78.海ご飯
めんどくさロボの相手をしながら、私たちは海の中を泳いでいく。
「…………」
くいくい、と水精霊のスィちゃんが私の腕を引っ張ってきた。
「どうしたの?」
「…………」ぐぅ。
おなかを押さえるスィちゃん。
ははん、これはおなかがすいたのね。
「ちょっと休憩しましょうか。ご飯にしましょう」
「わーなのです!」
ダフネちゃんが両手を広げながら泳いでいる。きゃわわ。
はて、とトーカちゃんが首をかしげながら問うてきた。
「しかし主殿、海の中で食事なんてどうするのでござるか?」
「……確かに、火は使えませんし、固形物はふやけてしまいますね」
二人の意見はごもっとも。
そこで私はシェルジュに預けてある【ぶつ】を取り出す。
「じゃじゃーん、食事ポーショーン!」
「なんかもう、ポーションつけておけば、何でもいいやって思ってません? マスター」
「うっさいロボメイド。ささ、たべましょー」
私たちは近くの岩場へと移動する。
取り出したるは、袋に入ったポーションだ。
普通は瓶に入ってるもんだけどね。
「おねえちゃん、どうやってたべるのです?」
「…………?」
食事ポーションを手に取ったスィちゃんダフネちゃんが、はて? と首をかしげてる。
「そのままちゅうちゅう、って吸うのよ。中にゼリー状のポーションが入ってるの」
「それはもうポーションではなくゼリー飲料では?」
……さっきから口を挟んでくるなやたらと、このロボ。
「なに? かまって欲しいわけ?」
「そんなこと一言も言ってませんが?」
「あっそー、じゃあもう全部無視しちゃお」
「それしたら殺人ならぬ、殺ロボしちゃいますよ? さみしいと死んじゃうんですよ?」
「おのれはウサギか……ダフネちゃんだけで十分だっての」
食事ポーションをしげしげながめている本物のうさちゃんこと、ダフネちゃんが食事ポーションに口を付ける。
ちゅうちゅう、と吸うと……耳がぴーん! と立つ。
「すごいのです! ステーキの味がするのですー!」
「おお、なんと! では拙者も……んっ! こっちはスパゲッティでござる!」
奴隷ちゃんズがちゅうちゅう、とおいしそうに食事ポーションを吸っている。
「このポーションには擬似的に味を感じるだけじゃなくて、食感もあるし、栄養素もそのまま取り込める優れものなのよ」
「「「す、すごい……!」」」
はて、とシェルジュが首をかしげる。
「なんでそんなもの作ったのですか? 普通に食事をすればよいのでは?」
「仕事してるとね、食事してる暇が無いときがままあってね。そのとき、10秒でぐいっとそっこーエネルギーをチャージするときとかに、これ飲んでたのよ」
「なるほど、うぃだーですね」
うぃ……? たまにこのロボ、わけわからんこと言うわよね。
「いろんな味があるからいっぱい食べてね。あ、でも食べ過ぎると太っちゃうから気をつけること」
「「「はーい!」」」
食事ポーションをうまうまと食べている奴隷ちゃんズ。なごむわー。
「マスター。いい加減、そろそろ海底にきた目的をお話しください」
「あ、そういや言ってなかったわね」
私は、ロボメイドに教える。
「海底の化物を、退治しにきたのよ」




