81.悪神トリトン
私は師匠の依頼で海に居る悪神とやらをぶっ飛ばしに来た。
人魚化してる私たちの前に現れたのは……でっかいクジラ。
ただし生物的なフォルムではない。
レンガを積んで作った、人工的なクジラといえばいいだろうか。
『なんだ貴様は! このトリトンの領域に無断で入ってきよって!』
「ほーん、あんたトリトンっていうんだ。私はセイ。ま、名前覚えなくて良いよ。今から死ぬあんたには、関係のないことだから」
「完全に悪役の台詞で草」
シェルジュがツッコミを入れてくる。
『ふん! 小娘が。ふっかつしたこの我を殺すだぁ? たかが人間ごときが神を殺せるとでも?』
「うるさいクジラ。私は今すこーしいらってしてるんだ。付き合えよ……憂さ晴らしにさ!」
私はシェルジュに持たせて置いたポーション瓶を、海中に放り投げる。
水の抵抗があるから、狙い通りすっ飛んでは行かない。
「シェルジュ!」
私の投げた瓶をシェルジュが水中銃で狙撃。
海用の爆裂ポーション。
ぼぼんぼぼん! と連続で爆発が起きる。
『ぬははは! 効かんわぁ……!』
水中で、あのばかデカい図体で、なかなか素早く動いてくるトリトン。
この環境下じゃこっちが不利か。
「よし、作戦を伝えるわみんな。トーカちゃんとスィちゃんは敵を捕縛して。ゼニスちゃんとシェルジュは敵をチクチクさせながら、ポイントに誘い込む」
「「「らじゃー!」」」
「ダフネはっ?」
「応援ヨロシク!」
「らじゃー!」
なにが悪神トリトンよ。
馬鹿でかいだけのクジラじゃないの。
やつはごおぉお! と回転しながら泳ぎだす。
渦潮が発生して、私をそこへ誘い込もうとしてきた。
私はそれを泳いで回避。
「いくでござるよスィちゃん殿!」
「……!」
トーカちゃんがウンディーネからもらったトライデントをぶんなげる。
それがクジラの側頭部にぶっささる。うぎゃ、痛そう~。
スィちゃんは海中で水の竜を作り出し、クジラの動きを止める。
「にがさぬぅうううううううううううう!」
トーカちゃんは馬鹿力でクジラを引っ張る。
クジラが逃げようとすると、すかさずゼニスちゃんとシェルジュが、遠距離から攻撃して嫌がらせする。
「おお、なーんか連係プレイうまくいってるかんじ~?」
相手の動きが止まった。私はいきおいよく、トリトンの口の中へと突っ込む。
『ふははは! 馬鹿が! 自ら神の供物となりにくるとはな!』
フッ……馬鹿が。
神の供物だぁ……?
「うるせえ! 私は……錬金術師だ!」
ありったけの爆裂ポーションを、私はトリトンの内部で、爆発させる。
ちゅどどどどどどどどどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!
やったか!
「あかんマスター、それ、生存フラグや」




