エピローグ
あれから数年が経過した……。
私、セイ・ファートを中心とした、聖王国のメンバーで、壊れた世界の再生計画が進められた。
災禍の波が生み出した魔物達のせいで、この星の大地は大いに傷ついた。
でも、聖王国というか私の造ったポーションのおかげで、驚くべき早さで、大地の修復は行われた。
ポーションは治癒・修復魔法と違って、余計な詠唱が必要としない。ただ、かけるだけなのだ。
お手がるだし、なにより、誰でも使える。
聖王国の復興活動を支援する人たちがやがて集まり、彼らと協力して、1年もかからず、陸海空の全てを治すことに成功した。
その頃には、ポーション技術の素晴らしさが全世界に広がっていた。
聖王国には、錬金の基礎を学びたいってやつがたくさん現れた。
そんな彼らのために、聖王国は国の事業の一環として、【セイファート錬金アカデミー】を作った。
バカ師匠をアカデミー長として、彼女の技術をたくさんの人に教えることにした。
師匠は喜んで、分け隔てなく、たくさんの人に自分の技術を惜しみなく教えていった。
その結果、良質なポーションがこの世界にたくさん流通するようになった。
もう……私がこの世界で見たような、低品質なポーションが出回ることも、ポーション技術が失われることもなくなったろう。
で、なんだかんだ3年くらいが経過した。
★
「うぇええええん……仕事おわらないいぃ~……」
ここは聖王国の聖王城。
私は聖王となっていた。そう、王様である。
王としての仕事がまあ、毎日こんもりやってくるのだ。
それを処理するのに、こうして苦労してるのであるっ!
「はぁ~……王の仕事ってどーしてこーもかったるいんだろ……」
「では王になんてならなければよかったじゃあないですか」
メイドのシェルジュがコーヒーを持ってきてくれた。
ポーション技術が進んだ結果、こうして美味しいコーヒーが、どこでもすぐに飲めるようになったのは、技術進歩の恩恵といえる。
私は机に置かれたコーヒーをすする。
「なんか、成り行きでそうなっちゃったのよっ。誰が望んで王になんてなるもんですか。めんどっちー」
「まあ、災禍の波を退け、自己犠牲の後、人体錬成で皆の前で復活。というあれだけ派手なことをしたら、そりゃ目立ちますし、尊敬の念で見られるようになるのは当然かと」
まあね。
それにそのあと、私を中心に復興活動を行ったせいで、復興活動リーダー→王様、とランクアップしたのだった……はあぁ。
「これじゃ、500年前と同じですね」
500年前。つまり、宮廷錬金術師をやっていたときと、同じだと、シェルジュは言ってるのだ。
一人で、仕事を押しつけられて、遅くまで残業していたあのときと……?
「シェルジュ。あんた、本気で言ってないでしょ?」
「ええ、もちろん」
どたどたどた! と廊下から足音が聞こえてくる。
「おねーちゃーん!」「あるじどのー!」「セイ様っ」「…………!」
奴隷ちゃんズ+スイちゃんが部屋にやってきた。
彼女たちは、もうとっくに奴隷じゃなくなっている。私が解放したのだ。
復興活動後は、好きに生きて良いよといった。
でも……皆私の元に残ってくれたのである。
「仕事おわったから、手伝いにきたのですー!」
ダフネちゃんは騎竜兵長。
「夜勤明けでござるが、拙者めっちゃ元気でござるよ!」
トーカちゃんは衛兵長。
「……セイ様、我らに仕事を任せて、休んでください」
ゼニスちゃんは大臣になっていた。スイちゃんはゼニスちゃんの補佐をしてる。
皆立派に仕事をこなしてる。
もう……自分では何もできなかった、奴隷じゃあない。
「ん。じゃ、お言葉に甘えようかなっ。よろしくねっ」
「「「はーい!」」」
★
私は王城をあとにして、自分ち……というか、工房へ戻ろうとする。
あくび混じりに歩いてる。
「やっと世界は平和になったわねー」
「ですね」
シェルジュのアホがついてきていた。
「……どうしてついてくんのよ」
「そこに、主がおります。側に仕えるのは、メイドの役割です」
「あ、そ」
こいつとの主従関係も解消した。
自由にしていいっていったんだけど、ずっとこいつは私の側にいる。
「いつまで居るのよ」
「永久に」
即答だった。なんつー……忠臣だこと。
「それで、マスターはこれからどうするのです? 親から受け継いだポーション技術を、次代に引き継ぎ成功し、聖王国という一国の王となった。上り詰めるところまで来たようですが」
「そうねえー……」
確かに行くところまでいったかんはある。
「神にでもなります?」
「はっ、まさか。わたしゃ単なる錬金術師よ。神になんてなりたくないし、きょーみもないっつーの」
これからどうするか。
簡単だ。これからも、ずっと、そこそこ忙しくしながら、皆と仲良く暮らすにきまってらい。
そのときだった。
カンカンカンカンカンカンカン!
「モンスターパレードだぁ!」
伝令の声が聞こえてくる。
……おおい、マジかよ。
また?
魔物が大群をなして襲ってきてるって?
「「「おれたちの出番だぁ……!」」」
フィライト、ボルスたち、聖王国の錬金戦士団の連中が、待ってましたとばかりに錬金武器を手に、街を出ていく。
戦士団だけじゃあない。
「この国にカチコミしにくるなんて、ふてええ連中だ!」
「ぼく、きのーつくった爆裂ポーション、ためしてみる!」
「あたしの殺戮ぽーしょんが、ひをふくんだよっ!」
老若男女関係なく、ポーションを片手に、魔物を倒しに向かっている。
これが聖王国では、普通の光景だ。
三年前の事件を経て、この国の連中は全員、ポーション技術を身につけている。
今は小さな子どもでさえも、爆裂ポーション普通に作って投げて遊んでるくらいだもん。
「良かったですね、マスターが出張らなくても、すみそうです」
「はっ! 何言ってるのよ、シェルジュ!」
にやり、と私は笑う。
「新しいポーションを試す、またとないチャンスじゃないのよっ!」
500年前の失敗は、繰り返さない。
あのときは逃げるしかなかった。でも今は……立ち向かうことができる。
しかも、一人で、じゃない。
皆で、だ!
ゼニスちゃんたちが出張ってくる。彼女たちもやる気まんまんだ。
師匠も、リーンフォースも、そして……シェルジュも。
全員が、同じ方を向いて、一緒に戦ってくれる。
私はもう一人じゃない!
「よっしゃー! いくわよ、みんなー!」
「「「おー!」」」
《おわり》
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