75.海底散歩
私ことセイ・ファートは、現在無人島にバカンスにきている。
馬鹿師匠に仕事を頼まれ、やれやれ仕方ないなぁってことで、受けることにしたのだ。
……なんだけど!
なーんで仕事せなあかんのじゃー!
私は、社畜がいやだから、働きたくないんじゃー!
「てことで、今日はみんなで海底散歩です!」
水着を着た奴隷ちゃんズに、私はそう宣言する。
「「「海底散歩……?」」」
「いえーす。文字通り海の底を歩いて行く感じ。お魚さんとかいて、楽しいと思うんだ」
おお! とみんなが歓声を上げる。
「海底散歩したいのですー!」「…………!」
ラビ族ダフネちゃんと、水精霊のスィちゃんが諸手を挙げて賛成してくれる。
君たちは私が何をやっても、真っ先に全肯定してくれるから好きよ。
「拙者もお魚! 銛でめっちゃとりたいでござる!!!」
火竜人のトーカちゃんが鼻息を荒くしながら言う。
確かトーカちゃんってお魚好きなのよね。火竜人なのに。
「……しかし、海底を歩くとなると水圧はどうなりますか? それと、呼吸の問題も」
「ワタシとスィは深海での活動が可能ですが、奴隷たちはどちらもクリアできません」
ロボは呼吸を必要としないし、スィちゃんは水の精霊だから泳げるし呼吸も必要ない。
「その辺はぬかりない。今こそ、特級の出番じゃい!」
「「「とっきゅー?」」」
馬鹿師匠からぶんどった……柔らかい石。
これを魔力水につけることで、超神水というすごい溶媒が手に入る。
それを元に作られる、すごい効果を持つポーション。
その名も、特級ポーション!
「じゃーん。名付けて、【水精の霊薬】!」
「スィちゃんの名前だー!」「…………!」
「ざっつらいと。これは飲むことで、海にいるときだけに限るけど、一時的に種族をウンディーネに変えられるのです……!」
私の説明にゼニスちゃんが愕然としている。
「……しゅ、種族チェンジなんて、そんな……神の所業じゃないですか」
「それを可能にするのが特級ってやつなのよ」
「……すごい、すごい! やはりセイ様はすごいです!」
肯定が心地よいわ~。
最近馬鹿師匠に振り回されて、ストレス感じまくりだったので、この子らとの交流がとても気持ちが良い。
「ほいじゃ、水精の霊薬くばりまーす。のんでー」
私がポーション瓶を配る。奴隷ちゃんズはまったく警戒しないでそれを飲んだ……。
「……? 何も変化がありません」
「水に入ればわかるわ。ほら、れっつらごー!」
私たちがジャバジャバと、水の中に入っていく……。
すると……。
ぱぁ……! と奴隷ちゃんズの体が輝く。
「ふわわ~!」「なんとー!」「……体が、変化してる!」
見た目麗しい奴隷ちゃんズたちが、ななななんと!
「「「人魚になってるー!」」」
そう、下半身がお魚さんになってるのだ!
水精霊になっただけじゃ、泳ぎが早くなるわけじゃない。ので、こうしてビジュアル面も変化させたのである。
ちなみに私も人魚バージョンですよ。
「マスター、ワタシも人魚になりたいのですが」
「あんたは足からジェット噴射できるでしょ」
「むぅ……」
何不満がってるのかしらね?
まあいいわ。
「とにかく、これで海を渡る準備は万全! そいじゃーいくわよ!」




