67.えまーじぇんしー!
私、セイ・ファートは柔らかい石を手に入れるため、フォティヤトゥヤァのダンジョンへとやってきていた。
飛翔石っていう、珍しいアイテムをゲットしてウキウキるんるんな私は、いよいよ最終目的地である、柔らかい石ゲッツのためダンジョン攻略していたんだけど……。
「むむ!」
「どうかしたのですか、以上?」
「……奴隷ちゃんズの身に、危険が迫ってるわ」
私は迷宮の通路で立ち止まり、ロボメイドのシェルジュにそう告げる。
これは……やばいわ。
しかし私の言葉にハテ、とシェルジュが首をかしげる。
「なぜ危険が迫ってるとわかるのですか?」
「……飛びながら説明するわ。ついてらっしゃい」
まさかさっそく出番が来るとは思わなかったわ。
飛翔石。
魔力を込めることで、特殊な力場を生成する。
ふわり……と私の体が浮かび上がる。
魔力調整をミスったら天井に頭ぶつけそうだけど、なんとかなった!
よし!
「いくぞロボメイド! 奴隷ちゃんズに危機だ!」
私はすさまじい早さで迷宮内を飛んでいく。
その後ろからロボメイドが、足をジェットに変えて飛んでくる。
「それで、なぜわかったのですか?」
「緊急ポーションが発動したからよ」
「もうポーション付ければなんでもありと思ってませんか? 以上」
なんのこっちゃ!
「緊急ポーションはその名の通り、身に危険を感じたときに、アラート音とともに、自らの居場所を発信する効果のある魔法ポーションよ。あの子らに眠ってる間飲ませておいたのよ」
「マスターがあの子らを眠らせて、外に出したときですか? 以上」
「そう。で、その緊急ポーションが今、発動してるってわけ」
くっそ、結構距離有るわね……!
てゆーか、途中に出てくるモンスター……邪魔!
どがんばごん! とモンスターはひき殺していく。
でも無傷。
この飛翔石、私の周りにバリアのような力場を発生させてるため、それにぶつかっても私は無傷ですんでる。
「犯人は誰でしょう?」
「わからん! ちっくしょう! 誰だ! 私の大事な子らを盗もうとしやがって! ぶち殺してやる!」
と、そのときである。
私はひときわ広い部屋に出た。
『くくく……よくぞ参ったな挑戦し……』
「はいはいとおりまーっす!!!!!」
なんか【燃えてる変な人】の横を、私は通り過ぎようとする。
だが……ぐん! と誰かが私の首根っこを掴んでひっぱった。
「うぐ……! ちょ、なに!?」
ぼっ……! と私の目の前に炎の柱が立つ。
……止めてもらえなかったら、今頃焼け焦げだったわね。
「あんがと、シェルジュ」
「いえ、マスターを守るのもワタシの役割ですから。以上」
ロボメイドが攻撃を感知して、私を助けてくれたのね。
ったく、こんなときだけおふざけなしなんて。
「……で? あんた誰?」
私を殺そうとしたのはまあこの際どうでもよかった。
ちょー急いでるときに、私の歩みを止めたこと。それが、許せなかった。
『我が輩は炎の魔神……! この迷宮の主である!』
「はーん。で? 迷宮の主さんが、なーんで私の邪魔するかな?」
『しれたこと。貴様は挑戦者で、我が輩がチャンピオンだからだ』
「話通じてますか? 私は別にあんたに挑むつもり、さらさらないから」
別に迷宮を突破したいなんてみじんも思っちゃ居ない。
そもそもここに来たのは柔らかい石をゲットするためだし。
それにわりかし、そっちはどうでもいい。
今は奴隷ちゃんズの安否。ただそれだけが気がかりだ。
『威勢がよいな女! くく……それでこそ潰しがいがあるというもの! ぬぅん!』
炎の変な人間が、もりもりと体を膨張させる。
外見が、体が炎でできた全裸のおっさんなので、まじで見てて不愉快だわ。
『くははは! それでは挑戦者よ! ここまでこれたことまずは……』
「氷獄ポーション!」
海すら凍らせる魔法薬をぶん投げる。
一瞬でやつを凍らせるものの、じゅうう……という音を立てて氷が消える。
『くはは! なかなかの魔法だ! しかし我が輩の炎のボディにはまったく……』
「氷獄ポーション!」
『く、くはは……き、ききかんと』
「氷獄ポーション!」「氷獄ポーション!」「氷獄ポーション!」「氷獄ポーション!」「氷獄ポーション!」「氷獄ポーション!」「氷獄ポーション!」「氷獄ポーション!」「氷獄ポーション!」「氷獄ポーション!」「氷獄ポーション!」「氷獄ポーション!」
シェルジュのストレージにあったありったけの氷獄ポーションをぶん投げる。
『ちょ、ま……』
「私の邪魔すんじゃねぇえ……! ぶち殺すぞ!?」
「完全に悪側で草、以上」
ポーション投げまくった結果、炎の魔神とやらは完全凍結した。
よし! 終わった! 次!




