88.くそデカドラゴン
私は奴隷ちゃんズあんど水精霊と優雅な船旅をしていた。
上空を襲ってきた飛竜の群れを、音爆弾で撃破。
さてまた優雅な旅を……と思ったそのときだ。
「! おねえちゃん!」
ぴんっ、とダフネちゃんがラビ族特有のとがった耳をぴくつかせながら、上空を指さす。
「お空から、なんか落ちてくるのです!」
「なんですと? なにかって?」
「わからない……けど、おっきー!」
具体的なサイズはわからないし、そもそも何が落ちてくるのかわからない。
「おいロボ。どうにかしろ」
「やれやれ、人にものを頼む態度ですか?」
シェルジュがため息交じりにクビを横に振るう。
「いいからさっさと行け」
「ちゅーは?」
「は?」
「いってきますの、ちゅーするなら、いってあげても……」
「あ、じゃあいいわ」
他の手を考えるか。てゆーか、落ちてくるなら待ち構えてても別にいいか。
「マスター。ワタシいってきます~。だからちゅーして、ちゅー」
「うっざ……さっさと行きなさい」
しぶしぶ、シェルジュがジェット噴射で空を飛んでいく。
シェルジュのやつから、魔道具を通して通信が入る。
「どう?」
『激やばです』
「何が落ちてくるのよ」
『ドラゴンです。それも超巨大』
「はぁ~? ドラゴン?」
やれやれ、また厄介ごとの気配がするわ。
「どーにかなんないの? 銃で破壊するとか」
『無理ですね。ワタシの装備では破壊不可です』
「なーるほど……ん。おっけ。帰ってきなさい」
さて、どうやらめっちゃでっけえドラゴンが墜落してくるみたいね。
クジラに急げって行っても、逃げられるかしら?
「おねえちゃん……」「あるじどの……」「…………」
奴隷ちゃんズが不安げに私を見てくる。最近は、この子らのこういう顔見ていると、どうにかしなきゃ! ってなってきてるのよね。
愛着っていうのかしら。
「だいじょーぶい。なんとかなるわ」
私がそう言うと、みんなが安堵の表情を浮かべる。
「おねえちゃんがそーゆーなら!」
「主殿はすごいでござるからな!」
「……セイ様なら何とかしてくださるでしょう」
「…………!」こくこく!
あらまあ、うれしいこと行ってくれるじゃあないの、みんな。
ま、大丈夫なんだけどね。
ぎゅんっ、とシェルジュが降りてくる。
「ほいシェルジュ。ポーション。打ち上げて」
「承知いたしました。って、いつの間に?」
「一瞬でちゃちゃっとね。ほら、ランチャーにセットして」
作ったポーションを、シェルジュに打ち上げさせる。
上空へとすっ飛んでいったポーションが、やがて……落ちてくる【それ】にぶつかる。
「まじでデカいわね……」
空に蓋するレベルのデカいドラゴンが、ゆっくり、ゆっくりと落ちてくる。
「反重力ポーション。重力場を逆転させて、重さをほぼゼロにするポーションよ」
ゆっくりゆっくりと落ちてくるドラゴンを横目に、トリトンは進んでいく。
やがて海面に軟着陸するころには、私たちは距離を取っていた。
「すごいのです!」「あわやぺしゃんこになるところだったところを、さすが主殿!」
いやいや、それほどでも。
てゆーか、何よこのくそでかドラゴンは?




