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【完結】天才錬金術師は気ままに旅する〜500年後の世界で目覚めた世界最高の元宮廷錬金術師、ポーション作りで聖女さま扱いされる〜  作者: 茨木野


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22.立ち寄った村で神扱い



 砂蟲サンドワームを爆殺したあと、私たちは南へ向かってまっすぐ降りていく。


 ロボメイド・シェルジュにはコンパス機能も搭載されている。


 師匠が作った魔導人形ゴーレムを、そのままトレースしているから、私がつけたっていうより師匠がくっつけたのよね。

 塔を守るメイドに、なぜコンパス機能(無駄な機能)をつけたのかー……はわからない。


 まああの変人のことだ、常人には理解できない理由があるんだろう。あんま深く考えないとこー。


 さて。


「村を発見しました。立ち寄りますか? 以上」


「おー、村ね。そうね、泊めさせてもらいましょうか」


 日も傾いてるし、ちーちゃんにも疲れが見える。


 私は前職のお局BBAからパワハラを受けていた。


 だから、私は絶対に、労働者に対して無理な労働を強いることはしない!


 それがたとえ、竜車であってもだ!


「ぐわぐわ、がー!」「【姐さんまじやさしぃ~! 神!】だそうなのです!」


 動物の言葉がわかる、ラビ族のダフネちゃんが、ちーちゃんの言葉を代弁する。


 まー別に神って訳じゃないんだけど。私はただ、人からやられていやだったこと(過剰労働)を、他人にしたくないだけよ。


 ほどなくして村に到着した。しかし……。


「ううむ、これは酷いでござるな……ボロボロでござる」


「……モンスターの襲撃でも受けたのでしょうか?」


 村は、まるで嵐が来たかのように、ぐっちゃぐちゃになっていた。


 建物は壊れ、道はめくれ上がり、あちこちで怪我した村人達が寝かされている。

 これは、泊めてーって言える状況じゃあないなぁ。参ったなぁ、野宿? やーよ、屋根のあるとこで寝たいもの。


 と、なると……。


「ゼニスちゃん。トーカちゃん連れて、村長探してきてくれない? ダフネちゃん、シェルジュ、ふたりは私のお手伝い」


「「「はいっ!」」」


 奴隷ちゃん達が、うふふと笑う。

 え、なに?


「やっぱり主殿は慈悲深いかたでござるなぁ!」「怪我してるひとたち、助けるのです! お姉ちゃんやさしいのです!」「……セイ様。事情聴取はお任せください。治療にご専念なさってください」


 ゼニスちゃん達は一度離脱。

 残った私、ダフネちゃん、シェルジュは近くに居た村人の元へ。


「あのー、こんばんわ~」

「な、なんだあんた……?」


 近くに居たその村人は、右手を失っていた。


 獣か何かに食いちぎられたようだろうか。


「私は旅の者です。治療させてくださいませんか?」


「ち、治療……? あ、あんたら天導教会てんどうきょうかいのやつらか?」


 またでた。天導。


 最近工房に引きこもってたから、聞かなかったけど、こんな辺鄙なとこにも天導の名前って伝わってるのねぇ。


 まあそれは今どうでもいいんだ。


「天導は関係ないですよ。単なるよそ者です。シェルジュ」


 メイドのエプロンから、ポーション瓶を取り出して、私に手渡してくる。


 キャップを開けて、中身を掛けようとすると、村人が抵抗。


「な、何する! やめろ! そんな得体の知れないもんを……ぎゃっ!」


 びくんっ! と村人が体を一瞬こわばらせると、くたぁ……と倒れる。


 シェルジュの親指と人差し指の間に、電流がビビビと流れていた。


 こいつ電気を流して気絶させたな……。


「マスター。治療を。以上」

「まー、いっか。やりやすくなったし」


 私はポーションの栓を抜いて、とくとく……とけが人の腕にぶっかける。


 するとちぎれた右腕がみるみる再生され、元通りになった。ついでに悪いとこ全部治った。


「はいはい起きてー」

「う、うう……うぉ! う、腕が治ってる!? あ、あんたがやったのか?」


「ええ。どう、気分は?」

「あ、ああ……おかげさんで。す、すげえ……体がどっこも痛くない……!」


 するとそこへ、ぞろぞろと村人がやってくる。


「お姉ちゃん! 動けるけが人つれてきたのです!」


「お、ダフネちゃんナイスぅ~。はいはい、並んで並んでー! 治してくからねー!」


 村人達は半信半疑のようだった。

 

 だがさっき助けた村人が、自分の腕が治ったことを告げると、みんな信じてくれた。


 私、シェルジュ、ダフネちゃんは手分けしてポーションをけが人たちにぶっかけていく。


 治癒魔法と違って、ポーションは瓶あけるぶっかけるだけで、相手を治せるから便利よねー。


 治療した村人に、瓶をわたし、別のけが人にぶっかける。


 そんな風にしていけば、あっという間に、けが人はゼロになった。


「こ、これはどういうことじゃ……」


「お、あなたが村長さん?」


 ゼニスちゃんとトーカちゃん、はげたおっさんを連れてきた。


 多分村長さんね。上手く話を通してくれたみたい。さすがゼニスちゃん。


「村人は全滅しかけていたのに……けが人が誰もおらぬ! き、奇跡じゃ……」


「いやいや、こんなの奇跡でもなんでもないから」


 ただポーションぶっかけただけだからね。


 ゼニスちゃんが近づいてきて私に言う。

「……どうやらモンスターが数時間前に襲ってきたそうです。負傷者多数、死者もかなりの数がいるそうで……」


 村長から聞き出した情報を、ゼニスちゃんが私に報告する。


 ふぅむ、死人もでてるか。これだけ村がぐっちゃぐちゃなら、そりゃでるわな。

「よし、行くわよ。村長、死体ってどこにある? まだ埋めてないわよね」


 けが人の治療でいっぱいいっぱいだったし、まだ埋葬だの火葬だのはされてないだろう。


「い、一体何を……?」

「ま、数時間ならこれが使えるでしょうからね。シェルジュ。No.1を」


 メイドのポケットから、赤い液体のポーション瓶を取り出す。


 さっそく、上級ナンバーズポーションの出番か。


 私は村長に案内してもらい、死体の元へ行く……。


「うええええええええん! おかーさーん! おとーさーーーーん!」


 小さな女の子が大泣きしてる。

 そのそばに、すでに事切れて動いていない、男女の死体が転がっていた。


 この子の両親だろう。何があったかしらないけど、まあ……痛ましくて見てられないや。


 それは奴隷ちゃん、特に、ダフネちゃんもそうだったらしい。


 たっ、とダフネちゃんが駆け寄って、幼女ちゃんのことを抱きしめる。


「泣かないでなのです。お姉ちゃんが、治してくれるのです!」


「……なおしてくれる? ほんとぉ?」


「うん! だから泣かないで! ね!」


 いきなりよそ者から、こんなこと言われても困るだけだろう。


 大人の村長さんですら、困惑していた。死体をどう治療するのかって、猜疑心に満ちた瞳を私に向けてくる。


 でも、この幼女ちゃんは違う。

 ダフネちゃんにそう言われて、こくん……とうなずいた。


 多分年の頃が近かったのと、この子の持つ優しい心の光が、幼女ちゃんに届いたのだと思える。


 ダフネちゃんは幼女ちゃんの手を握ると、両親の死体から幼女ちゃんをどける。


 私はしゃがみ込んで、No.1【蘇生ポーション】を、夫婦に向かって振りかけた。


 その瞬間……激しい光が周囲を包み込む。


「な、なんじゃあああああああああ!?」


 驚いてる村長。奴隷ちゃん達もびっくりしてるわ。


 やがて、光が収まると……あらふしぎ。

 怪我はすっかり元通り、そして死んでいた両親の顔にも、血の気が戻っている。

「こ、これは……」「あたしたち、生きてるの……?」


「おかーさん! おとーさーん!」


 幼女ちゃんは両親に抱きついて、わんわんと涙を流す。


 二人は状況を飲み込めていない様子。そりゃそうだ、いきなり死んだらね。


「し、信じられん……か、神の奇跡じゃ……」


 村長が声を震わせながら、私の前にしゃがみこむ。


「め、女神さまー!」


 村長が深々と頭を下げる。幼女ちゃんもそれを見習って、同じように頭を地面につける。


 ちょ、ちょいちょい……そこまで大げさにすることないでしょ。


「あなた様は我らをお救いになられるため、天上の世界よりこの地に舞い降りた、女神様に違いございません!」


「ありがとー、お姉ちゃ……めがみさまー!」


 ううん、なんか妙なことになってしまった。


 ただ、ね。これだけは訂正せねばなるまいて。


「あのね、私女神じゃありません」

「え? で、では……?」


「私、ただの錬金術師ですから」


 私の台詞を聞いて、村長さんも、そして幼女ちゃんも目を丸くして、ぽっかーんとしていた。


 誰も何も言えないなかで、ぼそっとシェルジュが言う。


「死者を蘇生させておいて、神ではないと否定するのは、さすがに無理があるかと思います。以上」

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― 新着の感想 ―
神扱い…シェルジュの常識は更新されてるのに、主人公の意識はどこまでも500年前固定か…この頭の硬さはやはり転生者。(偏見)
師匠って何者…?
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