85.やはりすごい聖女さま
セイ・ファート一行が悪神を討伐し、舎弟にすえて、旅に出た……。
それから数日後。
Sランク冒険者フィライトたちは、セイが使っていた無人島へとたどり着いた。
「ここにいたはずなんですのね、ウフコック!!!」
フィライトが聖騎士ウフコックにそうたずねる。
彼女は嗅覚に優れる。
遠く離れたフォティヤトゥヤァからここまで、匂いをたどってきたのだ。
驚異の嗅覚といえる。
「……ああ、しかし、海に入ったみたいだな。それから匂いが消えてる」
「くぅう……! また足取りが消えてしまいましたわー!」
……さて。
フォティヤトゥヤァでの騒動があってから今日まで、彼らは何をしていたか。
あの国は今だごたついていた。
セイ・ファートがダンジョンを突破した後……。
フラメルとシェルジュによる大乱闘があった。
セイのポーションで元通りにはなったものの、あれだけの騒ぎを起こしたことで、周りの魚類型モンスターが活性化したのだ。
セイのポーションの効果でモンスターが街へ入ってくることはなかったものの、モンスターの対応に追われてたため……。
セイたちに遅れてしまったわけだ。
「また手がかりが途絶えた……ですが! わたくしは諦めませんわー!」
フィライトは今だセイ・ファートと邂逅を果たしていない。
諦めるきはさらさら無い様子だ。
「はいはい……そっちもいいけどよぉ、化けクジラの調査もあんだろうがよぉ」
「そうでしたわね」
フォティヤトゥヤァの街で依頼を受けたのだ。
この海域で、最近化けクジラの姿が確認されたと。
ちょうどセイをおうついでと言うことで、調査しているのだが……。
「……そっちも見当たらんな」
「だなぁ……近海で頻繁に目撃されてたみてーだけどよぉ……」
と、そのときである。
「お、かわい子ちゃんではあるまいか」
「! あなたは……確か、ダンジョンで出会った……七色髪のひと!」
セイの師匠……フラメルがいつの間にか現れていたのだ。
身構える、ウフコックとボルス。
女達を連れ去っていったこと、そして、街をぶっ壊した犯人であるため、当然警戒する。
だが男ども(ウフコックは女だが)をスルーして、フィライトの手を握るフラメル。
「お嬢さん、こんなとこにどんなご用事ですかの?」
「わたくしはセイ様を追って……あと、化けクジラの調査に」
「それは残念じゃのぅ。セイはもうおらんよ」
「わかるのですの?」
「ああ、わしはすごいからなっ」
理屈はわからないが、このフラメルという女には異常な力があることは、先日のダンジョンでの事件で知っている。
ゆえに、この女の言ってることは事実であり、セイもいないのは確かである。
「どこへ行ったのでしょうか?」
「さぁのぉ……セイの魔力は北上していったがな」
「! ありがとうございます!!! 聞きましたみなさん、北ですわ!」
今すぐにでも飛んでいきそうなフィライトの、首根っこをつかむボルス。
「おいあんたよぉ、化けクジラの情報なんかねーか?」
「ん? ああ……それはセイが討伐したようじゃな」
「なんと! やはり……!」
キラキラした目をフィライトが、彼方に居るであろうセイに向ける。
「どこへ居ても、どんな問題も察知して、たちどころに解決してしまわれる! やはり! セイ様はすばらしいですわ!!!!」
……実際にはそこにいる七色髪の女の尻拭いを、いやいやしただけだったし……。
なんだったら討伐したんじゃなくて、舎弟に加えたのだったが……。
彼らは、やはり真実は到達できないのであった。
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