76.海中でも最強
【★お知らせ★】
なんと本作、書籍化が決まりましたー!
ありがとうございます!!!!!!
詳細は後日報告します!
いつも読んでくださってる皆様のおかげです、ありがとうございます!
私ことセイ・ファートは、師匠から依頼で、海底へと向かうことになった。
「わぁ! すごいよスィちゃん! お魚さんみたいに泳げるのです~!」
「……!!」
私の作った変身薬の効果で、一時的に水精霊化しているダフネちゃん。
下半身が魚類になっているので、人魚に見えなくもない。
ただうさ耳もついてるので、要素がもりもりに渋滞してるんだけども。
「ふふふのふ」
私の隣を泳ぐシェルジュが、にんまりと笑っていた。
ちなみにロボは足からジェットを噴射することで、結構な速度で泳げる。
「なによ?」
「ふ……マスター。海中ならさすがに、ポーション無双はできませんね」
はぁん?
何を言い出すんだこのロボは。しかもなんだか得意げ。
「ここは海ですが、もちろんモンスターが存在します。遭遇したとき、大抵の場合マスターが、ちょめちょめぽーしょーん……で解決するのが通例かと」
「なんだ私のマネか? お? けんか売ってるのか?」
「しかし、海中でポーションは使えない。中身が水に溶けてしまうので。ということで、私の出番ですねっ」
ははん?
つまりあれか、自分の活躍(主人の護衛)を取られて、文句が言いたいってわけね?
「ふ……甘いですよロボメイド。私の強さはポーションに依存するとは言え、しかし海中で戦えないとは一言も言ってないわ」
「ほぅ。ではあれで、見せてもらいましょうか?」
こちらに向かってものすごい速度で泳いでくる、1匹の魚影……。
「さ、サメさんなのですー!」
「あんれま、でっかいおさかなさんだこと」
ダフネちゃんたちがびびってるけど、普通に3メートルくらいのただのサメじゃないの。
びびるこたぁないわ。
「主殿! 拙者がやるでござる!」
「あー、大丈夫大丈夫。なんとかするわ」
「……しかしセイ様、海中ではポーションが使えないのでは?」
そのとおり。いつもの、ポーションを作る、投げる、倒すみたいな流れはできない。
「そんなときは、じゃじゃん! 【通信交換機】」
こないだのダンジョンの中で見つけた、お宝の一つ。
一対の指輪となっており、持ち物をその二者間で、交換できるのだ。
もう一個の指輪はシェルジュに持たせてる(なぜか左手の薬指にはめているけど)。
シェルジュのストレージ機能と、この【通信交換機】を併用することで、やつに蓄えさせておいた素材を私が使うことができるのだ。
私の目の前に種々の薬草ができあがる。
海水を使って、薬草と組み合わせることで……。
「麻痺ポーション~!」
水はそこら中にあるからね。海中の一部分だけに、麻痺の成分を混ぜる。
その結果、サメがそこを通ることで麻痺が発動。
仰向けになってぷかぷか浮いてるって感じ。
「……セイ様は本当にすごいですね。どこに居ても強い」
「わはは! このセイ・ファート様に死角はないのだよ、わかったかねぇ~? シェルジュくーん」
するとシェルジュが、海底に手をついて頭を下げる。
「……せっかく、マスターのお役に立てると思ったのに……」
な、なによ……殊勝な態度じゃないのよ。
私が悪いみたいな感じに見えてくるわ……。
「おねえちゃん、シェルジュさん……かわいそーなのです」
ダフネちゃんとスィちゃんが、潤んだ目を私に向けてくる。
お、おのれシェルジュ! 奴隷ちゃんを仲間に付けよって!
こ、これじゃむげにできないじゃないのよ!
「わ、わかったわよ……海中戦闘は任せるわよ。水中銃のほうが楽に倒せるだろうし」
「ふぅ~……やれやれ、マスターはやはり、私が居ないとダメダメですね」
陸地にあがったら、一発殴っとこって、そう思った。




