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【完結】天才錬金術師は気ままに旅する〜500年後の世界で目覚めた世界最高の元宮廷錬金術師、ポーション作りで聖女さま扱いされる〜  作者: 茨木野


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40.聖王、爆誕



 弟弟子を説得(物理)した!


「すみませんでした……」


 半壊したエルフ王の城にて。

 サザーランドが涙を流しながら土下座している。


 人工炎精霊スピリッツ・ファイアによってサザーランドは、チリも残さず消し飛んだ。

 その後私が蘇生ポーションを使って、元通りにしたけどね。


「相変わらずセイ先輩やべえ……消し炭から人間を復活させるなんて、人間の所業じゃないだろ……」

「なにか、言った?」

「ひぃいいい! なんでもないですごめんなさいすみませんでしたぁああ!」


 サザーランドが頭をこすりつけて謝罪する。

 まったく、やれやれだわ。


「今度また師匠の術を悪用したら、次は蘇生しないからね」

「それはもちろん! 神に、いや、セイ先輩に誓って!」

「わかったわ。あんたの言葉信じてあげる」

「はは~! ありがたきしあわせ~!」


 なにこれ? まあいいわ。

 次また悪いうわさを聞いたらほんとに許さない。


 ……甘いかしらね、処罰が。でもこいつも昔はいい子だったのよ。

 ちょっと調子に乗りやすい子だったけどね。


 なんだかんだ言って、同門の弟子だから、殺すなんて物騒なことはできなかった。

 まあ次は殺すけどね(暗黒微笑)。


「セイ様!」「おねえちゃん!」「主殿ぉ!」


 奴隷ちゃんズがほかのエルフさんたちを連れて、壊れた王城へと駆けつけてくる。


「みんな心配かけてごめんね。大丈夫、私はケガひとつしてないわ」

「よかったのですー!」「主殿が御無事でなにより!」


 奴隷ちゃんズが私にぎゅーっと抱き着いてくる。

 大人びたゼニスちゃんもくっついていた。あらやだかわいい。


 後ろから何食わぬ顔で、ロボメイドのシェルジュが立っていた。


「あんたは心配しなかったの?」

「全く。むしろ敵に同情しておりました。以上」

「ひどいわ。敵が予想以上に強かったら死んでたかもしれないのに」

「魔王か邪神でも復活しない限り、ポーションを持ったセイ様が負けるわけがありません。以上」


 そうだ、とサザーランドが顔を上げて訪ねてくる。


「セイ先輩、モンスターパレードに巻き込まれたらしいですけど、セイ先輩なら全滅させられたんじゃないですか? 無駄に強いですし」

「あ? 無駄に?」

「ひぃい! すみませんすみません!」


 まあ、確かに当然の疑問かもしれない。

 500年前、私は王都を襲ったモンスターの大軍を相手に、戦うんじゃなくて身を隠すを選択した。


「私の強さって、ポーション依存なのよ。魔法ポーションがそろってれば、まあ負けなかったとは思うけど。あのときは、手持ちのポーションが足りなかったからね」


 今回は師匠の工房で補給したからね。

 人工精霊を作り出せた。


 けど500年前のあの日は、突然モンスターが襲ってきたこと、そして連日の激務で家に帰れず、魔法ポーションを作る素材を切らしていたこと。


 それらの要因が重なった結果、私は戦うんじゃなくて、仮死状態になってやり過ごすことになったわけだ。


まあもう補給はすませたから、誰にも負ける気はしないけどね。


「聖女さま」

「あなたはたしか、ロビンさん?」

「はい。聖女様……あなた様が森の王を成敗してくださったのですね」

「ええ、もう悪いことしないと思うから、許してあげて」


 奴隷ちゃんズと一緒に、牢屋に囚われていたエルフさんのひとりだ。

 ロビンさんはスッ、と私の前でひざまずく。ほ?


「感謝いたします、救国の聖女様。あなた様のおかげで、この国は救われました」


 ロビンさん以外のエルフさんたちも、つぎつぎにひざまずいていく。

 口々に「ありがとうございます!」「聖女様ありがとう!」「われらをお救いになられた素晴らしい聖女様!」とほめてくる。


「ちょと大げさじゃない……?」

「いえ、我らは長い年月、森の王による支配に苦しんでいました。何人もの勇敢な若者が挑み、そしてやつには勝てず、牢屋に入れられ悔しい思いをしておりました……」


 なるほど、ロビンさんを含めたエルフさんたちは、森の王に逆らったからつかまってたのね。


「聖女様、どうか哀れなる我らの頼みをお聞き願いませんでしょうか」

「あー、まあ、いいわよ。なに?」


 たぶん瘴気関連のことよね。

 こないだのララちゃんの村以外の地域では、まだまだ瘴気による大気・土壌汚染がひどいみたいだし。


 まーあまり長居したくないけど、乗り掛かった舟だし、浄化を手伝ってあげるか。

 私の可愛いゼニスちゃんの故郷だしね。


「聖女様。どうか、エルフ国アネモスギーヴの、新しい王になっていただけないかと」

「はいはいいいよ……って、ん? んんぅううううううううううう!?」


 い、今なんて?

 新しい……王?


 いや、王なんて勘弁なんですけど!

 そんな面倒なこと引き受けたくないわ!


「聞いたか皆の者! ここに、新たなるエルフの女王さまが、誕生なさったぞ!」

「「「うぉおおおおお! 女王陛下ぁあああああああああ!」」」


 ええー……! な、なんか承認されたことになってる!?


「いや、あの……はいはいってゆーのはね、瘴気の浄化のことであって、女王を引き受ける気は全くないんだけど……」

「聖女様が女王様になられた、つまり! 今日からこのお方を聖王さまと及びしよう!」

「「「聖王さまぁああああああああああ!」」」


 ロビンさんもエルフさんたちも全く聞いてくれない……!

 奴隷ちゃんズは後ろで腕を組んで、うんうんとうなずいてる。


「おねえちゃんはやっぱりすごいのですー!」

「主殿のすごさを考えれば、女王になられるのもうなずけるでござるな!」

「……確かにセイ様がいれば、この国は安泰でしょう」


 するとシェルジュが近づいてきて、ぽん、と肩をたたく。


「ドンマイ。以上」

「もう! なんでこうなるのよ……!」

「ヒント。普段の行い。以上」


 こうして何だか知らないけど、聖王になってしまったのだった。

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― 新着の感想 ―
…チリも残さずに吹き飛んだのに?燃えカスから蘇生したの? アレか目に見えないような空間中の微粒子から蘇生したのか。凄い。 薬効と言うより、あくまで魔法的な効果なんやな、ポーション。
[気になる点] >なんだかんだ言って、同門の弟子だから、殺すなんて物騒なことはできなかった。 蘇生させただけで殺してるよね?
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