64.がらくたの山(※解釈違い)
スフィンクスとの知恵比べ(物理)に勝利した私。
道を塞いでいた邪魔者を排除したあと、その後ろに続いていた通路を進んでいく。
「門番がいるってことは! お宝が眠ってるってことよねー!」
「ろーぷれではまあセオリーですね。以上」
時たまこのポンコツロボ、妙なセリフを言うのよねえ。
まあ何はともあれ、門番がいるってことは、それだけ重要な物が眠っているってこと!
それすなわち!
柔らかい石があるってことじゃなーい!
うきうきるんるんで進んでいったその先には……
「…………」
「わぁお、まるで宝石箱の中のようやー、以上」
割と広めの部屋の中には……。
きらきらした【もの】があちこち置かれていた。
まず目立つのが、砂金で作られた山だ。
それがいくつも放置してある。
次に目につくのが、剣や錫杖などの武器。
そして宝石がちりばめられたネックレス。
「マスター、良かったですね。宝の山です」
「…………」
「マスタ-? 以上」
「宝の……山? これが……宝、ですって……?」
はは。
ふふ……。
「ふ、」
「ふ?」
「ふざっけるなぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
私は思わずそう叫んでしまった!
いやもうなーーーーーーんなのこれ!
「ふざけるな?」
「そーでしょ! なーによこの……!」
びしっ、と私はそれらを指さして言う。
「ガラクタの山はぁああああああああああああああああ!」
もう、ひっどい!
門番とかいるから、てっきりお宝が眠ってるかもーって思ったのに!
蓋を開けてみれば金だの銀だのダイヤモンドなどと!
「こんなん私、自分で錬成できるわボケぇええええええええええええ!」
「草。マスターはたしかに、錬金術で金も楽勝に作れますし、ダイヤも炭素から簡単に作れますものね」
「そうなのよ! どれもこれも、私がぱぱーっとちゃちゃーっと作れちゃうもの、ガラクタばっかりなのよ!」
「どれも一般人は普通、作れませんがね、以上」
「私は一般人じゃ無くて、れん!きん! じゅつ! し!」
ああもう! 期待して損しちゃった!
なーにが金銀財宝よ! こんなの全部作れる私からすれば、小石に等しいわ! がってむ!
「マスターが言うお宝とは何なのですか?」
「そりゃ柔らかい石でしょー、不死鳥の尾羽でしょー、あと世界樹のしずくとか」
「全部錬金術のレア素材ですね、以上」
「あったりまえでしょ、私の力じゃ作れないもの。それが錬金術師にとってはお宝なの。あとは私が作れないような魔道具かしらねー」
はーあ、なーんか拍子抜け。
私とシェルジュはその辺を歩いて回る。
「金や銀、宝石はどーでもいいから、魔道具探して」
「路銀になるので回収しても良いですか、以上?」
「だめ。そんなのより珍しい魔道具! 優先!」
はいはい、とため息をつくロボメイドとともに、私は宝の山(笑)を探す。
けれどめぼしい素材も魔道具も見当たりやしない。
なくはないんだけど、どれも自分で作れるのよねぇ。
「こりゃだめね。はずれだわ」
「この目がくらむような財宝の山を見て、はずれというのマスターだけだと思います」
「馬鹿にしてるの?」
「いえ、そんな、とんでもない」
「ほんとは馬鹿にしてるんでしょ?」
「そんな、まさか、ありえません」
「シェルジュ。命令。ほんとのこといって」
「馬鹿ですね、以上」
このロボは後でスクラップにしておこう(使命感)。
「ん? これは……」
私はガラクタの山の中から、それを見つけ出す。
シェルジュが近づいてき、小首をかしげる。
「なんですか、そのガラクタ。ただの……さびた鉄の塊?」
「ふ、ふははは! フーーーーはっはっはっは!」
「マスターが壊れた。あ、いつも通りですね.以上」
ごいん!
「痛いじゃないのよ!」
「ロボの頭を手ではたくからだと。以上」
「うっさい。それより見て! これ! ちょ~~~~~~~レアな鉱石よ!」
やったねラッキー! 今夜はステーキだ!
さっき私が見つけて、シェルジュがさびた塊とか抜かしたそれは……超レアアイテムなのだ!
「どう見てもさびた塊なのですが?」
「ばっかあんた、これは【飛翔石】じゃないのよ」
「ひしょうせき? ひこうせきではなく?」
「飛翔よ飛翔。世にも珍しい、飛行能力を持ち主に与える特別な鉱石!」
「そんな大層なアイテムがあったのですね。一見するとガラクタなのですが、以上」
「あんたの目は節穴なの? 見ればわかるじゃないのこれ!」
わからん、とばかりにロボが首をかしげているわ。
まあロボじゃわからないわよね。錬金術師だからこそわかるものってあるし。
「しかしマスター、こんなさびさびで使えるのですか」
「うーん、たしかにこのままじゃ使えないかも。表面に刻まれてる天然の術式が、さびててうまく魔力を伝導してないし」
「では、このままスクラップですか? 以上」
「まっさかー。そこは私の錬金術さんの出番ですよっと」
私は飛翔石の表面に手を置いて、錬金魔法を使う。
錬金、つまり物質を原子レベルで分解して、並び替えて、別の物質へと変える技。
さびの部分だけを錬金できれいに分解して、取り払っていけば……。
「ほいかんせーい! 飛翔石げーーーーーっと! わっはっはー! こんなレアアイテムが手に入るんだから、ガラクタの山に来たかいがあったってもんよー!」
「ガラクタねえ……以上」
ふっふーん、さてレアなアイテムは手にはいたし~?
「じゃ、本命のお宝! 柔らかい石を探してれっつらごーよ!」
「このマスターのリアクション見たら、スフィンクスは草葉の陰で泣いてるでしょうね。以上」




