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【完結】天才錬金術師は気ままに旅する〜500年後の世界で目覚めた世界最高の元宮廷錬金術師、ポーション作りで聖女さま扱いされる〜  作者: 茨木野


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71.聖女様は素晴らしいお人です(定期)



 セイがダンジョンをクリアして、師匠ニコラス・フラメルと再会した……。

 話は、その2日後のことだ。


「うう……はっ! こ、ここは!?」


 冒険者ボルスが目覚めると、そこは見たことのない、豪華な部屋の中だった。

 アラビアンな内装のベッドルームに戸惑っていると……。


「……気づいたか、ボルス」

「ウフコック……!」


 聖騎士の美女ウフコックがそばにたたずんでいたのだ。


「おれぁ……いったい……?」

「……爆発事故の衝撃で気を失っていたのさ。2日間もな」

「爆発……そうだ! フィライトは!?」


 ボルスの恋人、Sランク冒険者のフィライト。

 なぞの七色髪のフラメルに、恋人を連れ去られていたのだ。


 追跡の途中で急に外に転移した……かとおもったら、また別の場所に転移し、今に至る。

 立ち上がろうとするボルスの肩を掴むウフコック。


「……まあ待て。おまえの女は無事だ」

「なんだと!? どこにいんだよ!?」


 今すぐにでも合わせろという剣幕。

 ウフコックは息をつくと、彼を連れて外に出る……。


 そこに広がっていたのは、美しいフォティアトゥヤァの町並み。

 あの殺人的な暑さは今、なりをひそめて、元の観光の街へと変わっていた。


 そんな王都どまんなかに……。


「な、んじゃこりゃぁ……!」


 もと、ダンジョンのあった場所に、巨大な銅像が建っていた。

 髪の毛の長い、それはそれは美しい女性が立っている。


「……救国の英雄、黒髪の聖女さまの銅像だそうだ」

「救国の英雄……?」


 そのときである。


「おお! ボルス殿! 目が覚めましたか!」

「たしかフォティアトゥヤァの王子さんじゃないっすか……」


 ブロッケス王子がにこやかに手を振りながらこちらへとやってくる。

 その手には……ビラを大量に持っていた。


「いやぁ、よかったです! 目が覚めないんじゃ無いかって心配してたんですよぉ!」

「いや、おかげさんで……ってか、この銅像はなんすか?」

「おお! よくぞ聞いてくれました! 救国の英雄、黒髪の聖女セイ・ファート様をたたえる銅像です! 宮廷錬金術師たちに急ピッチで作らせたんですよぉ!」


 ボルスは王子の目が、誰かに似ているきがした。

 ぽん、とウフコックが肩を叩く。


「……おまえの女と同じ目だろ」

「あ、ああ~……そっか。信者のな」


 しかし、どうしたことだろうか。

 ウフコックも前は、セイに対して、同じ目……つまり信者の目をしていた。

 けれど、今は普通の目をしてる。


 そんな変化を問いただす前に、ブロッケスが一人語り出す。


「このビラをご覧ください! これは聖女様のご活躍をまとめたものです!」


・フォティアトゥヤァに現れたダンジョンを、聖女様が突破なさってくれた

・それによって灼熱地獄は解消

・さらに、魔神の最後の爆発から、街を、そして民達をお守りしてくださった


「魔神の……最後の爆発だぁ?」

「はい! 聞いた話なのですが、どうやらダンジョンが突破された後も、炎の魔神はしぶとく生き残っていたらしいのです! そして、最後っ屁のごとく、大爆発を起こしたと!」


 否である。ほんとはフラメルの作ったロボが、ロケットランチャーをぶっ放しただけ。

 しかし事情(確執)を知らぬ人たちの間では、魔神が生きていたことになっていた。


 まあ王都を包みこむほどの爆撃だった。

 炎の魔神のしわざと結びつけたくなる気持ちはわかる。


「セイ様はやつの最後の炎から我らを転移させ、お守りくださった。それだけならず! 木っ端みじんになった王都を、一瞬で直してくださったのです! 無償で! なんという善意の心!」

「こ、木っ端みじんって……さらっととんでもねーことになってねえか!?」


 これも誤解がある。

 たしかに、セイは街の人たちを守って、壊れた街を直した。


 だがこれは、別に善意でもなんでもなかった。

 自分の師匠、および自分のロボの暴走で、大勢が死に、街が壊れた……となれば寝覚めが悪すぎる。


 もしも自分のせいではなかったとしても、だ。

 だから街の人を全員守った、というよりは、馬鹿2名が迷惑をかけないよう避難させた、直したというだけ。


 あとで、自分のせいだと非難されないよう……まあようするに自己保身のためである。

 それを知らない街の人たちは、悪しき魔神から街を救いになった、という美談に仕立て上げたのである。


 主に、フィライト、そしてこのブロッケスのせいで。


「我が国は今後、聖女様の銅像をたて、未来永劫、彼女の偉大さを伝えていこうと思います!」

「お、おう……そうかい……」


 こののめり込みっぷりを見て、かなり引いてしまうボルス。

 なんだ未来永劫って……。


 そして、うんうんとうなずくウフコック。


「おめー、もしかしてこのやべえやつの、やべえの見て……目ぇ覚めたのか?」

「……ああ。おれも、どうかしていた」


 他人の振り見て我が振り直せ、とはこのことか。

 ウフコックはこの王子の異常な行動を見てドン引きし、正気に戻ったのである。


 前は聖女信者だったのだが……。


「……真偽はともかく、聖女様が街を救ったのは事実だから、そこは認めてはいるよ。すごいと思う」

「ただ、いきすぎた信仰まではいかなくなったのな」

「……ああ」


 さて、フィライトはというと……。


「そのときですの! 聖女様が爆撃からみなをお守りになられたのですわ!」


 街の子供達相手に、爆撃事件の詳細を語っていた。

 あの場において、奴隷と一緒に、ウフコックとフィライトも外に出ていたのである。


 一部始終を目撃しているはずだのに、美談にしたてあげられてしまっている。

 このあまりの異常っぷりも、ウフコックが目覚めるきっかけにもなったらしい。


 ボルスは恋人が無事で、はぁ~~っと大きく安堵の息をつく。


「ま、何はともあれ……無事で何よりだよぉ……」


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