第201話 2台目のケータイ
「ボウズじゃねぇか!」
翔太は思わずツッコミを入れた。
卒業アルバムの柊少年はいがぐり頭であった。
「コレと今の俺を結びつけるのは難しくないか……?」
卒業アルバムの写真に載っている柊翔太と、現在の翔太が同じ人物かどうかを判別できそうなのは、柊翔太の家族以外では、神代や橘くらいであろうと思われた。
このことから、柊翔太と狭山が中学校を卒業した後にも、何らかの接触がある可能性が出てきた。
そうだと仮定した場合、狭山が直近で会った事実を言わずに、『中学の同級生』とだけ言ったことに違和感が残る。
(狭山と柊翔太の間に、公には言えない関係があった……考えすぎか?)
翔太が想定していたのは、柊翔太が学生時代に芸能界に関わっていることであった。
そして、その過程で狭山と何らかの交流があったという説だ。
そう思ったからこそ、両親に問い合わせて見たが、その反応は微妙であった。
「親に内緒で、芸能界入りを目指していた可能性もあるな……」
翔太はぶつぶつと独り言を言いながら、部屋の中を漁っていた。
柊翔太のプライバシーには踏み込まないようにしていたが、狭山との関係性がゼロではなくなった以上、柊翔太の存在が神代に何らかの影響を与えてしまうことを翔太は懸念していた。
「ん? おかしいな」
翔太は本棚にあった英和辞典に違和感を持った。
本棚には、同じタイトルの辞書とその外箱が別々の場所に置かれていた。
(普通は辞書を外箱の中に仕舞うよな……)
辞書の外箱を手に取ると、何かがゴロゴロと音を立てた。
中身に何かが入ってることは明らかだった。
柊翔太は何かを隠している。
これを見てしまったら、後には引けない――そんな気がした。
「これは……」
辞書の外箱に入っていたのは、携帯電話とその充電器だった。
病室で柊翔太として目覚めたときに所持していた携帯電話とは、別の携帯電話であった。
普通の大学生が携帯電話を複数台所有するということはかなり不自然である。
(社会人であれば、会社から携帯電話を支給されることはあるけど、そうでない場合は……)
一見すると、何の変哲もない携帯電話であるが、禍々しい気配を感じた。
体がそれを感じ取ったのか、携帯電話を持つ翔太の手が震えていた。
(こんなことが前にもあったな……)
翔太は電池が切れていた携帯電話に充電器をつなぎ、電源を入れた。
「そりゃ、ロックが掛かっているよな……」
携帯電話の中身を確認するには、四桁の暗証番号を入力する必要があった。
「生年月日は……無理か」
翔太は柊翔太に関連がありそうな番号を順次入れてみたが、ロックを解除することはできなかった。
連続して間違った暗証番号を入力したため、セキュリティのロックが掛かってしまった。
この状態から暗証番号を入力するためには、時間を置く必要がある。
「今なら……まだ引き返せる」
この携帯電話の中身にはただならぬ情報が入っている可能性がある。
柊翔太のプライバシーに立ち入ってまで探るべきなのだろうかと、翔太の心の中で、葛藤が渦巻く。
しかし、柊翔太と狭山に何らかの関係がある可能性を排除できない以上、翔太は踏み込むべきと判断した。
――翔太は震える指先で四桁の数値を入力した。
「ビンゴか……」
翔太は携帯電話のロックを解除した。
暗証番号は『1053』であった。




