表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】天才錬金術師は気ままに旅する〜500年後の世界で目覚めた世界最高の元宮廷錬金術師、ポーション作りで聖女さま扱いされる〜  作者: 茨木野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/215

26.エルフ国アネモスギーヴ



 ついに荒野を抜けて、エルフ国アネモスギーヴにやってきた私たち一行。

 道中まあいろいろあったけど、よーやく到着かぁ……。


「…………」


 エルフの奴隷、ゼニスちゃんがそわそわとしている。元々彼女はこの国の王女様だったのよね。

 クーデターが起きて、家族は皆散り散りになってしまったらしい。


「やっぱり来ない方が良かった、ここ?」

「……い、いえ! そんなことありません。ただ、懐かしいなと思って」

「いつぶりなの?」

「……わかりません。ただ、もう大分前になる……と思います」


 そういえばゼニスちゃんはエルフだった。人間とは時間感覚が違うって聞くわね。長命な種族故に。

 だから何年前とか、いちいち年月で覚えていない、感覚でしかわからないのだろう。


「家族に会えるといいわね」

「……はい。ただ、もう居ない可能性のほうが……」


 まあ、奴隷として売りに出されたとなると、確かにエルフ国にとどまってない可能性はあるかもしれない。

 

「ま、そのときはそのときよ!」

「セイ様……」

「探す前からだめだーとか言っちゃったら、だめよ。まあ何も見つかってないし、見つからなかったわけじゃないんだからさ。だめだったらそんとき考えましょ」


 ゼニスちゃんは頭がいい分、いろんなことを考えてしまう。余計なことまで考えちゃうのね。

 でもそんなふうに、悪いことを延々考えても疲れるだけだわ。適度に、てきとーに。だめならそのとき考える。


「そんな行き当たりばったりでいいのよ、人生なんて。合否も出来不出来もないんだしね」

「……はい、ありがとうございます。セイ様、励ましてくださって」

「仲間が落ち込んでたら励ます。そんなの当たり前じゃないの」


 まあ実際、私が社畜時代だったとき、落ち込んでても誰も声かけてくれなかったからさ。

 同じ風に悩んでいる人をほっとけないのよね……。


「さて! じゃあアネモスギーヴに来たわけだけど、まずはどこを目指す?」


「……王都を目指すのがいいかと。人も多いですし」


「んじゃ王都へゴーね。と、その前に、どこかに水浴びできるとこないかしらね」


 長く荒野を歩いたから、水浴びしたい気分なのよね。


「マスター。体の洗浄は【浄化ポーション】で行っていたので、体表に老廃物はありません。以上」


「そりゃ体はきれいだろうけどね、こう……入りたいでしょ。水。暑かったし!」


 本当のところを言うならお風呂に入りたいところだけども。

 ゼニスちゃん曰く、お風呂のあるような町までは結構距離があるそうだ。


 ならせめて水浴びくらいはね?

 荷台の上で、ラビ族のダフネちゃんが耳をピクピクと動かす。


「おねえちゃん! 水の音がするのです!」

「でかした! よし、トーカちゃん、そこへゴーよ!」

「心得たでござるー!」


 ダフネちゃんは耳がいいので、水源を音で見つけだしたのね。いやぁ、さすがだわー……。

 って思っていたのだけど。


「わー……なにこの毒沼」


 森の中に大きな湖があった。

 が、どう見ても湖のなかには、粘液がたっぷたぷに満ちてるのよねぇ。


「……おかしいです。沼なんてこのあたりにはなかったはず」

「これじゃ水浴びできないのですぅ~……」

「ダフネちゃん、諦めちゃだめよ。そんなときこそ、【浄化ポーション】の出番じゃないの!」


 浄化ポーションは、簡単な毒や呪いを解くだけでなく、体表の老廃物を洗い流す効果を持つ。なかなか便利なポーションだ。

 これで下級ポーションなんだから驚きよね。


 私はポーション瓶の蓋を開けて、毒沼にとくとくと注ぐ。

 紫の粘液が、みるみるうちに透明な湖へと変わっていった。


「わぁ! きれいなお水なのです! おねえちゃんすごいのですー!」

「いやはやどうも。さ、水浴びよ……!」


 私たちは薄着になって、湖で体を洗い流す。

 トーカちゃんはカエルのように泳いでいた。ダフネちゃんはぱしゃぱしゃ、とゼニスちゃんと水の掛け合いをしてる。


 私とシェルジュは湖畔に腰掛けて癒やされていた。水で体を洗い流して、すっきりそうかい。

 ふぁーあ、眠いですな……。


 と、そのときだ。

 がさっ! と森の茂みが大きく動いたのだ。


 シェルジュが間髪入れずに銃を抜いて発砲しようとする。

 だが私はロボメイドの銃をつかんで、銃口を上に向かせる。


「なぜ邪魔をするのですか? 以上」

「敵ならダフネちゃんが気づいてるから」


 遊んでいるとはいえ、彼女のうさ耳が敵の接近をとらえられないとは思えない。

 私は茂みの方へ行く。するとそこには、エルフの子供がぐったりと、その場に倒れていた。

 木の桶が近くに転がっている。どうやら水をくみに来ていたらしい。


 あ、あの毒沼を……飲むつもりだったのかしらこの子?

 とんでもないわね……。


「っと、そんなことより。シェルジュ、ポーションを」


 下級ポーションの管理もシェルジュには任せている。

 錬金工房(空間魔法の一つ)のなかにポーション入れとくよりは、シェルジュに持たせてる方がいいのよね。前者は内部時間を加速させてる関係で、すぐ劣化しちゃうし。


 シェルジュからポーション瓶を受け取って、子供エルフに飲ませる。するとみるみるうちに顔色が良くなっていった。


「これでよしっと。あとは起きるまで待ちましょうか」

「また寄り道ですか、以上」

「いいじゃないの。寄り道。旅してるんだから。寄り道もまた旅の醍醐味よ」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ