では、映画撮影の慰労会が行われていた。
出演者やスタッフらが盛り上がっている様子を横目に、翔太はちびちびと日本酒を飲んでいた。
「柊さん、おつかれさまです」
脚本を担当している雪代が翔太に近づいてきた。
彼女も翔太と同様に、撮影現場にほとんど関与していなかったため、映画関係者と打ち解けることが難しかったようだ。
「我々の仕事は終わりなんですかね」
映画『ユニコーン』は間もなくクランクアップを迎える。
それに伴い、脚本を書いた雪代と、それを監修した翔太は役務を終えることになると思っていた。
雪代の話によると、編集の段階で脚本の調整をする場合もあるようだ。
「この映画、すっごい話題になっていますね!」
CMなどの本格的なプロモーション活動はこれからだが、サイバーバトルやWeb Tech Expoなどのイベント活動により、映画の認知と期待は日に日に増していった。
「そうですね、プロモーションのタイミングとしては早く動きすぎたのかな……?」
翔太は映画に関しては素人だ。
姫路からの依頼があったとは言え、素人の翔太がプロモーション活動にまで関与したのは、少し無理があったのかと考え始めた。
「そうなんだ! できるだけ早く公開したい!」
「のわっ!」
プロデューサーの山本が現れた。
慰労会の参加者を順に回ってねぎらっているのだろう。
(プロデューサーも大変だな……)
「公開日を早めるってことですか?」
「そうだ、プロモーションの効果が薄まる前に公開したい。
柊くんがプロモーション活動に協力してくれたことは非常に感謝している」
翔太は蒼から、映画が公開するまでの工程をざっくりと聞いていた。
クランクアップの後は、ポストプロダクションの作業が入り、映画倫理委員会の審査をする工程などが入る。
そのため、映画公開までの時間はそれなりにかかるとのことだった。
「編集作業を効率化したい。そこで、柊くんの力を借りたいんだ」
「私に何かできることがあるんでしょうか?」
「今の映画はデジタルなデータを編集するのが主流なんだ。
データはかなり膨大になるので、これらを効率よく管理するために協力してほしい」
***
「へぇ、じゃあ柊さんは編集でも映画に関わることになったんだ?」
「本当に俺でもできそうなことがあればだけどね」
神代は酔っている影響なのか、それとも別の理由なのか、顔を赤らめていた。
普段の神代と違い、翔太を直視せずにチラチラと目線を向けていた。
翔太も同様に、神代の顔を直視できないでいた。
「二人とも、なんかぎこちないんじゃない?」
美園は何かを疑うような眼差しで見つめてきた。
「な、なななな……なんでもないよ?」
神代は平静を装っているつもりのようだが、明らかに動揺していた。
(この様子だけ見ると、とても演技派の女優には見えないんだよな……)
「まぁ、いいわ。ね、 明日は仙台を案内してくれない?」
「ほえ?」
「私は、皇さんを一日好きにできる権利があるの」 ※1
「あああっ! 私もその権利を行使する!」
かくして、明日の翔太の身柄は、目の前二人が預かることになった。
※1 153話 https://book1.adouzi.eu.org/n8845ko/153/




