80.悪神のもとへ
私ことセイ・ファートは師匠の依頼で、海に住むという悪神をぶっ飛ばしにきた。
まあそれはいいんだけど……。
「悪神ってどんな見た目してるのかしらね」
ご飯休憩を挟んで、私たち一行は海を泳いでいく。
悪神を倒せと言われても、その見た目については何も聞いてないのよね。
「きっと~……こう、怖―い見た目なのです!」
ダフネちゃんが目の端を指で、ぴろんとつり上げさせる。
あらやだかわいい。
「こんなかわいい悪神だったらいいのに」
「わぁ! えへへ♡ かわいいって言われたのです~♡」
海中でローリングするダフネちゃん人魚。
スィちゃんも一緒にローリングしていた。きゃわたん。
「……しかし、実際どうしましょう。実態のわからない相手を倒せだなんて」
エルフのゼニスちゃんはいつだって話を本筋に戻してくれるなぁ。
「悪神はなんか結界張ってるんですって」
「……結界?」
「不可視化の結界。それをぶち破れば、向こうも黙ってはないでしょ。で、襲いかかってきたやつ、そいつが悪神。で、ぶっとばーす!」
なるほど……とゼニスちゃんがうなずく。
「目が合ったやつとバトルって、ヤンキーですかポケ●ンですか?」
「なによ、ヤンキーって、ポ●モンって?」
「ふっ……マスターの知らないことを、ワタシだけは知ってる。知りたい? ねえ、知りたい?」
うっざ……。
うざロボを放置して、私たちは適当に泳いでいく。
「お、あれかしら?」
ほどなくすると、目当てとしてる結界が【見えてきた】。
けれどトーカちゃんが首をかしげる。
「主殿? あれ、とはどれでござるか?」
「ん? だからこれよこれ。ねえ?」
はて、と奴隷ちゃんズとスィちゃんが首をかしげる。
あら、見えてない?
ロボメイドがすぅっと近づいてきて、ぽんと私の肩を叩いた。
「マスター。お疲れ様です」
「幻覚じゃねえよ」
「寝る前にほっとアイマスクをつけるとよいかと」
「だから幻覚じゃないから」
「ホットミルク飲んで今日早くお眠り」
「だーかーらー! 見えるんだって! まじで! ここに、ある! 結界が! ある! ねえ!?」
ふるふる、と奴隷ちゃんズが首を振った後、不安げな表情を浮かべる。
「おねえちゃん……」「主殿……くっ! そこまでお疲れとは……」
「……セイ様。わ、わたしがお膝を貸しますので、どうぞお眠りください」
奴隷ちゃんズに心配されてしまった!
いらん心配されてしまった!
「大丈夫だから。ほら見て、かすかに魔力あるでしょ?」
ふるふる、と奴隷ちゃんズが首をかしげる。
あらまあ、見えないのかしら。
「マスター。おそらくは結界にあわせて隠蔽の魔法を使用してるのかと思われます」
「ほーん。でもどっちも魔法じゃん? だから、魔力を帯びてるわけで、それを追えばたとえ隠蔽されててもわかるのよ」
ゼニスちゃんが感心したようにうなずく。
「……なるほど! 勉強になります!」
「えと、おねえちゃんすごーい!」「主殿はさすがでござる! 難しくてさっぱりでござるが!」「…………!」ぴょんぴょん。
ダフネちゃんたちは理解できなかったみたいだけどほめてくれる。ちゅき。
「さって、じゃこれを爆裂ポーションでぶっ飛ばしますか」
「……水の中で爆発できるのですか?」
「できるのよ。水の中でも酸素があれば……こうやってね!」
私はポーションをぶんなげる。
ぼぼん! と激しく爆発すると……。
結界が、ぶち破られた。よし!
「水の中で爆発なんてできるなんて、主殿はものしりでござるなぁ!」
「どもども……さて、と」
ごごご! と大きな何かが、こちらに向かって泳いでくる。
あれね。よし、ぶっとばーす!




