第182話 サプライズイベント
「ごめんね、無理言ってしまって」
翔太は神代と美園に申し訳なさそうに言った。
「私は楽しめたから、大変じゃなかったよ」
神代は事もなげに言い切った。
「柊さんのお願いなら、断れないわ」
美園の表情はこれ以上ないくらいに明るかった。
「それに、あの契約のことも忘れないでね」
美園は翔太を人差し指でつんつんと突きながら、いたずらっぽく言った。
この後のことには全く緊張はしていないようだった。
「美琴、いくわよ」
「はいはい」
翔太は二人を頼もしいと思いつつ、見送っていたところで――
「柊さん、モテモテですな」
「うわっ!」
鷺沼に声をかけられ、翔太は動揺を隠せなかった。
(どこから見られていたんだろ……)
「鷺沼さん、無理を聞いていただき、ありがとうございます。元は石動の提案なのですが」
「私も面白いことが大好きなので、平気ですよん」
(はい、それは良く知っています……)
***
「うわぁ……」「すげぇ……」「超カッコいい……」
Web Tech Expoの二日目、突如始まったサプライズイベントに、会場は大いに盛り上がった。
ステージ上には美園と神代が映画と同じスーツ姿でダンスを披露していた。
このダンスは映画のエンディングでも使われる予定だ。
映画に先んじて、イベントで披露された形になった。
eラーニングサービス『ユニケーション』と映画『ユニコーン』のコラボレーションとして、石動が思いついたのが映画にダンスを入れて、そのダンス講座をユニケーションで提供するというアイデアだ。
石動の突拍子もないと思われた提案は、監督の風間にすんなりと受け入れられ、実現することになった。
ステージ上の二人の動きはシンクロし、息の合ったコンビネーションで、観客を魅了していた。
この様子は動画として公開され、驚異的な再生数を記録することになった。
後日、この動画が映画の興行収入に大きく貢献したことを蒼から知らされることになる。
「美園さんがダンスできるのは知っていましたが、神代さんもピッタリと付いていってますね」
「はい、神代さんはめちゃくちゃ練習していました」
「基調講演の演説と言い、最近の神代さんは神がかっていますね」
「そうなんですか?」
翔太は以前の神代を知らないため、なんとも言えなかった。
(そういえば、こないだも似たようなことを言っていたヤツがいたような……)
「きっと、柊さんの影響ですよ」
鷺沼は、ニヤリと笑って断言した。




