表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】天才錬金術師は気ままに旅する〜500年後の世界で目覚めた世界最高の元宮廷錬金術師、ポーション作りで聖女さま扱いされる〜  作者: 茨木野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/215

52.やはり聖女様はすごい(定期)



 セイの後を追うSランク冒険者、フィライト一行は、リィクラ岳へとやって来ていた。


「おかしいですわね……聖女様が全く見当たりませんわ」


 川を渡るあたりまでは聖女を見かけた話を聞いた。

 しかしリィクラの山岳地帯に入ってから、彼女の足跡が途絶えたのである。


 まるで、どこぞへ消えてしまったかのようだ。


「聖女様の後を追うのも重要だがよぉ、ちゃんと仕事もしねえとな」

「わかってますわよ。リィクラ岳をねじろにしてる、盗賊団の壊滅ですわよね」


 港町の冒険者ギルドから直々に、Sランク冒険者パーティである彼らに依頼があったのだ。

 セイを探してリィクラ岳へいくついでに、路銀を稼ぐための仕事をこなそうという魂胆である。


 しかし……。


「……妙だな。盗賊の根城だというのに、敵意を感じぬぞ」

「あ? ウフコック、どういうことだ?」

「……おれは人の視線を肌で感じることができるんだ」

「スキルってやつか?」

「……いや、生まれ持っての恩恵ギフトというやつだ」


 ボルスたちは山岳地帯へと到着している。

 だがたしかに、盗賊たちが襲ってくる気配がない。


 聖騎士ウフコックの敵意を感じないという発言も気になる。

 しばらく探索していたそのときだ。


「うう……だれかぁ……たすけてくれぇ……」

「……今、人の声がしたな」

「助けに行きますわ!」


 誰よりも早くフィライトは、声のしたほうへとかけて行った。

 その様を見て、ウフコックは目を細める。


「あ? どうした?」

「……いや。彼女はいつもああなのか?」

「そーだな。思い込んだら一直線っつーか、直情径行なんだよ」

「……そうか。わかった。ありがとう」


 ウフコックとボルスも後を追う。

 そこは山岳地帯にある、洞窟の一つだ。


 そこには縄で縛り上げられた盗賊たちがいた、のだが……。


「これは、どういうことですの……? なぜみな、顔から血を……?」


 そこにいた盗賊たちは一様に捕縛されたうえ、目をつぶされていたのだ。

 フィライトがお頭らしき人物に尋問する。


「これは誰がやったのですの?」

「黒い髪の女だった。やつはおれら盗賊をとっつかまえて、縛り上げた」

「まあ! 聖女様が! しかし、その目も……?」

「……いや、これはあの女じゃねえ」


 よかった、とフィライトは安心する。

 自分が尊敬している聖女が人を傷つけるわけがない。


「では誰が?」

「金剛竜だ……前に罠を張ってつかまえ、外皮を全部はいで捨てたはずだった。だのに、生き返りやがった……そんで、おれらに報復にきたんだ!」


 セイが盗賊たちを捕縛したのち、ここに金剛竜が意趣返しに来たのである。

 竜の放った金剛石のブレスは、盗賊たちの視界だけを奪って去っていったという。


「仲間の一人に魔獣の言葉がわかるやつがいるんだが、そいつが言うには【命はとらん。我を助けたのは黒髪の人間だった。彼女に感謝するのだな】ってよ」

「きっと、黒髪の聖女さまに、ちがいありませんわーーーーーーーーーーーーー!」


 フィライトはキラキラした目で宙を見やる。

 彼女の脳裏には、まだ見ぬ黒髪の聖女が大活躍する場面が再生されていた。


「わるい盗賊たちをだれに頼まれたわけでもなく倒し! さらに竜の声なき助けを求める声を聴いて、なおしてしまわれるなんてー!!!!! はぁ、さすが聖女様ですわぁ~~~~~!」

「確かに竜殺しってよくきくが、竜を癒したやつってあんま聞かないよな」

「竜にすら慈悲をかける素晴らしいお方ということですわ!」


 一方、ウフコックは盗賊たちを見下ろして言う。


「……貴様らを連行する。おとなしくついてこい」

「ああ……そうする。もう盗賊は足を洗うよ。因果応報、視力を失ったのは悪いことをした報いか……」


 と、そのときだった。


「おいお頭さんよ。この箱に入ったポーションは、あんたらのかい?」

「ポーション? いや、そんなもんなかったが……?」


 ボルスは部屋に隅にあった木の箱を検めると、中にはポーション瓶が入ってた。


「これは! まさか!」


 フィライトが中のポーション瓶を手に取って、じっと見つめる。

 我が意を得たりとばかりに、フィライトはポーションをお頭にぶかっけた。


「ぺぺっ、なにすんだ……って! 目が! 目が見える!!!!!」


 金剛竜によってつぶされていた目が、完全に修復していた。

 まるで、時を戻したかのような素晴らしい効能。


 フィライト、そしてボルスにはこの現象に見覚えがあった。

 人外魔境の地で、聖女が起こした奇跡に似ていたからだ。


「黒髪の聖女さまが、残してくれたのですわ!」

「!? あの嬢ちゃんが……どうして……?」


 お頭は首をかしげる。

 自分たちは彼女の命を狙ったことがある。


 助けられるいわれはなかった。

 だがフィライトは、すべてを理解したような得心顔となってうなずく。


「これが、黒髪の聖女様なのです! 悪人だろうと救いの手を差し伸べるおかたなのです!」

「そ、そんな……おれらは、嬢ちゃんを殺そうとしたのに、おれらを救うためにこの薬を……うぉおおおお!」


 盗賊団のお頭、および、盗賊たちが涙を流す。

 セイの慈悲深さに感謝している……のだが。


 事実は、違う。別にセイは彼らに慈悲を加える気などなかった。

 彼女が残したのは回復ポーション。


 盗賊たちを縛り上げて放置したものの、街に送り届けることはしなかった。めんどうだったから。

 いずれほっとけば人が来てこいつらを連行するだろうと。


 だが人に見つかる前に、脱水で死なれても困る。

 ということでポーションをいくつかおいていったのだ。


 ……決して悪人に慈悲を残したのではなく、単にほっといて死なれても寝覚めが悪いから。ただ、それだけだった。


「聖女様! おれぁ改心しました! 罪を償って、この受けた優しさと恩を、ほかに還元していきたいとおもいますぅ!」


 だがお頭を含めた盗賊たちは、セイの慈悲に涙を流し、改心を果たした。

 その姿を見て、うんうん、とフィライトとウフコックがうなずく。


「やはりセイ様は素晴らしいお方です!」

「……さすが黒髪の聖女。悪をただ打ち砕くのではなく、改心させ、やり直すチャンスを与えるなんて」


 天導の聖騎士であるウフコックは、おのれの所属する女神よりも、よっぽどセイはすごいのではないか。

 彼女はひそかに、そう思い始めていた。


 だがボルスだけは、「うーん、こいつら飢え死にされても困るから、ポーション置いてっただけじゃねえかなぁ?」と真理をついていたのだが。


「「そんなわけないだろう!」」


 と聖女信者2名によって、意見を封殺された。

 ボルスは、面倒なのが二人になって、より面倒になったなぁと思うのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おのれの所属する女神よりも …いえ、その人こそ貴女が信仰してる女神様ですね。
縛られた盗賊にはポーションが飲めないから、やっぱり飢え死にチャンスだったよ。 主人公うっかりさん。
[一言] 又、痛女に同志ができたね!本人の知らぬ間に 一大勢力に成るかもよ? 雪達磨の法則で!一欠け落とした雪が雪を巻き込み 大雪崩に成って大陸全土を巻き込むムーブメントに 成って本人に襲いかかる! …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ