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【完結】天才錬金術師は気ままに旅する〜500年後の世界で目覚めた世界最高の元宮廷錬金術師、ポーション作りで聖女さま扱いされる〜  作者: 茨木野


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89.魔神竜ヴィーヴル登場、爆死す



 私は奴隷ちゃんズと船旅の真っ最中だった。 

 しかしそこへ、天から巨大竜が落ちてきた。


 海のど真ん中にて。

 

「さてどうしたもんかね、この馬鹿でかいドラゴン」


 悪神トリトン、というなのクジラに乗っている私たち。

 船の甲板のようになってる背中から、私はそいつを見ている。


 でかい。ものすごくデカいドラゴンだ。。

 肌は黒くて、体の鱗はギザギザしてて痛そう。


 体からは常に、漆黒のオーラを発してる。

 可視化できるくらい濃密な魔力であると気づいた。


 つまり、このドラゴンはでっかくってちょー強い。うん。


「トリトン」

『なんでしょう姉御!』


 すっかり私のパシリとなった、悪神トリトンが元気の良い返事をする。


「迂回して」

『合点承知……!』


 トリトンは私の命令通り、でかドラゴンを回避する形で泳いでいく。

 隣に立つシェルジュが、はて、と首をかしげる。


「いつもみたいに爆裂エクスプロージョンポーションで、爆発四散! させないのですか?」

「やめろ。私が爆弾魔みたいに聞こえるじゃないのよ」

「違うのですか?」


 いや、違うよね……うん、そんなことはない(確信)。

 確かに邪魔者はポーションで爆撃してるけども……私は爆弾魔じゃない、錬金術師だ(堂々と)。


「厄介ごとに自ら突っ込む必要は無い」

「なるほど、君子危うきに近づかずですね。さすがマスター」


 時折意味不明の発言をするシェルジュをスルーする。

 ぷくっと頬を膨らませて、メイドが私の二の腕を摘まんできた。ええい、やめい。


「気絶してるなら好都合、さっさと通り過ぎましょ。このまま何事もなければいいけども」

「マスター、それフラグ」


 と、そのときだ。

 ヴォン……という音とともに、目の前にでけえ光の玉が出現する。


 それがドラゴンの目玉だと気づいたときには遅かった。

 ぐぉおお……! とやつが体を起こす。

「わぁ~~~~~~~! 大波ですぅ!」


 ドラゴンが動くだけで海が揺れる。

 トリトンの大きな体がゆれるってことは、そうとうな高さの波なのだろう。


「おいクジラ。飛んで」

『ちょっ!? 姉御! それは無茶ですよ!』

「ちっ、使えない魚類ね。んじゃ羽生やして。風は私が起こすわ」


 風を起こす風凧カイトポーションを投げる。

 トリトンが翼を生やした瞬間、海面から凄まじい突風が吹く。


 私のポーションが起こした風を受けてトリトンが飛翔。

 飛ぶって言うか、浮いてる感じね。


「なんと! 大きなドラゴンでござる……!」


 トーカちゃんが武器を手に、恐る恐る眼下を見下ろす。

 ドラゴンのやつ、二足でたっていた。そのせいでやたら大きく見えるわ。


『自分を落したのは、てめえらっすかぁあああああああ!? ああぁん!?』


 くそでかドラゴンが怒りを込めて叫ぶ。

 ビリビリと震える大気と海。

 肌に当たる衝撃波から、あーこりゃカルシウム足りてないなーってのが感じられる。


「緊張感なさすぎて草生えます」

「草? どこに」

「ふふ、さぁ……? 教えて欲しい?」


 イラッとしたので無視した。


「別に私なんもしてないわよ?」


 奴隷ちゃんズが私の身体にしがみついてる。ぷるぷる震えてる彼女たちがかわいらしくて、このまま持って帰りたいくらい。あー、私のだったわー。


『うそつくんじゃねえっす! あんな馬鹿でかい音を、顔の近くにぶちならしてきたじゃねーっすか!』

「馬鹿でかい音……あ」


 さっき飛竜を倒すときに使った音爆弾か。

 なるほど、あの音を聞いてこのドラゴンが驚いたのね……ふっ。


「ドラゴンさん、お名前は?」

『うちはヴィーヴルっすけどっ!』

「じゃあヴィーヴルさん。あの大きな音を立てたのは、私じゃないわ」

『む? そうなんすかっ?』


 私の言ったこと信じてね、こいつ。

 ははん……さてはこいつ馬k……直ちゃんだな。馬鹿なんてお口悪いこと、淑女であるワタクシが言えましょうか? 言えませんね(反語)。


「ええ、あの音爆弾を放ったのはそこのメイドよ」

「おいこらマスター」


 シェルジュが近づいて、組み付いてきた。


「命令したのは貴女じゃないですか?」

「実行したのはあんたでしょ! ほら、ドラゴンさんにDOGEZAしなさいよ」

「ワタシがDOGEZAするのは、マスターに一生のお願いだから一緒にベッドインしてくださいと頼むときだけです」


 ベッドイン? 一緒に寝てくれってこと?

 やっすい一生のお願いね。


「こいつのせいでーす」

「違います、この女の自業自得です」

「このポンコツロボのせい!」

「いえこのポンコツ爆弾魔の」

『あーもう! どっちでもいーっすよ!』


 うがー! とヴィーヴルさんが気炎を口から上げる。おっと、炎も一緒に吐いてきやがった。


『あんたらにめーわくかけられたのは事実っす! 謝罪しろっす! しゃーざーい! しゃーざーい! しゃーざー……』

「うるっせえ!」


 なんかむかついたので、私は爆裂エクスプロージョンポーションを素早く作る。


 シェルジュにノールックパスすると、流れるような手つきで、彼女がランチャーに装填。


「ふぁいあー」


 射出したポーションがヴィーヴルさんの体にぶつかる。


 ぼぼん!


『へっへーん! こんなちんけな爆発で、魔神竜たるヴィーヴルさんがやられるかってーんだ!』


 ぼぼんっ! ぼぼぼぼんっ! ぼぼぼぼぼぼぼぼんっ!


『ちょ!? 連続爆破!? 爆破が爆破を呼んで……あれとまらねーっす!』


 火薬と酸素濃度をちょろっと錬金術でいじることで、無限に爆発が繰り返される。


「あれ、なんかこれ、前にもやった?」

『恐ろしやー! ああ恐ろしや、恐ろしやー!』


 あ、そういえばこのクジラにも同じの使ったかしらね。

 と、連続爆撃を受けてるドラゴン・ヴィーヴルを見ながら、そう思ったのだった。

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