61.聖女を追跡し隊
【★☆★読者の皆様へのお知らせ★☆★】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
セイを追いかけるSランク冒険者、フィライトは、フォティヤトゥヤァの王子ブロッケスと死闘を繰り広げた。
話は、数分後。
「「わっはっは!」」
二人は肩を組んで笑い合っていた。
さっきまではバチバチとバトルの火花を繰り広げていた二人が、なぜ……?
「そうか、聖女さまを追ってきたのですな!」
「ええ、聖女さまにあいたい一心で!」
……そう、二人に共通する話題がひとつだけあった。
黒髪の聖女。
ふたりは戦いのさなか、どちらもセイを好ましく思ってることを知る。
そして、争いをやめたのだ。
「黒髪の聖女さまなら、無為な争いはおやめなさいとおっしゃったでしょうしね」
「まったくだ!」
はぁ……とあきれたようにボルスがため息をつく。
ここにも聖女バカがひとり……と(聖女に対するディスではない)。
ブロッケスは簡単に、ここに至るまでの経緯を話す。
ぼろぼろ……とフィライトが涙を流しながらうなずいた。
「ダンジョンにメイド一人連れて中に入っていったなんて……!」
「王都民たちを助けるためにです! なんてすばらしいお人でしょう!」
「まったくですわ! 黒髪の聖女さまこそ、真の聖女ですわ!」
真の聖女とフィライトは言う。
天導教会に所属する聖女達は、聖なる女という名前とは裏腹に強欲だ。
自分たちの教会に所属しないものに対しては一切の慈悲をかけない。
また、治療には高額の金と、入信を請求してくる……。
だが、セイは違う。
「フィライト殿おっしゃるとおり! 無償で人を助けていくその姿! あれぞまさに、真の聖女さま……!」
「そのっとおりですわ! 黒髪の聖女さまこそが、真の聖女!」
ボルスは「真の聖女って連呼しすぎだろうるせえ……」と悪態をついた。
「んで、フィライトよ。これからどーすんだ?」
「決まってるでしょう! 追いかけて、聖女様の人助けを、お助けするのです!」
「しかしよぉ、追いかけてくんなって厳命してたんだろ?」
さきほどダフネからお姉ちゃんを助けてと頼まれた。
ブロッケスたちからの話を総合するに、セイはダンジョンにより被害を受けてる王都民たちのため、お供を連れて地下へと潜ったらしい。
だが入る途中でダフネたちは眠らされ、気づけば外にいたという。
「きっと主殿は、我らが怪我しないようにとお一人で……くっ!」
「うわわぁん! おねえーちゃーん!」
「……セイ様」
賢いエルフのゼニスすらも、セイがダンジョンに一人で(※ロボいる)もぐったことが気が気でなくなっていた。
だから、彼女たちの頭からはすっかり抜け落ちていたのだ。
セイがどうして、このダンジョンに潜ったのか……と。
己の物欲を満たすためだけに入っていったのだと……。
「このか弱き少女たちの涙を見ても、まだそんなことが言えますの!?」
フィライトには確かに聖女に会いたいという強い思いがある。
だがそれ以上に強い正義感があった。
悲しんでいる子供たちを、ほっとけないという。
ボルスはそんな恋人のまっすぐな性格を熟知している。
「ったく、わかったよ」
「よし! ということで、ここを通らせてもらいたいですわ!」
ブロッケス王子はフィライトを見て、うなずく。
「わかりました」
「いや、王子さんよ。いいのかい? 聖女様にここに人を決して入れるなって言われたんじゃなかったのか?」
できれば恋人の暴走を止めたかったので、そういう聞き方をするボルス。
だがブロッケスはこう答える。
「聖女様はこうおっしゃりたかったのです。危険だから一般人は入れぬようにと。……裏を返せば、フィライト殿ほどの手練れならば、一般人とは言いがたいです。ならば通しても問題ないかと!」
「ええー……いいんかい……」
あきれるボルスとは裏腹に、フィライトはやる気十分。
「いきますわよ!」
「……おれも行こう」
「だふねも!」「拙者も!」「……わたしも行きます」「……!」
結局、奴隷プラス冒険者たちが、セイを追うことにしたのだった。
どう見ても奴隷たちは弱そうに見えるし、なんだったらセイが危ないからと連れ出した連中だったが、セイに会いたい! という思いに共感したフィライトがついていきましょうと提案したのである。
なんともうかつな……とボルスはぶつくさいいつつも、結局は惚れた弱みで、彼女の暴走を止められなかったのである。
「ではみんなで、聖女様を追いかけましょう!」
「「「おー!」」」
「……おれたち要らねえ気がばりばりすんだけどなぁ」
かくして、セイを追いかける部隊……【聖女様を追跡し隊】が出発したわけだが……。
「なんだ、このばかでけえゴーレムは……?」
階段を下っていった先には、超巨大なゴーレム。その残骸が落ちていたのである。
知識のあるゼニスがそれを見て驚く。
「……すごい。これは、オリハルコン・ゴーレム。全身がオリハルコンでできた、SSランクのモンスターです!」
そんなすごいゴーレムが、残骸となってうち捨てられてた。
こんなこと、誰ができるというのか?
「聖女様ですわ!」「絶対そうなのです!」「主殿以外に、考えられないでござる!!!!」
追跡し隊のメンバーたちはほぼ全員がセイ信者。
なにかあり得ない事態が起きたとき、それは全部、セイのおかげだと思うのである。
「SSランクを倒すだなんて……すごいですわ!」
「ああ、そうかいそうかい。SSを倒せるほどすげえ聖女様なら、おれらの出番はいらないな。じゃ、帰ろうぜ?」
女だらけでこんな危険な場所になんて、一刻もいたくないボルスは引き上げようとするも、しかし……。
「いや! 魔神とやらがいるのでしょう? そのとき戦力が足りなくて困っていたらどうするのですの? 助けねばなりませんわ!」
「フィライトおねえちゃんの言うとおりなのです!」「主殿ぉ! 我らが微力ながらお力をお貸しいたしますぞ!」「……セイ様のためなら、この命を犠牲にしてでも……」
ああ、駄目だ……とボルスは疲れたようにつぶやく。
「こいつら全員、聖女教の信者だこりゃ……」
「ああ! みてくださいまし! ドラゴンが石化しておりますわ!」「きっと主殿が!」「おねえちゃんすっごーい!」
……もはや何のために自分たちがいるのか、わからなくなるボルスであった。




