24.村の補強と再出発
けが人の治療、そして村の修復を終えた。
さてそろそろ出てこうかなーって思ってたんだけど、どーにもまだまだ問題がありそうだ。
村長さんが私の前にやってきて、膝をついて、頭を下げる。
「聖女様、どうぞ我らの願いを聞いてくださいませ」
「はいはいなんですか、あと聖女じゃなくて以下略」
もう面倒なので訂正しない。そのうちに本当の聖女様に怒られそう。
や、別に私聖女を名乗ってる訳じゃあないんだけどさ。
「この村は見ての通り貧相な村でございます。この人外魔境の魔物の脅威に常におびえるしかなくて……」
「ん? というか今まではどうしてたの?」
「いにしえの勇者様が結界を張ってくださっておったのです。しかし年月とともに結界が薄くなっていき、つい先日、結界が壊れてしまったのでございます」
なるほど……。ここ、結構魔物多いし、どうやって村人生きてたのかなーって思ってたけど、そのいにしえの勇者とやらが結界を張ってたのね。
で、結界が壊れて、魔物が入ってきて、あの惨状って訳か。
「どうか聖女様のお力で、結界を張り直していただけないでしょうか」
「うーん、結界は無理かなぁ」
「そんな……!」
「でも魔物はよってこないふうにはできると思うけど」
「おお! 是非お願いします!」
ということで、村に魔除けのポーションをまくことにした。
トーカちゃんとシェルジュ、二手に分かれて、魔除けをポーションを村を一周する感じでまいていく。
「……セイ様。魔除けのポーションの効果はどの程度あるのでしょうか?」
エルフのゼニスちゃんが私に至極当然の疑問を聞いてくる。
「ま、ある程度は持つでしょう」
「……ある程度」
「正確な数字はわからないけど、ま、500年くらいはへーきでしょ」
なにせ、500年前、王都を襲ってきた魔物の群れを私の魔除けのポーションは、追い払ってくれたんだから。
私が仮死状態になったあとも、500年間、少なくとも効果は持続していただろう。
でなきゃ、私はとっくに魔物の餌になっていたはずだからね。
「……あ、相変わらずすさまじいですね、セイ様のお作りになられるポーションは。さすがです」
「ありがと~」
わしゃわしゃ、と私はゼニスちゃんの頭をなでる。
ちょっと照れつつも、私のなすがままになってるゼニスちゃん。かわよ。
ダフネちゃんがすすす、と近づいてきて、んんっと頭を突き出してくる。自分もなでて欲しいのか。かわわ。
魔除けのポーションをまき終えた二人。
「これでもう安心でござるよ! 主殿のポーションは、道中敵をまったくよせつけてなかったでござる! 効果はおすみつきでござるよ!」
「おお! なんと素晴らしい! ……ですが、あの化物はどうでしょうか」
村長さんが暗い顔をして言う。
「あの化物?」
「はい。砂蟲というおぞましいミミズの化物です。近頃になって姿を現し、村を何度も襲ってきたのですが……」
砂蟲……砂蟲……。
あ。
「あー、それなら問題ありませんよ」
「も、問題ない……とは?」
「シェルジュ。あれを」
シェルジュがうなずくと、エプロンのポケットから、砂蟲の頭部を出してくる。
モンスターの一部はポーションの材料になるから、なるべく回収するようにしてるのよね。
「お、おお! それはまさしく砂蟲! で、では……聖女様が、倒してくださったと!」
「まあね」
倒したって言うか、私たちの旅を邪魔してきたので爆破しただけなんだけども。
村長さんたち含めて、村の人たちが涙を流しながら、何度も頭を下げてくる。
「うんうん、よかったね。じゃ、長居しちゃったし、私はこれで!」
諸々の問題も片付いたし、とっととエルフの国に行きたいものね!
「お待ちくだされ!」
ま、まだ何かあるの……?
もう、めんどいなぁ。正直このままずるずる、ここでに縛られるのも嫌なのよねぇ。私はいろいろ見て回りたいわけだし。
「実は聖女様に……」
「村長さん、そして、皆さん、よくお聞きなさい」
彼らの注目が私に集まる。こほん、と咳払いをして言う。
「私たちはこれでおいとまします。後のことは自分たちでなんとかしなさい」
「あ、あの聖女様。実は……」
「いつまでも、あると思うな聖女様」
「!」
「とまあ、いつも私が通りかかるとは限らない。天の助けを待つんじゃなくて、自らの意思と力で、守りたいものをまもる。そうするべきだと私は思うんだ」
ようは自分のことは自分でしてね、いつまでも頼られても迷惑だから、という意味で言った。
だが村人たちは、まるで夢から覚めたように、はっとした表情になる。
「というわけで私はこれにて失礼。あとは強く生きるのですよ」
「「「はい! 聖女様!」」」
よし! 面倒ごと回避!
なんかまた頼まれそうだったから、これでなんとかごまかせたわよね。
奴隷ちゃんたちとともに竜車に乗って出発。
「聖女様!」「おたっしゃーでー!」「このご恩は一生忘れませんー!」
後ろで村人たちが手を振ってる。ふぅー……いやぁ、働いてしまったわー。
私は荷台でごろんとなる。
「おねえちゃん! んー!」
ダフネちゃんが抱きついてくる。おお、ちょうどいい抱き枕。
「わはは、もふもふ~」
「もふもふ~♡」
ゼニスちゃんが首をかしげながら聞いてくる。
「ところで、セイ様。あの村人たち、最後に何を言おうとしていたのでしょうか」
村長さんがしようとしてた、最後のお願いのことを指してるのだろう。
「さーね。面倒だから逃げちゃったけども、ま、後は自分たちでなんとかするっしょ!」
こうして私たちは村を後にしたのだった。




