86.のんびり船旅
私ことセイ・ファートは師匠からの依頼で悪神を討伐してきた。
用事を済ませた私はとっとと師匠の元から離れることになったのだった。
「はぁ~……快適ですわ」
トリトンのなかは豪華なホテルみたいな内装になっている。
私は優雅にソファに座って、ワインを飲んでいる。
「もう一生船旅でも良いかも」
悪神の中は快適な温度で保たれている。
不思議と船のゆれを感じず、船酔いは一切しない。
「おねえちゃんっ! ワインのおかわりなのです!」
「あらあら、ダフネちゃん。そんなことしなくていいのに」
ダフネちゃんがワインボトルを持って、ニコニコしながらやってくる。
「ううん、お姉ちゃんお疲れだもん! ダフネが……お、おて、お手伝いするのです!」
「なるほど……じゃ、おいで。ダフネちゃんには、もふもふふわふわしてもらおうかな」
「はいなのですっ!」
ダフネちゃんがワインボトルをテーブルに置くと、私のそばまでやってくる。
私の膝上に、そのキュートなお尻を乗っけてくる。
ふわふわの空色の髪の毛をもふもふさせてもらう。あー、きもちえーんじゃー。
「……!」
スィちゃんが部屋に入ってくると、すててててっと近づいて私の隣に座る。
すりすり、と頬ずりしてきた。
「スィちゃんはなんて?」
ダフネちゃんはウンディーネの里で、水精霊の声が聞こえるようになったのだ。
「お姉さませーぶんをほきゅーしたいですわ、だって。なんでしょ~?」
「ねー、なんだろうね」
ま、可愛いからいっか。
「む! 主殿!」
「……セイ様、ここにいらしたのですか?」
トーカちゃんとゼニスちゃんも私のもとへとやってきて、くっついてくる。
わはは、両手に花どころじゃあないなぁ。
「良いご身分ですねマスター」
「でたなポンコツロボメイド」
じとーっ、と入り口でこちらを見てくるロボメイドのシェルジュ。
「わりーなロボ子、私の隣はもういっぱいなんだわ」
「別に気にしてません。どうぞご自由に」
じゃきっ、とロボが右手を変形させて、ジェットブローを発動させる。
凄まじい突風が吹いて奴隷ちゃんズがすってんころりんする。
「おっといつのまにか隣があいたようですね。では失礼して」
シェルジュが私の隣に遠慮無く座ってくる。
「あんたね、何が気にしてないよ。この子達を無理矢理どけて」
「別に私は掃除をしようとしただけです」
「この部屋にちり一つ落ちてませんけどぉ?」
「あーあー、きこえなーい」
ロボメイドがくっついてくる。奴隷ちゃんズたちもくっついてきた。
私は……彼女たちのぬくもりを感じながら目を閉じる。
あー……疲れた。




