94.あの雲の中へ
私たちは竜王国スカイ・フォシワへ遊びに向かっている。
だいぶ上空へとやってきたのだが、まだたどり着かないらしい。
「ねーまだー」
「もうちょい……あ! 見えたっす! あのデカい雲!」
ヴィーヴルが上空を指さす。
そこには馬鹿でっかい入道雲があった。
「あれ?」
「そっす」
私はヴィーヴルのケツを蹴っ飛ばす。
「きゃんっ! なにするんすか!?」
「パシリにされた腹いせ? 入道雲つったら、中は大荒れでしょうが」
「そ、そっすけど……あの雲が入口になってんすよ!」
ほんとだろうか? 疑わしい……。
ゼニスちゃんが訳知り顔でうなずく。
「……セイ様。竜王国スカイ・フォシワはその存在を秘匿されてると文献で読んだことがあります」
「へえ、じゃあ国を隠すために、あえてあんな人が入って来なさそうな入道雲を入口にしてるってわけね」
ならまあ、ヴィーヴルの言っていたことは間違いじゃなかったのだろう。
「よーし、パシリ1号。あの雲に突撃せい」
「ちょっと! 自分ケツけられたんすけど!? それにたいする謝罪は……きゃんっ!」
私はもう一度ヴィーヴルのケツを蹴る。
「いちいちうるさいわ」
「うう~……理不尽~……」




