195.真相
天空城にて。
フラメル師匠が私に、変なことを言ってきたのだ。
「私に倒される……? 何言ってるの?」
フラメル師匠の言動がイカレテルのはいつものことだ。
こいつは喜んで、自らおかしなことをやって、周りを困惑させたりおちょくったりするのが大好きな、厄介かまってちゃんだ。
だが。
今、目の前で話してる師匠は……いつもの師匠と違った。
真剣な表情。そしてどこか……不思議なことに、愛情を、感じさせた。
少なくとも、さっきの倒されるうんぬんは、冗談で言ってるようには聞こえなかった。
「セイ。ポーションをどう思う?」
「あ? なに急に」
「ポーションってさ……正直、治癒魔法の劣化版だよね」
……急にトンデモ発言してきたなこいつ。
「だってそうだろう? 治癒の魔法は、魔力があればすぐに、他者を治癒できる。一方でポーションは違う。いちいち薬を調合しないといけない。フラメル式錬金術を使って、一瞬でポーション生成できるけどね。でも治癒のために……作る、使うという2ステップを必要とする」
念じれば使える魔法と違って、ポーションは必ず作る、という作業が必要となる。
……なるほど。劣化っていうのは、そういうことか。
魔法と比べれば、確かに……作業工程の数で劣る。
「事実、セイが元いた過去の世界では、ポーションより治癒魔法のほうが主流だった。ポーションは治癒魔法が使えなかったときのためのもの」
「……何が言いたいの?」
魔法よりポーションのほうが劣ってる。という事実を並べて、こいつはいったいなにがいいたいんだろう。
「セイ。君は確かにポーション作りの天才だ。けど、魔法の才能は、残念だけど全然無い。セイ……わたしの可愛いセイ。君が、周りから、魔法が使えないってだけで、不当に評価されないのは我慢ならない」
だから、とフラメル師匠が笑う。
「だから、作ったのさ。技術の衰退した未来の世界を。君の作るポーションが、世界最高のものになるように」




