210.帰還
落下する天空城。
受け止めるのは錬金の戦士達3人。
「来ます」
目前まで迫る巨大な城。
普通ならこんな巨大な、隕石のようなものを受け止めることなんて不可能だろう。
だが……。
この場に居るのは、世界最古の錬金術師、その弟子がつくりし最強の人工生命体、そして……。
最強の師弟が造りし、高性能・魔導人形。
シェルジュは、笑った。
「来い……!」
シェルジュ達が城を受け止める。
凄まじい衝撃が彼女らの体に走る。気を抜くと木っ端みじんになってしまいそうだ。
ミシミシと体が悲鳴を上げる。
だが、すぐに修復してくれた。
フラメルが他二人の体を錬金術で強化しているのだ。
壊れそうになる細胞を、その都度、錬成してる。
「やる……じゃないですかっ!」
「ああ……まあ、ね!」
天空城の勢いが止まらない。
だが……シェルジュは諦めない。
最愛の人と約束したのだ。
必ず……止めてみせる!
戦力差はあった。だが……この場にいる三人の結束が、上回った。
セイのために。
共通する思いが、彼女らの結束を強くした。その結果……。
「と、まったぁ……!」
天空城が制止したのである。
だがそれも、ほんの刹那のことだ。
すぐにまた落下を始めるだろう。
「ママ……!」「セイちゃん!」
「マスター……!!!!!!!!」
瞬間、城が強く輝き出す。
城に設置した転移ポーションが発動したのだ。
瞬きする間に、城は消えてしまった。
残されたのはシェルジュ達。
はぁ……とフラメルはその場にへたり込む。リーンフォースもだ。
「とりあえず……危機は去ったね……」
「ママ……」
……だが、セイ・ファートが現れない。
城ごと、宇宙空間に転移したのだ。
空を見上げる。
激しい光が、空で瞬く。
爆発、したのだろう。
「セイちゃん……! そんな……」
「ママ……」
爆発に巻き込まれた、と思っているのだろう。
事実、そうなのだ。多分彼女の肉体は、今ので木っ端みじんになっただろう。
だが、シェルジュは空を見上げたままだ。
「なに……やってるんだい?」
フラメルはセイが死んだのだと思って泣いでいた。
リーンフォースもだ。
そんな中で、シェルジュだけが、何かを待ってる。
何かって?
それはもちろん……。
「来た!」
空から振ってきたのは、黄金の宝玉だ。
シェルジュは空を駆け、その宝玉を受け止める。
ほぉ……と安堵の息をつく。
「おかえりなさいませ、マスター」
と、その宝玉に語りかけるのだった。




