70.無責任な母(師匠)、ぶち切れる娘(ロボ)
ダンジョンをクリアした私ことセイ・ファート。
ダンジョンが消滅すると同時に、目当ての柔らかい石も消えてしまう!
しかし有能ロボメイド、シェルジュが私の欲しいものを回収したのだった! らびゅー!
「フッ……どうですか、創造主? あなたの弟子は今、ワタシにぞっこんです。以上」
シェルジュがそんなことを、誰かに言う。
創造主……?
「ああ、師匠のことね」
このロボメイド、元々は師匠であるニコラス・フラメルが作った物だ。
師匠の工房を、長い間守護させておいて、500年も放置した過去がある。
だからだろか、シェルジュの言葉からは、隠しきれない憎しみがにじんでいた。 さて……そんな創造主はというと……。
「創造主? 誰のことじゃ」
「いや、あんたのことでしょ!」
「む? わしか?」
「そうでしょ! シェルジュ創ったのあんたー!」
虹色髪のハデ女、フラメル師匠が近づいてきて、じーっとシェルジュを見つめる。
「わし、こんなの創ったかのぉ?」
「………………」
隣に立つシェルジュが……。
びきっ! と額に血管が浮かんだ。
血管!? 感情モーションなんてつけてないけど!?
「マスター。発砲許可を。以上」
パァンッ……!
「いやあんた、許可取る前から撃ってるじゃないの!?」
「すみません、憎悪がMAXになりました。以上」
この暴走ロボメイド、師匠の眉間に、拳銃ぶっぱなしやがった!
まあ、気持ちはわかるけどさぁ!
「……自分で産んでおいて、500年放置しておいて、産んだことすら忘れてる……? はは、ふふ、」
「しぇ、シェルジュさん……?」
「ふざっけんなごらぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ぶち切れのロボメイド!
ストレージから両手に、魔法機関銃を取り出す。
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!!!!!
「ちょいちょいストップ! シェルジュすとっぷー!」
「止めないでマスター! こいつ殺せないです!」
「あんたしゃべり方変わってない!? あと感情が! 芽生えてない!?」
ああもうどうなってるのよ!?
しばらく機関銃を連射したシェルジュ。
「ちっ、弾切れですか……命拾いしましたね」
「いやいや、あんた思いっきり殺してますやん……」
まあこんなもんじゃ死なないでしょうけども。
「よいしょ」
「あ、ほら生きてる」
「ちっ……!」
ドパンッ……!
シェルジュがすぐさま拳銃で、師匠の眉間をヘッドショット。
だが弾丸が師匠の額にぶつかる前に、消える。
「無駄よシェルジュ。師匠は【確率制御能力】使えるんだから」
「ちっ……!」
実に腹立たしそうな顔をするシェルジュ。
いやぁ、ロボとは思えないわこのリアルさ。
どーなってるの? 感情モーションつけてないのに。
「……セイ様」
「あ、ゼニスちゃん。ごめんね、内輪で盛り上がっちゃって」
「……いえ、それより、フラメル様の【確率制御能力】とは?」
「文字通り、事象の確率を操作する能力よ。100%確実に起きることだろうと、0%にすることができる。逆もまたできるの」
たとえば、さっきシェルジュが確実に、100%、師匠を殺した。
けれど師匠は、その100を0に、つまり、【なかったこと】にできる。
「……人の領域を超えている」
「それは同意。ま、そもそも500年以上生きてる時点で化け物だからね、この人」
ケラケラと笑うフラメル師匠。
一方で、憎しみの感情を向けるシェルジュ。
「セイよ。さすがじゃな」
「なに急に?」
「おぬし、魔力ポーションをこのロボに分けたじゃろう?」
「え? ああ、そうね。魔神戦で魔力切れかけてたから」
シェルジュはロボだけど、動力は内部に蓄積した魔力を使っている。
ついさっき魔神を原料に作ったばかりの、魔力ポーションを分けてあげたのだ。
「セイの作った特別な魔力ポーションのおかげで、ロボの性能すら向上させたのだろう。その結果、表情機能が搭載したというわけじゃ」
「いやいやいや……ロボがポーションでバージョンアップとか、ありえないでしょ」
「然り。じゃが、不可能を可能にする。それこそ、大賢者たるわしの弟子にふさわしい女ということよ! さすがじゃ、セイよ!」
理屈はわからんが、このメイドが感情を手に入れたのは、私のポーションのおかげらしい。
別にそんなつもりで作ったわけじゃないし、魔力ポーションを分けたわけじゃないんだけどね。
「マスター……感謝いたします」
「シェルジュ? ……ひっ!」
こ、このロボ……めっちゃキレてる。
なんかもう……見たことないくらい、すんごい怒りの表情してるよ!
「……産んだ娘のことは、あっさり忘れて。愛弟子のことは、500年経っても覚えてるなんて……ふ、ふふ……」
「しぇ、シェルジュ?」
「この……腹の底から、こいつをぶち殺してやりたい……この感情こそが、怒り……なのですね」
やばい爆発する……!
「総員退避!」
「「「え?」」」
呆然とする王都民たち! ブロッケス王子もなんかいた!
「逃げるぞっつてんの! 死にたくなきゃな!」
私は転移ポーションを取り出す。
そして地面にぶつけると同時に。
ロボメイドは、その両肩に、魔法ロケットランチャーを抱えていた!
「死 に さ ら せ! この、クソ親ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
チュッドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
……シェルジュの怒りが文字通り爆発する前に、私は王都の人たちを連れて、脱出できたのだった。
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