第157話 スーパーハッカー
「うーん……新しい敵ですか……」
雪代は思い悩んでいた。
夢幻の会議室では脚本の修正をするためのミーティングが行われていた。
「状況を整理しますと、サイバー攻撃を受けたときに的場と沢木は出資者である、神羅キャピタルからであることに気づいた――ここまでは合っていますか?」
「はい、合っています」
雪代も撮影現場にいたため、撮影時の状況は把握していた。
「シーン125の攻撃者の中身が柊さんであることから、実際に攻撃を行ったのは凄腕のハッカーでないといけませんね」
「そうなるな」
雪代の発言に風間が同意した。
翔太は自分が凄腕かと言われると微妙であったが、余計な口は挟まないことにした。
「神羅キャピタルにスーパーエンジニアがいたというのはどうですか?」
「伏線もなしに、いきなりそんな強キャラが出てくるのは不自然ではないですか?
キャスティングの追加も必要ですよね」
「それなら、社長の上岡が自ら攻撃してきたとか……」
「その場合、上岡が普段から技術に精通している場面を入れる必要がありそうですね」
「むむむっ……」
「すみません、脚本に関して私はド素人なので、多少は非現実的な設定でもよいかもしれません」
雪代のアイデアは突飛なものであったため、翔太は反射的にダメ出しをしてしまったが、型にはまりすぎるのも良くない気がした。
「俺は最初のアイデアは悪くないと思うけどな。存在を匂わせて、あえて役者を立てない演出もアリだぞ」
翔太は風間の案は一理あるように思えてきた。
「雫石くんの出番も考えてくれよ」
山本は翔太が棚上げしていた件を突きつけてきた。
(雫石とは関わりたくないんだよな……)
「ライバルの助演女優がこっちに出演しても大丈夫なんですかね?」
「友情出演だし、いいんじゃないか?」
「チョイ役だから、出演費用もほとんどかからないよ。劇団ヒナギクからもOKが出ている」
「そうなんですね」
翔太は映画界のことを知らないため、納得するしかなかった。
「柊くん、マーケティングの観点から、この映画の弱点は何だと思う?」
「年齢層と性別ですね……性別に関しては神代さんに女性ファンが付くかもしれませんが」
映画『ユニコーン』はIT業界を舞台にしている。
観客は成人した男性が中心となるだろう。
姫路からの課題を達成するためには、ここがネックになりそうだ。
「子役が入るだけで、客層が広がるんだよ」
「そういうものなんですね」
翔太は友情出演の提案は雫石からであると睨んでいた。
撮影所の神代の演技を観て、共演したいと思い至ってもおかしくはない。
もしくは、最初からそれを狙って撮影所に来た可能性もある。
「そうだ! 雫石さんは上岡の娘役にするのはどうでしょうか?」
「おぉ、いいんじゃないか」
雪代の提案に風間は前向きだった。
「そして、雫石さんは子供でありながら、天才ハッカーという設定です!」
(見た目は子供、頭脳は大人 ?)
「うむ、子供受けしそうだ」
山本も乗り気だ。
この流れでは、翔太は反対する余地が残されていなかった。
(強烈に……やな予感がする……)
「ということで、柊くん。頼んだよ!」
翔太の予感は的中することになった。




