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【完結】天才錬金術師は気ままに旅する〜500年後の世界で目覚めた世界最高の元宮廷錬金術師、ポーション作りで聖女さま扱いされる〜  作者: 茨木野


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48.水精霊からの救援要請



 リィクラ岳で盗賊に襲われたあと。


「ただいまー」

「「「おかえりなさーい!」」」


 奴隷ちゃんズの待つ馬車へと戻ってきた私とロボメイドのシェルジュ。

 真っ先に飛びついてきたのは、ラビ族のダフネちゃんだ。


「おっとっと」

「だいじょうぶなのです? 怪我してないのです?」


 ぺちょんと耳を伏せて、不安げな表情でダフネちゃんが尋ねてくる。

 なんとまあけなげじゃのぉ。


「問題なっしんぐ。盗賊どもは全員ボコってやったわ」

「わー! わー! すごいのですー!」


 お頭をボコったあと、残りの盗賊達も面倒だからやっといた。

 まあ小出しで襲われるよりは、一気にまとめて掃除した方がいいかなってね。


「なー、ダフネ。拙者言ったであろう? 主殿は強いから怪我などしないって」

「でもでもっ。おねえちゃんは優しくてか弱い女の子なのです。やられちゃうかもって……」


 まあまあなんと優しい子でしょうか。

 ダフネちゃんのふわふわの髪の毛をわしゃわしゃする私。

 

「マスターは嬉々として盗賊達をボコボコにしておりました。以上」

「しゃーらっぷロボット。ま、何はともあれなんともなかったから。これで先へ進めるわね」


 と、そのときだった。


「ぐわぐわっ、がーがー!」


 この荷台を引いてる地竜のちーちゃんが、何か騒がしくしてる。

 ぴくんっ、とダフネちゃんのうさ耳が揺れる。


「ダフネちゃん、ちーちゃんはなんて?」

「えと……【せーれーに囲まれてるわ!!】なのです」


 ダフネちゃんは動物やモンスターの言葉がわかるのだ。

 しかしふむ……精霊に囲まれてるか。


「私が行ってくるから、みんなは待機で」

「……セイ様。危険ではありませんか?」

「ま、問題ないでしょ。あちらさんがやる気なら、もうとっくに攻撃されてるでしょうし」


 私が荷台から降りると、ぞろぞろと奴隷ちゃんズもまた降りてきた。


「おいおいどうしたのあなたたち?」

「主殿の身を守るのが奴隷の役目!」

「……セイ様に何かあったら困ります」

「だふねも、まもるのですー!」


 みんな私のこと心配してくれてるみたいだわ。

 なんて優しい子たちなのかしら。


「マスター、ワタシは中で休んでていいですね? 以上」

「あんたは少しは私の身を案じなさいよ……」

「盗賊団を壊滅させておいて、今更。以上」


 ま、いいけどね……。

 私は奴隷ちゃんズとともに荷台を降りて、ちーちゃんのそばにいく。


 そこには何人もの水の精霊たちがいた。 透明なボディの、裸の女の子って感じ。

「こんにちは。どうしたの?」


 すぅ……と水の精霊がひとり、こちらに近づいてくる。

 

「ぐわぐわ、がー!」

「えとえと、【さっきはありがとう、って言ってる】のです」


 なるほど……ちーちゃんには精霊の言葉がわかるのね。

 で、ちーちゃんの言葉をダフネちゃんが翻訳してると。


「ナイスちーちゃんダフネちゃん。そのまま続けて」


 水の精霊達の話をまとめると、こういうことらしい。


【現在、水の精霊達の間で伝染病が流行っていて困ってるんです。あなたは不思議な薬を使うと聞きました。どうか、我らをお救いくださいませ】


 だってさ。


「伝染病ねえ」


 まあ治す義理があるかって言われると、ない。

 私はいつも言ってるけど聖女ではなく錬金術師だから。


「治してもいいけど、その代わりこの雨とめてくれる?」

「えとえと、【わかった。雨を降らせている女王ウンディーネに掛け合ってみる】です」


 ま、それなら私たちに利があるしね。

 しゃーない、助けてやりますか。


「じゃ連れてって……っと、その前にあんたたちの体調べさせてくれない?」

「【どうして?】なのです」

「伝染病にあんたらもかかってるんでしょ? なら先に特効薬を作っときたいわ」


 のこのこ病気の人たちのとこへいって、自分たちも感染しましたーとかしゃれにならん。

 私はともかく愛しい奴隷ちゃんズを苦しますなんて論外よ。


 だから事前に病気の原因を調べておいて、感染のリスクを下げていきたいって狙いもあるのよね。



「【承知した】なのです! ……しょーちってなぁに?」

「OKってことよ。じゃ、誰でもいいから一人、私についてきて」


 名乗りを上げたのは、私がさっき盗賊のお頭から助けた、精霊の女の子だった。

 私たちは荷台へと戻る。


「もう終わったのですか、以上?」


 シェルジュのやつが肘枕をついて横になっていた。

 いい性格してるわねこのロボメイド。


「これからよ。シェルジュ、今からこの精霊の血液を採取して、病原を調べるから、簡易検査キットだして」

「かしこまりました。ですが、マスターなら回復ポーションで一発治癒可能では? 以上」

「かもだけど、精霊にしかかからない病気とかだったら、人間用のポーションじゃ治せないでしょ」


 シェルジュがうなずいて、ストレージから注射器を取り出す。


「あぅうう……」

「あらなに、ダフネちゃん?」

「針が……怖いのですぅ……」

「大丈夫大丈夫。痛くないから」


 うーん、こりゃもしかしたらあとで泣きを見るかも……。


「採血するわね。腕を出して」


 こくん、と精霊が右腕を出してくる。


「……てか、精霊に実体ってあるのかしら。血管の位置も……ロボメイド。出番だぞ」

「はいはい。ロボ使いのあらい主人で困ります。以上」


 こいつあとで自分の出番が結構あるだろうと、中でエネルギーを温存してたな。

 ロボの動力源は私の魔力。

 動いたり機能を使ったりすると魔力が減る。


 だからこのときのために、余計なエネルギーを使わなかったと。

 ったく、素直じゃないロボだ。誰に似たんだか。


 ロボに精霊ちゃんの体の構造を調べさせる。

 血管の位置を特定させ、私は採血。


 その後、スライドガラスに、一滴血液を垂らして、血液塗抹標本を作った。


「シェルジュ、はいこれ。拡大表示よろしく」

「……セイ様。何をしてるのですか?」

「精霊ちゃんの体から取った血液を塗抹……ええと、拡大して中に病気の原因がいないかを調べるの。このロボには顕微鏡機能がついてるんだ」

 

 腕にスリットが現れ、ロボはそこにスライドガラスを突っ込む。

 拡大図を光魔法を使って、壁に表示した。


「主殿、この赤いつぶつぶはなんでござるか?」

「赤血球よ」

「せっけっきゅー……?」

「体に酸素を……あー……あんま気にしないで」


 説明するのって作業しながらだとダルいわね。


「うむ! 気にしないでおくのでござる!」

「ダフネも黙って待ってるのです!」


 二人が口を手で押さえる。あら物わかりのいい子たち。

 血中成分を調べていくと、やがて原因らしき微生物を発見。


「見たことない細菌ね……。精霊に特有の種なのは確定か。人間用の抗生剤が効くかしら? いや少し手を加えれば……」


 私は採取した血液サンプルを、ポーション瓶の中にいれる。

 シェルジュに薬草を出させて、それらを複数あわせて調剤。


「完成。精霊の抗生剤……ええと、【精霊剤】」

「……もうできたのですか?」

「うん、精霊のお薬よ。あとはこれを体内に投与するだけ」

「「おおー! すっごーい!」」


 精霊ちゃんに私が近づく。

 びくびく、と怯えていた。


「大丈夫よ。ちょっとチクってするけど、すぐに楽になるわ」


 精霊ちゃんは私の目を見て、こくんとうなずいてくれた。

 信じてくれたのね。ありがたい。


 私は血管に薬を投与して、しばらく待つ。

 すると……。


「えとえと、【すごい、体のだるさが取れました! とても元気になりました!】なのです!」


 精霊ちゃんがぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 ダフネちゃんもまたぴょんぴょん飛び跳ねていた。


「わーーい! すごいすごい! おねえちゃんが病気を治しちゃったのですー! よかったねー!」


 精霊ちゃんの手を取って、ふたりでぴょんぴょんするダフネちゃん。

 あ~心がぴょんぴょんするんじゃ~。


「……すごいです。セイ様。精霊の病気を治すなんて、前代未聞です」

「あらそう?」

「……ええっ。やはりすごいです!」


 さてさて。

 これでお薬は完成した。


「じゃみんなにお注射しますね」

「「「え゛……」」」

「あらなに?」

「「「お注射……」」」


 ぶるぶる……と奴隷ちゃんズが怯えている。

 ははん、もしかしてみんな注射が苦手なのかしら。


「そ、その針を……さっきの精霊の子のように、ぶすっと突き刺すのでござるか?」

「ししし、死んじゃうのですぅ~」

「……お、落ち着いて二人とも。だ、大丈夫。医療行為だから、死にはしないから、たぶん……ええ……」


 三人が抱き合って震えていた。 

 冷静なゼニスちゃんも怯えてるのがなんか笑う。


「はいはい、大丈夫だから。並んで並んで」

 

 ぶすっ、と三人にお注射完了。

 まったく、注射が嫌いなんて子供ね~。

「さ出発よー」

「お待ちくださいマスター。以上」


 がしっ、とロボが私の腕をつかむ。

 ……ちっ!


「あ、あらなにかしら~?」

「まだマスターのお注射がすんでおりません。以上」

「わ、私は……いいんじゃないかなぁ? ほら! 私強いしぃ~?」


 あれ? と奴隷ちゃんズが首をかしげる。


「おねえちゃん……」「主殿もまさか……」「……お注射、苦手なんですか?」


 うう、バレてもうた!

 ちくしょう! そうだよ、注射苦手だよ!


「聖なるパワーがあるから私大丈夫だから……! え、なに奴隷ちゃんたち、みんなして私を取り押さえて……うわ! や、やめろー! 私はお注射がだいっきらいぎゃーーーーーーーーーー!」


 シェルジュにぶすっとやられました……。

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― 新着の感想 ―
必要は発明の父。無痛針とか針無し注射とか発明しとかないからこうなる。というか、注射にする必要あるの?
この世界の精霊は完全に受肉して血管とかあるんですねぇ…
[良い点] 細い針も作っときましょう! まあきっとそういう問題ではないのでしょうけれど…
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