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【完結】天才錬金術師は気ままに旅する〜500年後の世界で目覚めた世界最高の元宮廷錬金術師、ポーション作りで聖女さま扱いされる〜  作者: 茨木野


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47.盗賊をぶっ倒す



 うざい聖騎士のもとを離れるため、海を渡ろうとした私だったが、大雨のせいで船が出ない状況。

 この雨を降らせているのは水の大精霊ウンディーネらしい。


 私は雨を止めてくれと説得(物理)するため、精霊の住まうリィクラ岳へと向かった。


「……セイ様。お気を付けください。リィクラ岳は盗賊の住処とされておりますので」

「忠告ありがとーゼニスちゃん。お礼に頭をよしよししてあげましょう、なーんて子供っぽい……」


 すっ、とゼニスちゃんが素直に頭を差し出してきた。

 あれこの子結構クールで大人っぽかったような。ま、いいけどさ。


「むむ! だふねも頭なでなでがほしーのです!」

「お、そうかい。おいでおいで」

「でもでも、何もしてないのになでなではよーきゅーできないのです! むむむー! はっ! 人か近くに居るのです! 武器持ってるです!」

「おおう、ダフネちゃんなーいす。ご褒美なでなでしましょう」

「わーい!」


 私は奴隷ちゃんズの頭をよしよしなでなでしながら、御者をやってくれてるトーカちゃんとロボメイドのシェルジュに言う。


「この先に多分盗賊いるわ。トーカちゃんは敵を無力化して。シェルジュはここに残って遠距離からのサポート兼、護衛。ま、念のためね」

「了解でござる!」「了解。以上」


 ラビ族ダフネちゃんのスーパーイヤーは地獄耳、じゃなくて高感度レーダーのようなものだ。

 なにせレーダー持ちのロボメイド以上に広範囲で、敵の音を拾えるんだから。


「うちの子はすごい子だ。おーよしよし」

「えへー♡」

「……外は大丈夫でしょうか。トーカひとりで」

「だいじょーぶっしょ。銃声しないから、多分トーカちゃんひとりでなんとかなってるのね」


 竜車を止めてからしばらくして、トーカちゃんが戻ってきた。


「ボコってきたでござる!」

「おーけーおーけー。ご苦労様。幌の中で休んでちょうだい。シェルジュ、行くわよついてきて」


 雨外套レイン・コートを身につけ私は外に出る。

 うひー、すごい雨……。


「ん?」

「わくわくでござる」


 トーカちゃんがキラキラした目で私を見てきた。

 びったんびったん、とお尻から伸びてる尻尾が揺れている。


 ああ……褒めて欲しいのね。

 なでなで。


「がんばったがんばった」

「えへへ♡ わーい! ダフネー! 拙者も褒めてもらったでござるー!」

「わー! ほめほめ仲間だね!」


 うちの奴隷ちゃんズは仲がいいですなぁ。

 私はシェルジュを連れて、トーカちゃんが無力化した盗賊たちの元へ行く。


 少し離れたところに、ロープで捕縛された盗賊たちがいた。

 結構数は居る、15人位かしら?


「こんにちは。私はさっきのきゃわいい奴隷ちゃんの主よ」

「ちっ。くそ……あんな強い奴隷連れやがって!」


 一人だけ私には向かってきた盗賊が言う。

 ほかの連中が黙ってるから、こいつが現場指揮官かしらね?


「戦力を見誤ったわね。さて……と。私はこれから安全にリィクラ岳を通り抜けたいの。私たちを狙わないって約束してくれる? できればアジトに戻ってそれを周知徹底してもらいたいのよね」


 ゼニスちゃん情報だとこの辺の山岳地帯には、盗賊たちがうようよ居るらしい。

 その都度邪魔されたんじゃ面倒この上ない。 


 そこでいったんこいつらを捕まえておど……説得し、私たち襲わせないよう約束させる。

 って作戦。


 別に盗賊全員をとっちめてやんよ! みたいな気概はないわ。

 私は正義の味方じゃあないし、仲間が安全に旅できればノー問題なわけよ。


「女のくせに偉そうに……」


 ちゃき、とシェルジュが銃口を現場指揮官に向ける。

 ちょいちょい、このロボメイド沸点低すぎでしょ。


「マスター。発砲許可を」

「せんわ……。ったく、なに撃ち殺そうとしてるのよ」

「マスターをなじっていいのはメイドであるワタシだけです、以上」

「んなこと許したことないてーの。まったく」


 私はしゃがみ込んで、指揮官に顔を合わせて言う。


「あんたたちをぶっ殺そうと思えばいつでもできたの。それでも生きてる意味をよーく加味してましょうね」

「ぐ、く、くくく……ば、ばか女が。おれは単なる現場の指揮官にすぎねえ。お頭がきたらてめらなんて皆殺しだ!」


 あら、強がってまあ……。

 お頭ねえ。やっぱりボスは別にいたのか。めんどうだなー。


「マスター、これからどうしますか? 以上」

「ちょい待つ。もう少しすれば、仲間が帰ってこないからって、向こうから顔出すでしょ」


 と、そのときだ。

 どんっ、とシェルジュが私を突き飛ばす。


 さっきまで私が居た場所に、大量の水が降り注ぐ。

 水圧に押されてシェルジュが地面に押しつけられる。


「ちぃ、勘のいい雌がいるじゃあねえか」

「お頭ぁ……!」


 いかにも悪そうな男が私に近づいてくる。 

 シェルジュは今なお、謎の水によって頭から押さえ込まれている。


 ……まったく、あのロボめ。

 最近割と反抗するようになってきたと思ったら、急に従者らしいことしてくるんだから。


「この水、あんたがやったの? 魔法を使えるほど、頭良さそうに見えないんだけど?」

「言ってくれるじゃねえか嬢ちゃん。ご名答、おれさまの力じゃあねえ。こいつの仕業よ」


 じゃら、と盗賊のお頭が右手に持っていたものを持ち上げる。

 それは鎖であった。その先には……。


「精霊……奴隷の首輪?」

「ご名答。この水の精霊を捕まえて、おれさまの奴隷にしてるのさ!」


 お頭の隣にはふよふよと浮いてる、水の体を持つ女の子がいた。

 水の精霊は魔道具、奴隷の首輪によって捕まり、無理矢理言うことを聞かされてるのね。


 ……悪趣味なやつら。

 

「おら、あのメイド女を窒息させろ。できんだろ? あ?」


 水の精霊ちゃんは嫌そうに首を振る。 

 人を傷つけたくないのね。優しい子だわ。


「命令を聞きやがれ!」


 びくん! と精霊ちゃんが体をこわばらせる。

 奴隷の首輪は主人に反抗すると、高圧の電流が流れる仕組みになっているのだ。


 私は魔道具にも精通してるので、あれのことはよーく知ってる。

 ええ、よーくね……。


 あー……なんだろ、ちょーむかつくわ。

 人を無理矢理従わせて、働かせるってのが、昔の私を思い出してぶち切れそう。


「うん、許せないわね」


 私は懐に手を入れて、目当てのものを手に取る。


「おっと嬢ちゃん動くんじゃあねえぞ。そこから一歩でも動けばメイドさんは窒息し……おいおいおい!」


 私はスタスタとお頭に近づいていく。

 お頭は精霊ちゃんに命令して、ロボメイドの顔の周りに水を集める。


「おい近づくんじゃねえ! 死ぬぞこいつが!」

「死なないわよ。その子。息しなくても生きてけるから」

「ぼぼぼぼーびべぶ、びびょぶ」


 ロボだからね。呼吸しなくてもいいの。

 私はお頭に固定グルーポーションを投げつける。


 瓶がぶつかると中から固定化の液体がビシャッと出る。


「んだこりゃ! う、うごけねえ!」

「そこでおとなしくしてなさい。さて……精霊ちゃん。もう大丈夫よ」


 私は精霊ちゃんの首輪に、また別の液体をかける。


「は! 何しようとしてるのかしらねえけどよ、奴隷の首輪は無理矢理はずそうとすれば……」

「首がぼーんって吹っ飛ぶんでしょ」

「な、なんでてめえ知ってるんだ……?」

「そんなの、錬金術師だからに決まってるでしょ」


 ポーション作成だけでなく、魔道具の作成も私たちの仕事だからね。

 よーく知ってるわ、この首輪の仕組みも。


 解除の仕組みも、ね。

 私はポーションを作るときの溶媒液を取り出して、ちょろちょろと首輪にかける。


 すると首輪はあっさり溶けて落ち、精霊ちゃんが自由になる。


「これでもう自由よ。どこにでも行きなさい」


 精霊ちゃんは何度も何度も私に頭を下げた後、どこかへと消えていく。


「し、信じられねえ……奴隷の首輪を解除だと? そんな不可能やってのけるなんて……」

「あら、不可能でもないわよ。構造を知ってりゃ割と簡単にね……。さて……」


 私はにっこりと笑う。


「抵抗の意思あり、と見なしていいわね? シェルジュ?」

「マスターに同意いたします。以上」


 私はポーション瓶を持ってにやりと笑い、シェルジュは銃を両手にもって構える。


「お、お、お助けええ……!」

「「ゆるすか、馬鹿」」


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― 新着の感想 ―
トーカさんはうっかりさんだなぁ。 縛り上げる時に、精霊付きの鎖を手に持ってるのに気づかないなんて。 萌えポイントか。
世界観的に、「女」への差別意識が強いことに違和感を覚える。sランク冒険者や、聖女等、ちゃんと女性が力を持っているような世界なのに、主人公達もそのことについては罵られたような反応を返さないのが疑問。
[一言] こう言う馬鹿はセイ謹製の 男の娘化ポーションの実験台にして 二成りにして妊婦さんにする父親は手下の男の 誰か?言う事聞かないと一生其の儘よ?! オカマに成って反省しなさいと脅す!
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